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社畜・イン・ファンタジー ~異世界ブラック冒険譚~  作者: 揚げたてアジフライ
第二章 胎動する悪

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第40話 社畜と大怪鳥

大遅刻の記念投稿です!

ブックマーク、評価、感想を頂けると、より一層頑張れます!

 どうやら、マークはこの頑丈な扉をどうにかする策を思いついたらしい。


 まさか、鍵の解錠までできるんだろうか。

 万能盗賊シーフのマークなら出来てしまいそうな所が怖いが……。


「よし、【硬化】して全力でぶん殴ってくれ」


「めっちゃ力技だったーーーーー!?」


 知恵の欠けらも無い予想外のアイデアに、俺は思わず大声で叫んでしまう。


「おい、いくら倒してきたとはいえ、まだどこに敵が潜んでるか分からないんだぞ……」


 白い目で見てくるマークが、至極まともに注意をしてくる。

 いや、叫んじゃったのはマークのせいだからね……。


「でも、思いっきり突っ込んだら、中の敵にすぐバレるんじゃ?」


「いや、いいさ。恐らく、もう残りはその中にいる奴だけだろう。ドアが開いたら奇襲をかけて、一気に仕留めよう」


 やっぱり力技だな……。

 分かりやすくていいけどさ……。


 まぁ、中にいる組員さえ倒せば、十中八九この拠点は壊滅だ。


 中にいるのが幹部クラスである可能性もあるが、研究職だとすれば恐らくその戦闘力は高くない筈だ。

 そうなれば、俺たち2人で畳み掛ければ、すぐに方はつくだろう。


 若干の不安を抱えつつも、俺は詠唱を開始し、右手だけを部分硬化させる。


 そして、3メドル程距離を取ると、助走をつけて、全力で扉へ駆け出した。


「……おおおおおらッ!【鉄拳】!」


 辺りに金属同士がぶつかるような衝撃音が響く。


 そして、施錠された鍵だけを壊そうとした俺の右手は、勢い余ってドアごとぶち破った。


 ズシンと音がして、扉が倒れる。


 扉の先にあったのは、天井までの高さが数十メドルはあろうかという、ドーム状の大空間だった。

 所々に研究に使うような魔道具などが設置されていることから、ここも設備の一部であることが理解出来る。


「な、なんだ!?貴様ら、どこから入った!?」


 衝撃音でこちらに向かってきたと思われる痩せ細った白衣の男が、俺達を見るなりそんな声を上げた。


「観念しろ、残りの組員はお前だけだ」


 マークがナイフを構えてそう言う。

 

