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社畜・イン・ファンタジー ~異世界ブラック冒険譚~  作者: 揚げたてアジフライ
第二章 胎動する悪
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第30話 新たな任務

今回は、いつもよりシリアスというか、真面目な雰囲気を目指してみました

追記:獄王の牙となっていた部分を全て修正しました

 改めて、会場を見渡すと、そうそうたる顔ぶれが揃っている。

 

 この会議室まで案内をしてくれたギルド職員によると、今回議長を務める、モルドラックと呼ばれた老人は、ギルド本部のトップであるとのことだ。


 他のメンバーも、アルクス地方にある各街のギルド支部の代表、グスタの街の騎士団長など、普段の俺達であれば絶対関わる機会のない面々である。


「それでは、今回の一件について、グスタ支部のボールズ氏から、説明を」


 ボールズと呼ばれた、スキンヘッドが特徴的な壮年の男性が起立して、話し始める。


「はい、事の発端は4日前。アブダイル山脈の森にて、そこに座る冒険者、ヨシヒロ・サトウ、マーク・マルティネス両名が、『獄王の刃』を名乗る集団に襲撃を受けました」


 『獄王の刃』の名を聞いた会場の面々がざわつきを見せる。

 そんな会場を、再び議長であるモルドラックが一喝した。


「静粛に。ボールズ氏、続けて」


「承知。普通であれば戯言であると判断されてもおかしくない内容です。しかし、この2人は、確たる証拠として、『獄王の刃』の手下を捕縛し、連れ帰った」


 2人というか、殆どマークの活躍だけどな……。

 でも、捕縛した下っ端は確か尋問中に……。


「しかし、捕縛した翌日、尋問を受けていたヤツ(・・)は、死亡しました」


「何だと!?それは、グスタ支部の不手際ではないのかね?ボールズ氏ィ……?」


 恰幅がいい、というよりは太り過ぎた、いかにも悪役貴族といった風体の男が、ボールズを詰問する。


「……話を最後まで聞いてください、オルコット卿。死因は、何らかの呪術による他殺。恐らく、組織による口封じでしょう。襲撃を受けた二人の目撃情報と手口から、今回の殺害は、『獄王の刃』幹部である、呪毒のタンムズによるものだと、我々は推測しています」


「呪毒のタンムズだと……!?」


「まさか、奴が生きていたのか!」


「やはり、あの時の掃討作戦を生き延びていたか……」


 その名前を聞いた会場のメンバー達が、三者三様に驚愕の声を上げる。

 

 呪毒のタンムズというのは、恐らく、最初に俺たちの前に現れた男のことだろう。


 痩身で、右頬の大きな傷痕が特徴的だった。

 確かに、一人だけ格が違うような感じだったが、まさか幹部だったとは……。


「私からの報告は以上です。モルドラック様、あとはよろしくお願いします」


 そう言って、ボールズは着席し、話を議長へ引き継ぐ。


「うむ、ありがとう。儂は、『獄王の刃』に対抗するため、特殊部隊を設立しようと考えておる」


「ほう!それでは、その役目、我が騎士団が担いましょう!」


 議長の発言を聞いた男が立ち上がると、よく通る声で主張する。

 

 確かに、グスタの街を守護する騎士団は精鋭揃いで有名だと聞いている。

 それ程優秀な騎士団であれば、特殊部隊の役割には最適だろう。


「いや、それには及ばぬ。儂はこの特殊部隊を、そこな両名、ヨシヒロ・サトウと、マークマルティネスに担ってもらおうと思っておる」


 ……なんだって?

