第34話 社畜、契約をする
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武器を受け取った翌日、俺は武器の代金の支払いをするのと、武器の使用感をランドルフに伝えるため、『ロペス武具店』を訪れていた。
ちなみに、マークは予定があるとかで、今日は来れないらしい。
相変わらず軋むドアを開けると、今日は威勢のいい声に出迎えられる。
「いらっしゃい!お、ヨシヒロじゃねえか!ってことは……」
「うん、支払いとお礼のために来たんだ。ランドルフも話があるってことだったしな」
「そうか、この間は寝ててすまん!あの手紙を書いた後、睡魔に勝てなくてな……」
まぁ、大いびきをかいて爆睡してたしな……。
それでも、恐らく殆ど徹夜で俺の武器を作ってくれたランドルフに、感謝こそあれ攻める気持ちなど毛頭ない。
「いや、それはいいんだ。とりあえず、これが約束の10万エルだ」
俺は、ばつの悪そうな顔をしていたランドルフへ、1万エル金貨の10枚入った袋を渡す。
「……確かに、金貨10枚できっちり10万エル受け取った。感謝するぜ!」
そう言って、ランドルフは、後ろにあった魔力認証式の小さな金庫へ、その袋をしまう。
魔力認証式の金庫は、登録した個人の魔力を感知した時のみに開くシステムになっており、こちらの世界では割とメジャーなものらしい。
「そうだ、ランドルフ。実際に武器を使ってみた感想なんだけど……」
「お、おう!どうだった……!?」
金庫へ代金をしまい、再びこちらへ振り向いたランドルフが、固唾を飲んでそう言った。
「ああ、最高だったよ!攻撃した大毒蜂が一瞬で消し飛ぶくらいの威力だ!本当に、いくら感謝しても足りないくらいの性能だよ!」
俺のそんな言葉を聞いたランドルフが、ほっとした様子で答える。
「そうか、それなら良かったぜ!大切に扱ってくれよ!」
そして、再びいつもの様子に戻ったランドルフは、何かふと思い出したように声を上げる。
「……ああ、そうだ!支払いもそうだが、伝えたいことがいくつかあるんだった!」
「伝えたいこと……?そういえば、置手紙にも話があるって書いてたけど……」
「おうとも。まず1つ目は、その武器の能力について、だ」
「武器の能力……?」
武器に能力があるなんて、初耳だ。
ファンタジー世界ではありがちな、魔剣のようなものということだろうか。
確かに、魔棍ハティは、何かを秘めてそうな怪しい輝きを放っている。
呪いとかマイナスの能力じゃなきゃ、何かしらの役に立つだろう。
「ああ、そうだ。これは、鍛冶師の専用魔法である【武具鑑定】を使った際に分かったことなんだが……」
そう言って、ランドルフは、相変わらず乱雑な字で何かを書き始める。
ちなみに、【武具鑑定】というのは、鍛冶師なら誰しもが持っている初期魔法であり、そ
の魔法を使うことで、武器の持つ能力なんかを知ることができるらしい。
「とりあえず、これを見てくれ。【武具鑑定】の結果の写しだ」
そう言って、ランドルフは、先程何かを書いていた羊皮紙を俺に手渡す。
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武具名:魔棍ハティ
特殊能力:主人の怒りや憎しみの感情を糧に、その威力を向上させる。
更に、月の光を浴びた際、真の力を解放する。
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「これって、性能としてはどうなんだ?」
俺は、ランドルフへ純粋にそんな疑問をぶつける。
「感情の高ぶりをトリガーにして能力が上がるってのは魔法にありがちだが、武器でそういう能力を持ってるのは、あまり聞いたことがない。特に後半の部分に関しては、俺のスキルじゃそれ以上分からなかった」
確かに、真の力を解放するっていうのはよく分からない。
まさか、持ち主の俺が狼男になるわけじゃないだろうし……。
「そんな訳で、申し訳ないが、詳しいことは実戦の中で試してもらうことになる」
「いや、いいよ。武器自体の威力は、実際に体験済みだ」
俺がそう言うと、ランドルフはほっと胸を撫でおろした。
「それなら良かった。ところで、もう一つ重要な話がある。むしろ、こっちが本題だ」
「わかった、聞かせてくれ」
そう答えた俺に向けて、ランドルフは話し始める。
「俺と、専属で契約を結んでくれないか?」
「専属契約……?」
聞きなれない単語に首を傾げた俺に、ランドルフが説明をしてくれる。
専属契約というのは、冒険者と鍛冶師が結ぶ契約のことで、その契約により、冒険者は腕の良い鍛冶師を、鍛冶師は固定の客を得るというシステムのことらしい。
腕の良い鍛冶師や一定以上の実力を持つ冒険者は、その殆どが専属契約を結んでいるという。
「専属契約をしてくれれば、他にどんな仕事が入っていてもお前のことを優先するし、武器や防具を作る際にも、無料とは言えないが少しくらい割安にできる」
説明を終え、そんな言葉を投げかけてきたランドルフに対し、再び俺の頭に疑問が浮かぶ。
「でも、ランドルフにそこまでのメリットがあるとは思えないんだけど……?」
「そのことか!定期的な収入が見込めるのは勿論だが、期待のルーキーであるお前に作品を使ってもらって、更に活躍してもらえば、俺の評判も同時に上がって、店は大繁盛って寸法よ!」
ランドルフは、ニヤリと笑ってそう告げる。
確かに、もし俺が活躍してランドルフの店を宣伝すれば、売り上げは上がるかもしれない。
「大繁盛かは分からないけど、腕の良いランドルフが専属になってくれるなら、むしろ俺からお願いしたいぐらいだよ」
俺は、ランドルフへ向かって、右手を差し出す。
「ああ、これからもロペス武具店をよろしく頼むぜ!ヨシヒロ!」
そう言ったランドルフは、俺の差し出した右手をがっしりと握る。
こうして俺とランドルフは契約を交わし、ランドルフは俺の専属鍛冶師になったのであった。
次回は、20~21時頃に投稿予定です。
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