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社畜・イン・ファンタジー ~異世界ブラック冒険譚~  作者: 揚げたてアジフライ
第二章 胎動する悪
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第41話 マークの秘策

―――【硬化】の制限時間が残り一分を切った。


俺の体を纏う魔法の光は、もう殆ど残されていない。


(間に合うのか、マーク……!)


焦る俺の耳に、どこからかマークの声が響く。


「……神に捧げるは我が魔力ちしお


その声がすぐに遠のいたと思うと、再びどこからか、唄い上げるような声が続く。


「神より賜りし聖なる鞭よ、我が魔力を喰らいて、魔を縛る鎖と成れ!」


その言葉と同時に、認識阻害を解いたマークが大怪鳥ジズの後方へ現れた。


「……【聖縛鎖ホーリーバインド】!」


マークの左手から放たれた聖なる光の鞭は3本に分かれ、怪鳥の体を次々に縛り上げていく。


そして、最後の1本が両翼を縛り上げると、コントロールを失った怪鳥は、次第に降下していく。


『キャアアアアアアアアアアォ!?』


耳をつんざくような叫び声を上げながら、高く舞っていたその巨体が、ついに地に堕ちた。


「マーク!助かった!」


刃の嵐からようやく抜け出した俺は、【硬化】を解除して、回復ポーションを呷る。

切り傷にまみれた俺の体が次第に癒えていくのを感じた。


「俺だって、1週間遊んでたわけじゃねえよ!」


怪鳥を【聖縛鎖】で縛り上げたマークは、そのまま【毒の牙(ポイズンファング)】を発動し、その巨体を目掛けて駆ける。


「もって一分だ!今のうちに立て直せ!」


俺に向けてそう叫びながら、マークは、二度、三度と紫紺の猛毒に染まるナイフを、怪鳥に向けて振りかざす。


そして、回復ポーションにより、完全に回復した俺は、怪鳥の頭を目掛けて全力の攻撃を放つ。


全力での跳躍後、上段から全力の振り下ろし。


怪しく輝く魔棍ハティが、美しい飾り羽に彩られた怪鳥の頭を打ち抜いた。


『キィィィィイイイイイキャァアアアアアッ!!!』


俺の攻撃を期に暴れ始めた怪鳥の巨体が、マークの【聖縛鎖】を、1本、また1本と引きちぎっていく。


そして、聖なる鎖の最後の1本が音もなく破られると、再び怪鳥は自由になった。


「くそ、また空に……!」


再び舞い上がった怪鳥に、俺はそんな言葉を浴びせるが、何故か先程よりも飛行の高度が低い。


「そうか、マークの【毒の牙】が効いてる……!」


「ああ、また持久戦になるが、ここからは時間が経つ程俺達が有利になる。お前には、また暫く怪鳥の猛攻を耐えてもらうことになるが、いけるよな?」


「勿論だ、任せてくれ!」


その言葉を聞いたマークが、認識阻害の迷彩を発動し、再び闇へと消える。


「さぁ、我慢比べといこうじゃないか……!」


詠唱と同時に硬化した腕をメイスで打ち鳴らし、【挑発タウント】を発動させる。


毒に蝕まれる体でふらふらと飛行していた怪鳥も、魔法の発動と同時に降下し、鋭い特攻を俺に向かって仕掛けてくる。


しかし、先程よりも弱まった突進は、俺の【硬化】により難無く弾かれた。


 上空へ離脱しようとする怪鳥に向かって、俺は全力で魔棍ハティを放つ。


 俺の全力の横薙ぎが怪鳥の首元辺りを掠ったが、浅い。

 だが、今まで防戦の一方だった怪鳥の体へ、確実に反撃カウンターを当てることが出来た。


『キィイイイイイイイヤアアアァァァォオッ!』


 俺の攻撃を辛うじて避けた怪鳥は、即座に上昇を開始する。

 そして、俺達の攻撃が絶対に届かない場所まで舞い上がると、再び羽を広げ、その大翼へと風の魔力を充填し始めた。


 即座に風の魔力を纏った怪鳥の翼が激しく羽ばたき、こちらへ向けて風の刃が降り掛かる。


 だが、【毒の牙】によって体力を削られ続ける怪鳥の魔法に、先程までの荒々しい、暴風のような威力は感じられない。


 硬化した俺の体は、金属質な音を立てながら、風の刃を受け流していく。


(このまま防御し続ければ、あとは相手を倒すのも時間の問題の筈……)


 魔法を全て弾く俺への不利を悟ったのか、怪鳥は魔法をやめ、天井の限界ギリギリまで上昇を始めた。


 そして、頂点までその巨躯が舞い上がると同時に、こちらへ素早く回転しながら、突撃してくる。


―――キィィイイイイイイイイイイイイイン!


