第37話 真・社畜無双?
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一週間の修行を終え、俺はようやくグスタの街へと帰還した。
【硬化】の解除スピードのアップもさることながら、硬度のアップ、そして何よりも、最終日に会得したアレを見れば、きっとマークも驚くだろう。
旅立つ直前、マークとは、8日後にギルドで会う約束をしていたので、今日はその当日となる。
水浴びや体を拭いたりはしていたものの、わりと過酷な修行をしていた一週間のおかげで、流石に服はボロボロだ。
警戒する門兵に冒険者証を見せなければ、街にも入れなかっただろう。
しばらく借りている宿の部屋へ戻り、一度着替えてから、約束のギルドへと向かう。
待ち合わせは正午頃だったので、しばらく時間がある。
せっかくだから、久しぶりにアリシアさんと話でもしようかな。
「サートーウーさーーーーーーん!!!!!!!」
受付のカウンターに近づいた俺を見つけるなり、アリシアさんがかなり怒った様子でそんな声を上げた。
あ、まずいなこれ。久しぶりに徹夜してたことがバレてそうだ……。
「あ、アリシアさん……。お久しぶり、です……」
ぷりぷりと怒るアリシアさんに向かって、怯える俺は挨拶を返す。
「久しぶり、じゃないですよ!マークさんから聞きました!最近見かけないと思ったら、また徹夜じゃないですか!しかも一週間も!!!」
「いやぁ、面目ない……。どうしても、強くなりたかったもんで……」
「もういいです!好きにすればいいんです!ふーんだ!」
そう言って、怒ったアリシアさんはそっぽを向いてしまう。
しまったなぁ……。結果的に約束を破ったことには変わりないし……。
「まぁまぁ、ヨシヒロを許してやってくれよ」
俺がどうしようかとおろおろしていると、横から現れたマークが助け船を出す。
「マークさん……。でも、私心配で……」
「気持ちは分かるよ。でも、ヨシヒロなら大丈夫だ。それに、強くなりたいってのは、冒険者なら誰でも思うことだろ?」
「そう、ですね……。私も熱くなりすぎました。サトウさん、ごめんなさい」
マークの言葉を受けて、落ち着いた様子のアリシアさんがぺこりと頭を下げる。
「そんな!悪いのは俺ですから!」
そんなこんなで、久しぶりに会ったアリシアさんを怒らせた俺は、マークの力を借りてどうにか宥めることに成功したのだった。
今度、心配かけたお詫びに何か買ってこよう……。
そんなやり取りから場面は移り、ギルドの酒場スペース。
俺達は、その一角にあるテーブルに腰かけていた。
「で、修行とやらの成果はどうだったんだ?」
席に着くなり、早速マークが話題を切り出す。
「ふっふっふっ!聞いて驚け見て驚け!」
俺は立ち上がり、詠唱を始めると、【硬化】を発動、一瞬で解除した。
「おおっ!?そんなに早く切り替えられるようになったのか!」
マークが、純粋に驚きの声を上げる。
「そうなんだ!今や切り替えの速度は1秒以下!更に、【硬化】の強度もアップしたよ!」
俺はドヤ顔でそう答える。
「……ちなみに、その強度アップってのはどんな修行をしたんだ?」
「ああ!前の強度じゃ受けきれなかった一撃兎の攻撃を、ひたすら受け続けたんだ!1日半くらいかな?」
そんな答えを聞いたマークは、俺に対して白い目を向ける。
「やっぱ、頭おかしいわこいつ……」
「おい!酷いだろ!ちょっと我慢強いだけですー!」
実際、社畜時代に受けた扱いのせいで、恐らく、普通の人よりもちょっとばかし我慢強い。
今回の修行も、元々耐久の高い俺だからこそできたようなもんだしな。
ここまでで、だいぶ驚いてもらったが、まだこれだけだと思ってもらっては困る。
そう思った俺は、最終日に覚えた必殺技を見せるため、再び詠唱を開始した。
「……我が身を盾に!部分硬化!」
魔法の光が俺の右腕だけを包み、その部分だけが鋼鉄のごとく硬化する。
「おいおい!マジかよ!もしかして、そのまま動けるのか?」
「もちろん!腕を振り回せるのは当然のこと、このまま移動だって出来るさ!」
重くなった右腕のせいで少し動きは鈍るが、それ程支障はない。
ちなみに、脚だけ硬化させることで、重い一撃を反動無しで受け止めるなんてこともできるようになった。
「やべーな、随分便利になったじゃないか。これなら、前よりもっと応用が効くだろうぜ!」
「そうなんだ。で、早速なんだけど……」
「クエストに行きたいんだろ?付き合うぜ!」
こうして俺は、街に帰ってきたのも束の間、マークと一緒に再びクエストへと旅立ったのであった。
◆◆◆
『グオオオッ!』
ゴブリンの群れを率いていた一際大きな個体、ホブゴブリンが、手下を倒された怒りに身を任せ、こちらに向かって粗削りの棍棒を振り下ろしてくる。
「部分硬化!」
振り下ろされた棍棒を左手の部分硬化で防ぎ、右腕に持ったハティでホブゴブリンの頭蓋を砕く。
この技を使うようになって以来、盾がいらなくなったので、今回は宿へ置いてきた。
