第35話 マジカル☆社畜 second season
かなり誤字があったので、過去話を遡って修正しました。
―――ガギィィン。
紫紺の煌めきが一閃し、魔物の体が硬質な音を立てる。+
俺の全力の一撃は、鋼大亀の固い甲羅をいとも容易く砕いた。
「マーク!止めを頼む!」
「ああ!任せろ!」
距離を取って様子を見ていたマークが、俺の言葉を聞くと、鋼大亀に向かって駆ける。
刹那、マークのナイフが、防御の手段を失った鋼大亀の体を貫いた。
鋼大亀が断末魔を上げ、その甲羅の破片だけを残して消えていく。
「おつかれ、マーク!」
「ああ、お疲れ。そういや、最近ターゲットを取るのが上手くなったんじゃないか?」
マークが、唐突にそんなことを言い出す。
「そうかな?ハティも使いこなせてきたし、マークとも上手く連携を取れるようになったとは思うけど」
「それもあるが、何というか、今日は魔物がお前に吸い寄せられるような感じだったんだよな……」
「うーん、流石にそれは気のせいじゃないかな?」
確かに、いつもよりタゲ取りが楽だった気がしなくもないが、あまり気にしてなかったな……。
「もしかして、知らないうちに新しいスキルでも獲得したんじゃないか?」
「いやいや、それは流石にないと思うけど……」
そんなマークの言葉を、半信半疑で否定する。
流石に、そんなにポンポンとスキルを獲得するなんてことは、恐らくないだろう。
でも、もし本当にスキルや魔法を覚えているのなら……。
そんな、あわよくばという期待を込め、俺は【ステイト】を唱えると、ステータス画面を確認する。
「……マジか、魔法が増えてる」
「本当か!?そうだと思ったんだよ!」
呆然とする俺に向けて、マークはしたり顔でそう答える。
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<<魔法>>
【硬化】:全身を硬化させ、防御力を上昇させる。硬化は耐久値に応じて強化。
魔法の解除は任意。
詠唱文:『我が身を盾に』
【挑発】:盾装備時のみ使用可能。
盾を打ち鳴らすことで周囲の敵を挑発し、自身に注意を引き付ける。
詠唱文:『蛮族よ、我が盾を見よ』
―――――――――――――――――――――――――――
「挑発スキルみたいだ」
「今まではその魔法、使ってなかったんだよな?なら、次のクエストで試しに使ってみてくれよ」
そう言って、マークは次のクエストの目的地である、湿地地帯を目指し始めた。
次のクエストの対象は、あのにっくき大毒蛙である。
もはや、あのカエル程度なら、魔棍ハティの餌食にしてやるぞ……。
「今回は少し数がおおいな。目視で5体だが、ヨシヒロなら大丈夫か?」
「ああ、万が一の時は【硬化】もあるし問題ない。とりあえず、突っ込んで新しい魔法を使ってみるよ」
周囲の敵を引き付ける魔法なのであれば、ある程度相手に近づいてから発動する方がいいだろう。
そう思った俺は、5体の大毒蛙全てが、上手く範囲に入るであろう距離まで歩みを進める。
「この辺りかな。……蛮族よ、我が盾を見よ!【挑発】!」
詠唱と同時に盾を鳴らすと、全身を赤い光が纏う。
辺りに響き渡った盾の音を聞き、大毒蛙の視線が全てこちらへ向いた。
『ゲココッ!ゲコッッ!!』
「……よし、完璧だ!」
上手く範囲内で魔法を発動し、全ての敵の注意をこちらへ引き付けることが出来た。
「ふふふ……!アイアンメイスの仇、思い知れ!」
そう言って、俺が半ば仇討ちのような戦いを始めようとした時だった。
―――ザワザワッ!
周囲の高く生い茂った茂みが揺れる。
―――ガサッ、ガサガサッ!
数メドル離れた場所にある大木の葉が一斉に揺れ始める。
―――ザッパアーーン!!