 怪鳥が風を裂いて突撃すると、そんな音が聞こえた。


そして、一瞬で俺の目の前に迫った怪鳥は、錐揉み回転をしながら、最高速で俺への突進を敢行した。


 これまでで一番の威力を持った攻撃を受けた俺は、耐えきれずに吹き飛び、後方へと何度も転がっていく。


 10メドル近く吹き飛ばされた地点でようやく受け身のようなものを取ることができ、体勢を立て直すことが出来た。


だが、先程の怪鳥の突進の際、衝撃で手に持っていたハティが吹き飛んだ。


 ハティの吹き飛んだその先は、俺の後方約20メドルは先。

 流石に、そこまで距離があると戦闘中に背を向けて取りに行くことは叶わないだろう。


『キィヤッ!キャッ!キヤァァアアアアアアアォ!』


 攻撃手段を無くして、反撃することが出来なくなった俺へ、喜んでいるような鳴き声を上げながら、怪鳥が再び低空飛行で突撃してくる。


「甘いぞ……!」


 そう、確かに俺は武器を無くした。

 普通の冒険者であれば、攻撃手段が無かったかもしれない。


でも、俺には【硬化】の応用で編み出した【鉄拳】がある。


 最早、毒の影響で全盛期のスピードの陰も無くなった怪鳥の突進をクロスした両腕で受け止め、そのまま怪鳥の頭部に向けて、間髪入れずに【鉄拳】を振りぬく。


「―――おおおおおおおおッッッッ!!!」


 俺は雄叫びを上げながら、素早くはないが、重い一撃を、何度も繰り返す。

両拳を硬化させて放つ【鉄拳】の連打は、毒で弱った怪鳥の体力を確実に削っていく。


『キヤアアアアアアアアアアアオッ!』


そして、連撃ラッシュから逃れるため、もがくように暴れ出した怪鳥から、俺は距離を取る。


しかし、怪鳥はそこで力尽きたように、これまで見せなかった明確な隙を見せた。

そう、怪鳥が、項垂れるように首を下げ、そこで動きを止めたのだ。


「……チャンス!」


その隙を、俺は絶対に逃さない。

3メドル程上空にある、疲れ切った怪鳥の頭に向かって全力で跳躍し、【鉄拳】のアッパーを見舞う。


『キッ、キィイイイイイアアアアアアアアッッ!?』


 頭部への全力の一撃を受けた怪鳥は、これまでの連撃の効果もあってか、目を回したように混乱の声を上げる。


「―――今だッッ!!!」


 これまで、認識阻害によって姿を隠し、俺と怪鳥の闘いを静観していたマークが、ここぞとばかりに全力で駆け抜けていく。


そして、怪鳥の懐へと跳び込んだマークが、未だ混乱の最中にある怪鳥の胸の核へ、全力の刺突を放った。


 ―――そして、戦いは決着する。


『キ、キヤァァァァアアアッ……!』


 怪鳥が断末魔の叫びを上げ、激闘に終止符が打たれる。

 その巨体が地面に倒れ伏すと、普通の魔物とは違った紫色の光となって、怪鳥の体がゆっくりと天へ消えていく。


「終わった、か……」


「ああ、マークの魔法が無かったらどうなってたか……」


「いや、お前の根性があってこそだ。毎回、ギリギリまで助けられなくて悪いな……」


 マークが、申し訳なさそうに頭を下げる。


 マークがギリギリまで助けに来ないのは、必ず意味がある。

 それを理解している俺は、謝罪するマークを攻めたりはしない。


「いや、いいさ。それだけ、俺の防御を信用してくれてるんだろ?」


 そんな会話をしながら、俺達は同時に床へとへたり込む。


 流石の俺も、体力が限界だ。

 あんなボスみたいな魔物を倒したんだ。少しくらい休んだって、罰は当たらないだろう……。


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