そこらの盾よりも、硬化した俺の腕の方が硬いからな。
「いい感じだな、ヨシヒロ」
「ああ、ド派手な攻撃は身に付けられなかったけど、防御にはますます磨きがかかったよ」
そう、確かに部分硬化はかなり便利なのだが、攻撃ではなく防御の技なのだ。
残念なことに、攻撃は今後もハティの火力に一任することになりそうだ。
「なぁ、その腕、硬いんだよな?それも、かなり」
俺の戦いを、何か考えるように見ていたマークが、確かめるようにそんなことを尋ねる。
「ああ、そうだよ。多分、その辺の鎧や盾よりは何倍も」
俺は、何を今更といった感じで、そう答えた。
まぁ、強化された【硬化】の硬度は、まだマークには伝わり辛いか。
「その部分硬化、防御じゃなくて攻撃に活かせないか?」
マークが、そんなことを提案してくる。
「はぁ?ただ固くなるだけのこれを、どうやって?」
「いや、普通に、硬化した腕で敵を殴ればいいだろ」
「…………確かにッ!」
簡単な事だったのに気づかなかった。
確かに、部分硬化で自由に動けるようになったんだから、それを応用することもできる。
腕だけ硬化させて、殴ればいいんだ。
ハティ程の火力は出ないだろうが、それでも並の鋼鉄を凌ぐ硬度の俺の腕なら、魔物にも相当のダメージを与えられるだろう。
早速俺は、次のクエストで試すことにした。
次の依頼は、前に討伐した突進獣の亜種である、猛進獣の討伐依頼だ。
猛進獣は、突進獣を超える巨体と、その巨体から繰り出される強力な突進が特徴らしい。
『ブオオオオオオォォッ!!!』
俺達を見つけた猛進獣が、雄叫びを上げながら、突進攻撃を仕掛けてくる。
俺は素早く【挑発】を発動し、隣のマークへ攻撃が向かないよう調整する。
そして、【挑発】が発動したのを確認したマークは、素早く脇道に逸れて回避した。
俺が防御した際に、攻撃が逸れて自分に当たるのを避けるためだろう。
「……ふっ!」
硬化した両腕をクロスさせ、正面から猛進獣の突進を受け止める。
両足を硬化させることで、その勢いを殺すことも忘れない。
いくら押しても動かない俺に痺れを切らした猛進獣は、再び突進をするために距離を取ろうとする。
しかし、俺はその隙を見逃さない。
「おおおおおぉぉぉらっっ!!!!」
全ての硬化を解除し、背を向けた猛進獣へ向けて、その瞬間だけ再び硬化させた右手で全力のストレートを見舞う。
『ブギィィィィィッ!?』
俺の全体重を込めた右ストレートは、3メドル以上の巨体を持つ猛進獣を、易々と弾き飛ばした。
「ま、まじか……」
想像以上の威力に、思わず呆然とする。
そんな俺を尻目に、体勢を立て直そうとする猛進獣の脳天をマークの刃が貫き、それが止めとなった。
「お前、そのパンチ、ハティで攻撃するより強いんじゃないのか……?」
猛進獣のドロップアイテムを回収したマークが、こちらへ向かいながらそんな言葉を投げかけてくる。
「いや、単純な火力はハティが上だと思う。俺の体重が上手く乗る分、硬化した腕の方が、衝撃が凄いんだと思うよ」
純粋に火力を求めるならハティでの一撃、相手から距離を取りたい時や、カウンターを行う際は部分硬化といった感じで使い分けができそうだ。
「そうだ。せっかくだし、俺の中で一番派手なこの攻撃に名前を付けよう」
「ほう、いいんじゃないか?」
マークも賛同してくれるようだ。
「そうだな……鉄の拳で殴る技だから……【鉄拳】だ!」
「まんまじゃねえか。センスねえなお前……」
「うるさいな!いいんだよ!」
俺の完璧なネーミングセンスを罵倒したマークは放っておくとして、念願の派手な技を覚えることができた。
あくまでも【硬化】の応用ではあるが、一週間みっちり修行した成果は確実に表れている。
こうして、俺は、新技である【鉄拳】を獲得したのであった。
ちなみに、修行後のステータスはこんな感じで、魔法の説明文が一部変わっている。
特に、【挑発】に至っては、盾を装備していなくても発動が可能になった。
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<<<ヨシヒロ・サトウ>>>
冒険者ランク:D レベル:39
職業:冒険者
筋力:C377
耐久:B642
敏捷:D267
知力:D206
器用:D262
運 :D138
<<魔法>>
【硬化】:任意の体の部位を硬化させ、防御力を上昇させる。
硬化は耐久値に応じて強化。魔法の解除は任意。
詠唱文:『我が身を盾に』
【挑発】:大きな音を立てることで周囲の敵を挑発し、自身に注意を引き付ける。
詠唱文:『蛮族よ、我が盾を見よ』
<<固有スキル>>
【不眠不休】:一定時間内の活動における疲労減少。
睡眠属性の干渉に対し、中程度の耐性を得る。
<<常時スキル>>
【毒耐性】:毒属性への耐性を得る。一定レベル以下の毒は無効化。
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次回、明日のお昼12時に予約投稿済みです