 

「……お言葉ですが、議長。そこの駆け出し冒険者では、荷が重いかと思われますが」


 騎士団長が、いかにも不服であるといった様子でそう告げる。


 流石に、俺も同意見だ。


 いくらランクアップしたからといっても、俺達は駆け出しに毛が生えた程度の冒険者。

明らかに役不足だろう。


 優秀な盗賊シーフのマークであれば、斥候や偵察を担えるかもしれないが、ちょっと固いだけの俺では、恐らく何の役にも立てない。


「いや、良いのだよ、ライオネス氏。この二人は駆け出しとはいえ、たった二人で邪狼ダークウルフを討伐し、『獄王の刃』を退けた、新進気鋭の冒険者だ。だからこそ、この二人に、期待の意味も込めて、この役割を任命したい」


「……そう、ですか。それならば、承知しました」


 騎士団長のライオネスは、まだ何か言いたげな様子であったが、その言葉を飲み込んだ。


「うむ、すまぬな。混乱や情報の漏洩を避けるためにも、この任務は、少数精鋭で臨みたいのだ。他の者も、今回の決定は、他言無用で頼む」


 こうして、俺達は『獄王の刃』対策の特殊部隊に任命されたのであった。


 普段は普通に冒険者として活動して、ギルド上層部からの指示があった時にのみ任務を行うそうだ。


 未だ喧騒をみせる場内に、モルドラック議長の声が響く。


「それでは、これをもって、第一回『獄王の刃』対策協議会を閉廷する!」


―――その言葉を皮切りに、喧騒に包まれる協議会は、ようやく閉廷する。



                 ◆◆◆



 上座に座っていた者から順に退席していき、最後になって、ようやく俺たちは、重苦しい空気に包まれた会議室から抜け出すことができた。


「兄ちゃん、久しぶりだな!」

 

 通路に響いた、聞き覚えのあるその声に、思わず振り向く。

 随分前に退出した筈だったが、どうやら俺たちのことを待っていたらしいカタギリに声をかけられた。


「お久しぶりです、カタギリさん!まさかこんなところで会うとは……」


「ああ、俺も驚いてるぜ!まさか噂の冒険者が兄ちゃんだったとはな!」


 そう言って、カタギリは俺の背中をバンバンと叩く。

 あの時と違って、吹き飛びそうにはならなかったが、ジンジンと背中が痛む。


「おい、ヨシヒロ……。お前、ロックウェル卿と知り合いだったのか?」


 目を丸くしたマークが、俺に向けてそう尋ねる。


「ああ、森で迷ってたところを、カタギリさんに助けてもらったんだ」


 そう、俺が向こうの世界から転移?したあの日、森で迷っていた俺は、偶然通りかかったカタギリさんに声をかけられ、グスタの街まで案内されたのだ。


「まさか、あの(・・)大戦士カタギリと話す日が来るとはな……」


「えっ……?」


 マークの言葉に、俺は思わず驚きの声を上げる。

 やたらガタイがいいから、元冒険者なのかもしれないとは思っていたが、そんなに有名な人だったとは……。


「カタギリさん、そんなに強い冒険者だったんですか!?」


「そんな大層なもんじゃねえよ。昔、ちょっとばかし腕っぷしが強かっただけさ」


「いやいや、20年前の『獄王の刃』掃討作戦での雄姿は、今でも冒険者の間で語り草ですよ……」


 マークが、カタギリの発言を否定するようにそう言う。


「まぁ、最近は、ギルドでわけえ奴らをしごいてるだけのジジイだ。気安くいこうや」


「いやいや!あんた、ギルド本部の軍事顧問でしょう!」


 再びマークが大きな声を上げて反論した。


「ギルド本部・・の軍事顧問……!?」


 まさか、カタギリさんがそんなに偉い人だったとは。

 ギルド本部の軍事顧問ともなれば、アルクス地方全土の軍事を束ねる代表だ。


 初対面からフレンドリーすぎて想像もしなかった……。


「あー、一応、肩書上はそういうのもやってるが……」


 カタギリさんが、豊かな髭を撫でながらそう呟く。


「ま、今度会ったら一緒に飲みにでもいこうや!」


「いやいや、そんな簡単に行けるわけないでしょう……」


 豪快過ぎるカタギリに振り回されるマークは、溜息をつきながら、呆れたようにそう言う。

 まぁ、そんな有名で偉い人が町の酒場なんかに行ったら、大変なことになるだろうな……。


 そんなこんなで、意外な場所で、意外な人物と再会した俺は、カタギリさんと別れ、マークと一緒にギルド本部を後にしたのであった……。


次回は本日21時頃に投稿予定です

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