表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社畜・イン・ファンタジー ~異世界ブラック冒険譚~  作者: 揚げたてアジフライ
第一章 剣と魔法とデスマーチ
4/137

第3話 社畜、転職活動をする

システム説明回的な


 カタギリの案内通り、大通りを真っ直ぐ歩いていくと、10分程で大きな木造の建物に辿り着く。


 しかし、ここに来るまでの間に、通行人からかなりジロジロと見られてしまった。

 このファンタジーな世界観の中で、スーツにビジネスバッグでは、かなり浮いている。


 商店や飲食店と思わしき他の建物と比べると、そこに出入りする人々は皆、剣を背負っていたり、魔法使いの様なローブを着ていたりと、冒険者然とした格好をしている。

 恐らく、ここが冒険者ギルドで間違いないだろう。


 意を決してギルドに入ると、洋画やゲームで見かけるような酒場の奥にカウンターがあり、職員たちが冒険者の対応に追われている。

 市役所の窓口が一番イメージに近いだろうか。


 更に、ギルドの中を観察する。

 ギルド内は横に広い構造で、受け付けカウンターの隣にはクエストボードと思われる掲示板や、談話スペースが設けられているようだ。

 また、酒場と食事処を併設しており、昼間であることを加味しても、少なくない数の冒険者が、食事や酒を楽しんでいる様子が見受けられる。


 まさに、ゲームやファンタジー小説の中に登場する冒険者ギルドそのものといった様子だ。


 こっちに来てから歩き通しなので、少し休憩したい気持ちもあるが、残念ながらこの世界の通貨は持ち合わせていない。

 ここは我慢して、冒険者登録とやらをするしかあるまい。

そんなことを考えながら、俺は窓口のあるカウンターへと向かった。


「すみません。冒険者登録?をお願いしたいのですが……」


「はい、初めてご利用の方ですね。当冒険者ギルドで登録できる職業は、戦闘を行うためのものに限られますが、よろしいでしょうか。戦闘職以外をご希望でしたら、各種職業ギルドへどうぞ」


 なるほど、ギルドにも色々とあるらしい。


 ギルド職員の説明によると、数百年前に魔王が誕生し、魔の勢力が活性化した。

 それに対抗するため、神が人間に対して加護を与えたことが、現在のギルドで行われている『冒険者登録システム』の始まりであるとのことだ。


 ギルドで職業登録をすると、どういう仕組みか、神からの加護が与えられ、一定の戦闘能力が保証されると言うのだ。

 ただし、加護を受けない場合には、成人した時点で能力の上昇が殆どストップするらしい。


 加護による能力上昇は大きく、この世界で暮らす人々の大半は、戦闘職・非戦闘職問わず、ギルドにて何らかの職業登録を行い、神からの加護を受けているそうである。


 つまり、商業系や製造系のギルドで、商人や鍛冶師として職業登録を行っていれば、ある程度自衛の術や仕事上の技術を身につけられるのだ。

 しかし、戦闘能力に関してはあくまでも普通と比べれば、という程度であり、戦闘を卒なくこなせるレベルではない。

 やはり、実際の戦闘能力は、冒険者として登録、活動する者の方が上なのだ。


 とは言え、ファンタジーの世界に来て、商人やら何やらとして働くつもりなど毛頭ない。

 元の世界に帰れるかすら分からないなら、いっそのこと、この状況を楽しんでしまおう。


「はい、冒険者としての登録で間違いないです」


「かしこまりました。それでは、この用紙にお名前をご記入の上、中央に手をかざしてください。」


ギルド職員から、中央に魔法陣のようなものが描かれた羊皮紙が差し出される。


 俺が自分の名前を記入すると、何故か見たことのない文字に置き換わった。

 頭の中に思い浮かべたのも、書いたつもりなのも日本語であったのに、自動的にこの世界の言語に変換されたらしい。


 誰に対しても言葉が通じることを考えると、どうやら、日本語を話しているつもりであったが、今喋っている言葉はこの世界の言語なのだろう。


 確かに、異世界転生やらファンタジー小説で主人公の言葉が通じないなんて聞いたこともないが、随分都合のいい仕様になっている。

 便利ではあるが、これが俺の転生特典チートであるならば、少し泣けてくる地味さだ。


 そんなことを考えつつ、俺が中央の魔法陣に手を乗せると、用紙と俺の身体が淡く光り始めた。


「おおぉお!?なんだ!?」


 唐突に起こったファンタジー要素に俺が驚いていると、職員が少し笑いながら声をかけてくる。


「あはは、大丈夫ですよ。今ので職業適性が分かりました。こちらで確認させていただきますので、少々お待ちください」


 職員の女性が後ろに下がり、何やら機械のようなものから新しく紙を取り出すと、俺の前に差し出したのであった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