「ふ、ふざけるなッ!貴様ら、覚悟しろ!この拠点の支部長である私を怒らせたことをなァッ!!」


 そう言いながら、男は背後の暗闇へ走っていく。


「は?逃げたのか……?」


 思わぬ行動をとった男に、俺は呆気に取られる。


「いや、違うぞヨシヒロ!奥をよく見ろ!」


 マークに言われて、男の逃げた方向を目を細めて観察する。

 目が暗闇に慣れた頃、そこに写ったのは、10メドルを軽く超えるであろう、何かの巨大な影だった。


「はっ!?なんだよ、あれ!?」


「分からねえよ!だが、計画通りにいかなそうなのは確かだぜ……」


 俺とマークは、互いに武器を構えて臨戦態勢を取った。


 そして、奥へと逃げ去った男の声がこちらにむかって響く。


「ゲヒャヒャッ!どうだぁ、このビルス様の最高傑作の姿に声も出ないかァ!?」


 恐らく、獄王の刃により、何かしらの改造を加えられた魔物なのであろう。

 だが、その姿はこれまで見たどんな魔物よりも強大だ。


「さあ、大怪鳥ジズよ!こいつらを消し飛ばせぇッ!!」


 そう叫んだ男がスイッチを押し、これまでその巨体を封じていた鎖を解除する。


 すると、これまで眠るように静かだった大怪鳥が、ゆっくりと目を覚まして叫び声を上げた。


『キィィィィヤァァァァァァァオ!!!』


 開かれたその両翼はを合わせれば、体長は15メドルを超えるだろうか。


 鎌のように鋭く曲がった嘴と、肉食の獣特有の爛々と光る瞳は、見る者に威圧と恐怖を与える。

 しかし、極彩色の羽に覆われた体は、どこか神秘気的ですらあった。


 俺達がその様相に圧倒されていると、大怪鳥ジズの大きな翼が解放され、その動きによってこちらまで突風が吹きすさぶ。


「くっ……」


 俺は【硬化】を使えばどうにかなりそうだが、マークは立っているのも厳しそうだ。


「ゲッヒャヒャッ!やれぇ!消し飛ばせえッ!」


 不愉快な笑い声を上げながら、男が怪鳥に向かって指示を出す。


 しかし、不快であったのは怪鳥も同じだったようで、煩わしそうにその大きな翼で、男を叩きつける。


「……ゲヒャッ!?」


 一瞬で目の前に迫った大翼を避けることも出来なかった男は、間抜けな声を上げた後、そのまま吹き飛んで壁の染みと化した。


「使役されてるわけじゃなかったのか!?」


 飼い犬に手を噛まれるどころか、一瞬にして消し飛ばされた男の姿に、俺は驚きの声を上げる。


「あいつを縛ってた鎖、恐らく魔封じの鎖だ。あれの効果で、力を封印されてたんだろうぜ」


 ―――魔封じの鎖。


 不死者リッチ騒動の際に、俺に使われたあれのことか。

 確か、縛り付けた魔物の魔力なんかを封じる効果があった筈だ。


「ともかく、あいつの汚ねえ声のせいか、長らく縛り付けられてたせいか、かなりお怒りのようだぜ……」


『キュアアアアアアアアアァァァッ!!』


 男を処分した怪鳥は、極彩色に輝く大きな翼を広げ、こちらを威嚇するように鳴き声を上げる。


 そして、そのまま大きく羽ばたき上昇したかと思えば、すぐに猛烈な勢いで下降し、低空姿勢でこちらへ飛行してきた。


「まずい……!蛮族よ、我が盾を見よ!」


 マークへの攻撃を防ぐため、即座に【挑発】を使い、怪鳥の視線をこちらへ誘導する。


 低空飛行のままこちらへ突進してくる怪鳥の巨躯が衝突する刹那、俺は即座に全身を【硬化】させることで、辛うじてその攻撃を防ぐ。


(くっ、まずい……!)


 ダメージ自体は無かったものの、その威力を殺しきれなかった俺は、硬化した体のまま後ろへ吹き飛ぶ。


 再び上空へ舞い戻った怪鳥は、大きく羽を羽ばたかせながら、高い天井の研究室の中を旋回する。


 そして、未だ【挑発】の効果が続く俺に向けて、大きく風を巻き起こした。


 怪鳥の持つ極彩色の両翼が魔法の光を纏い、羽ばたきと同時に、切り裂くような風が巻き起こる。


 吹き飛ばされた体勢を立て直し、【硬化】を発動したまま防御の構えを取るも、その刃物のように鋭い風の魔法は、硬質化した俺の体さえ引き裂いていく。


 一撃兎デスラビットの攻撃すら無効化する筈の俺の魔法が初めて破られた。


 次々と俺を襲う風の刃が、防具を引き裂き、体中へ裂傷を負わせる。


(まずい、このままじゃジリ貧だ……)


 なにか打開策を見つけなければいけない。

 このまま攻撃を受け続ければ、いつか【硬化】の制限時間が尽きてしまう。


(そうなる前に、どうにか……!)


 そう、どうにかしなければならない。

 そう思いつつも、対抗策の1つすら思い浮かばないままに、無情に時間は過ぎ去っていく。


(クソッ!いつまで魔法が続くんだ!?)


 怪鳥が羽ばたく度に発生する風の魔法は、既に5分以上続いていた。

 魔法を使ってくる魔物自体が初めてだが、これは余りにも無尽蔵すぎる……!


 俺の体を包み込んでいた【硬化】の光が次第に薄れていき、その効果時間終了が近いことを伝えている。


(まずい、このままじゃ本当に……死……)


 諦めかかっていた俺の耳に、風に乗って声が流れてくる。


「ここは任せろ……!」


 すぐに暴風の音に掻き消されたが、確実にそれはマークの声であった。


 姿が見えないことからして、恐らく認識阻害の迷彩を発動しているのだろう。


(ったく、遅いんだよ……!)


 いつも遅れて助けに来る相棒を信じて、俺はひたすら【硬化】に集中して防御を続ける。


 マークなら必ず何とかしてくれる。

 まだ短い付き合いだが、そう思わせてくれるだけの信頼の実績があった。


 【硬化】が解除されるまで、恐らく長くても3分。


 俺の魔法が時間切れ寸前のこのタイミングで飛び出したマークなら、絶対にそのタイムリミットまでに手を打つ筈だ。


 時間と共に体から離れていく魔法の光に焦る気持ちを落ち着かせ、目の前の攻撃を防御することだけに集中する。


 そして、効果が切れる寸前まで時間が経過した頃、どこからか再び、マークの声が風に乗って流れてきたのだった―――。


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― 新着の感想 ―
マークは奇襲を仕掛けようと言っていたのになぜ投降を促したんですかね
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