そして最後に、湿地帯の沼地から、大きな影が飛び出した。
『グロロロロロロアァァァッ!』
そんな、沼地から現れた巨大な山椒魚のような魔物の鳴き声を皮切りに、ざわめきを見せていた茂みや巨木の上から、次々に魔物が現れこちらへ向かってくる。
『グロロッ!グロロロッ!』
『ゲコゲコッ!!』
『ギィ!ギィ!!!!』
多種多様な魔物が、全て俺にだけ目を向け、今にも飛びかからんと迫ってくる。
『グロロロロロロアァァァッ!!!!』
山椒魚型の魔物の一際大きな鳴き声が辺りに響くと、それを合図としたのか、周囲の魔物が一斉にこちらへ飛びかかってきた。
「流石にやべえ!」
―――キィン!
硬化した俺の体が、魔物の攻撃を全て防ぐ。
急いで【硬化】を使って難を逃れたものの、囲まれている現状に変わりはない
幸いにも、魔物達の攻撃は一定の間隔をもって行われている。
つまり、必ず隙をつく瞬間ができる……!
「……今だッ!!」
俺は、攻撃の止んだ一瞬の隙を見極め、【硬化】を解除した。
そしてその瞬間、日差しを浴びて怪しく輝く魔棍ハティを、自分の周囲360度振り回し、一番近くにいた魔物の集団を薙ぎ払う。
「とりあえず、難は凌いだ……が」
ハティの一撃を浴びた魔物は、その威力に耐えきれず消し飛んだ。
しかし、【挑発】によって集まった魔物は、未だ俺の周囲に蔓延っている。
その数、およそ30匹といったところか。
それにまだ、一匹だけ格の違う山椒魚型の魔物も控えている。
俺が、覚悟を決めて、第二波へ挑もうとした瞬間だった。
茂みから一気に駆け抜けた銀の疾風が、数体の魔物を切り裂き、こちらへとたどり着く。
「よう、モテモテじゃないか、ヨシヒロ!」
「マーク!助かったよ!」
いくら数が多いとはいえ、一匹一匹の戦闘力はそれ程じゃない。
恐らく、俺やマークであれば苦戦することはないだろう。
俺達は、もはや何度目か分からない背中合わせの体勢で、敵に向き直った。
◆◆◆
『……グロロロロロォォォォン!』
最後の一匹となった山椒魚の魔物が倒れ、周囲に水飛沫が上がる。
その巨体が少しずつ光となっていき、最後にドロップアイテムのみを残して消え去った。
マークの協力により、どうにか雑魚魔物を退け、ボスである山椒魚の魔物を討伐するまで、それほど時間はかからなかった。
肝心の【挑発】についてであるが、効果中は、マークが攻撃しても、まるでそこに存在しないかのように魔物が反応しなかった。
だが、【挑発】により身に纏っていた赤い光が消えると、いきなりマークにも攻撃が向くという感じだった。
解除も、現段階ではできないようで、効果時間が切れるのを待つしかなさそうだ。
「かなりピーキーな魔法だったな……」
戦いを終え、一息ついた俺は、そんな感想を漏らす。
「ああ、ますます壁役に磨きがかかったな。【硬化】と併用すれば、殆ど無敵じゃないか」
マークが、そういって魔法の使い方や戦法を考えてくれる。
「そうだね。役に立てるのは嬉しいよ」
確かに、【硬化】と【挑発】を上手く使いこなせば、俺は集団戦における壁役という役割では、他に類を見ない活躍ができるだろう。
「でもなぁ……」
やっぱり、いまいち地味な魔法しか覚えられてないんだよなぁ……。
ファンタジー世界に転生や転移したとくれば、ド派手な魔法や攻撃で無双したい!
冒険する中で、そんなことを考えていた時期もあったくらいだ。
ハティの力で攻撃力自体は上がったものの、やはり派手とは程遠い、地味な戦闘しかできないのは変わりない。
「どうにか、ならないもんかなぁ……」
俺は、そんなモヤモヤを抱えながら、クエストを終えて街に帰ったのであった。
次回は、また明日のお昼12時頃に投稿予定です。
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