第28話 『獄王の刃』との邂逅
第2章、第1話となります。
今後も頑張っていきますので、よろしくお願いします。
追記:獄王の牙となっていた部分を全て修正しました
―――キィン!
俺の盾が魔物の攻撃を弾き、金属質な音が辺りに響く。
「マーク!今だ!」
「ああ!任せろ!」
素早く振り下ろされたマークのナイフが首を断ち、魔物が息絶える。
ランクアップから1週間、俺は、マークと共にクエストへ出かけていた。
今は、依頼の目的だった魔物を連携で退治し終えたところだ。
「マークがいると楽だよ。俺一人だと、どうしても狩りに時間がかかっちゃうから」
「楽をさせてもらってるのは俺もだ。ソロだと、耐久の低い俺はどうしても一撃離脱しないといけなくなる」
そう言いながらマークは、ドロップアイテムを拾ってポーチにしまう。
「そろそろ暗くなってきたし帰ろうか」
「そうだな」
マークとパーティを組んでから依頼完了までが早くなったものの、5つのクエストを片付けた頃には、既に日が沈みかけていた。
大きく伸びをした俺が、荷物をまとめ始めたところ、マークがそれをそっと止める。
「……待て、ヨシヒロ」
「なんだ?魔物か?」
何かに気づいた様子のマークが、木の陰を見つめているが、俺には何がなんだか分からなかった。
「――誰だ、姿を見せろ」
マークが予備のナイフを投擲すると、何もなかった空間から、漆黒のローブを纏った男が現れる。
ナイフを躱した痩身の男は、俺たちに向かって不敵な笑みを浮かべた。
「おっと危ない。流石、邪狼を退けただけはある……」
男は飄々とした様子でそう言い放つ。
俺達が邪狼を討伐したことを知っている?何者だ?
「何の用だ。敵意を向けるなら容赦はしない」
「ごめん、マーク!全く気付かなかった……!」
「いや、いいさ。索敵も盗賊職の役割だ」
「ふふ、随分悠長ですねぇ。既にあなた達は我々に包囲されているというのに」
男がそう告げると、俺達の周囲に次々とローブを纏った何者かが現れ始める。
「私たちは【獄王の刃】。この後も無事生きていれば、以後、お見知りおきを。」
痩身の男は、それだけを言い残し、歪んだ空間の中に消えさった。
恐らく、転移系の魔法か何かを使用したのだろう。
背中合わせで警戒する俺達に向かって、『獄王の牙』を名乗った者たちが、ジリジリと迫ってくる。
「……ヨシヒロ、やれるか?」
「ああ、任せろ!」
襲い掛かってくる【獄王の刃】達の攻撃を【硬化】で防ぐ。
「何っ……!?」
一斉に攻撃を弾かれた敵は散開して距離を取る。
しかし、マークがその隙を見逃さない。
「……隙だらけだぜっ!」
マークの持つナイフの柄が頭を打ち、一人を昏倒させる。
「くっ……数の有利はこちらにある!かかれ!」
片刃の剣で切りかかってきた敵の攻撃を、今度は盾で防御する。
そして、メイスを振りかぶった全力の横殴り。
「がはっ……!」
俺の攻撃を腹に受けた敵が大きく仰け反る。
そして、仰け反った敵に向かって失踪したマークが全力の跳び蹴りを見舞う。
マークの蹴りを受けた敵は吹き飛び、木にぶつかって意識を失った。
不利を悟った敵集団は、今度は背後に向かって、じりじりと距離を取り始める。
撤退するつもりなのだろう。
「まだやるか?」
最初に気絶させた男をロープで縛りつけたマークが、敵を威嚇する。
「くっ……!撤退する……!」
リーダーと思わしき男は、懐から何やら取り出すと、地面に向けてそれを投げつける。
瞬間、辺りが閃光に包まれ、視界が奪われる。
「しまった、閃光玉か……!」
不意を打たれた俺たちは、対処する暇もなく敵を逃すことになった。
◆◆◆
「すまん、ヨシヒロ。こいつ以外取り逃がした」
マークはそう言って、簀巻きにして転がっている男を親指で示した。
「いや、それだけでも凄いよ。マーク、何でもできるよね」
「盗賊だからな」
「いや、それ言ったら何でも許されるわけじゃないからね……?」
こんな時も冗談を言うマークに少し呆れつつも、普段と変わらないマークの様子に緊張の糸がほぐれた。
「それにしても、【獄王の刃】か……」
マークはそう呟くと、顎を撫でるようにして考え込む。
どうやら、先程の集団について心当たりがあるらしい。
「さっきの奴らのことを知ってるのか?」
俺がそう尋ねると、考え込んでいたマークが『獄王の刃』について話し始める。
マークによると、獄王の刃は魔王の誕生と同時に活動を開始した組織であり、世界の転覆を目論んで暗躍しているという。
魔王をこの世界に呼び出したのも、獄王の刃だという噂があるらしい。
マークは、簡単に彼らについて説明すると、今度は、この世界について話を始めた。獄王の刃は古い組織であるため、かなり歴史を振り返る必要があるそうだ。
その昔、魔王は破竹の勢いで、世界の半分を征服したという。
そして、魔王によってこの世界が崩壊することを危惧した神は、魔の者に抵抗を続けていた人間達に加護を与えて、対抗策とした。
その後、加護の力を得た冒険者たちによって、どうにか世界の均衡は保たれた、というのが現代までの歴史のあらましだ。
「ヨシヒロも知っていると思うが、これが冒険者制度の始まりだ」
この辺りの歴史については、俺もギルドで冒険者登録をした際に軽く説明を受けた。
世界が崩壊する寸前だったというのは初耳だったが……。
「ここ数十年は、魔王も獄王の刃も、目立った活動をしてなかった筈だが……ついに動き出したか……」
マークは、噛みしめるようにそう呟く。
なんだか、壮大なことに巻き込まれてるような気がするな……。
「ところで、この簀巻きはどうするんだ?」
「ああ、それか。ギルドの詰め所に持っていこう。専門の拷問官がいるから、何かしら情報は引き出してくれると思うぜ」
ギルドにはそんな役割の職員までいるのか。
一歩間違えれば、俺も不死者疑惑の際に拷問されていたかもしれないと思うとぞっとする。
「ヨシヒロ、すまないが、こいつを担いでもらっていいか?俺の筋力値だと厳しそうだ」
「わかった、とりあえずグスタの街まで戻ろう」
加護のおかげで上昇した筋力を活かし、簀巻きの男を軽々と担ぎ上げる。
そして、周囲を警戒しながら進むマークの後ろに続き、街までの岐路を辿ったのであった。
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