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社畜・イン・ファンタジー ~異世界ブラック冒険譚~  作者: 揚げたてアジフライ
第一章 剣と魔法とデスマーチ
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第27話  銀色の疾風

予定より少し早いですが投稿です


『ガルルルルァアアアッッ!!!』


 邪狼の放つ全力の一撃が、俺の体に鋭い爪撃を加える―――

 その筈だった。

 瞬間、俺と邪狼の間に、銀色の風が吹き抜ける。


 ―――キィィン!


 鋭い金属音が辺りに響き渡った。

 そう、マークのナイフが、俺へと振り下ろされた邪狼の爪を弾き返したのだ。


「すまん、遅くなった!」


「マーク……!」


「俺の筋力じゃ長くはもたないから、このまま邪狼を頼む!手下の狼は俺が相手をする!」


 重い一撃に耐えかねたマークが、上手く勢いを殺しつつ、俺の後方へ離脱する。

 そして、背中合わせの形になった俺たちは、互いの敵と向かい合った。


「ヨシヒロ、俺が狼達を始末するまで、耐えきれるか?」


「ああ、任せてくれ。耐久だけは自慢なんだ……!」


 振り下ろされた邪狼の一撃を、盾で受け流す。


「やるじゃないか。俺も負けてられないなッ……!」


 俺の目では捉えられないほど速く動いたナイフが走り、狼の首を跳ねた。


「いくぞ、ヨシヒロ!」


「ああ、マーク!」


 こうして、俺達の戦いは、再び幕を開ける。

 俺は目の前の邪狼と、マークは手下の狼の群れと、それぞれで戦闘を開始した。


「シッ……!」


 マークが俺の後ろを離れると、そのナイフを以て、狼達の命を次々に奪っていく。

 その間も俺は、次々と繰り出される邪狼の攻撃を、盾で受け止め、メイスで弾き、防戦に努めていた。


「待たせたな、ヨシヒロ。こっちは完了だ!」


 狼の群れを、ものの数分で倒したマークは、俺に向かってそう声を上げた。

 十数匹は居た筈の狼達は、皆が急所へと鋭い一撃を喰らい、血溜まりに沈んでいる。


「すごいな、流石だ……!」


「ここからは、また作戦通りに戦うぞ!俺は一度離脱する!」


 マークが離脱したことにより、邪狼の怒りはこちらだけに向けられる。

 爛々と光る赤い瞳がこちらを見据え、その怒りのままにこちらへと襲い掛かった。


『ガァアアアアアアアッッッ……!!!!!』


 怒りに満ちた邪狼が、これまでで一番のスピードでこちらに爪を振り下ろす。

 どうにかその一撃を受け止めたものの、想像以上の重さがこちらへと襲い掛かる。

 相手の攻撃の勢いを殺しきれず、仰け反るような体勢になった俺に向かって、再び邪狼が爪を振りかざした。

 この体勢からでは、盾での防御は間に合わない。

 だが、俺にはもう一つ、とっておきの防御の秘策がある。


「我が身を盾に……!」


 短文の詠唱文と同時に魔法の光が全身を包み込み、【硬化】が発動する。

 光に包まれた俺の全身は、金属のように硬化し、邪狼の一撃を受け止めた。

 衝撃が響いてくる感覚はあるが、邪狼の攻撃であっても問題なく防ぐことができる。


『ガァァアアアッ……!?』


 恐らく、邪狼は俺を殺すつもりで必殺の一撃を放ったのだろう。

 攻撃を防がれた邪狼は驚きの声を上げ、明らかな動揺を見せる。


「……隙だらけだぜ!」


 油断の色を見せた邪狼の背中に、再び銀色の剣閃が走った。

 疾風はやての如き一撃は、邪狼の身体に確かな傷を刻む。


『ガッ……ガアアッッッ……!!!』


 マークの攻撃を受けた邪狼が、これとは異なった反応を見せた。

 単に痛みに悶えているだけではなく、息も荒く、ふらついている。


「【毒の牙(ポイズンファング)】がようやく効いてきたか……!」


 そう、邪狼を苦しめているのは、マークの【毒の牙】の効果だった。

 【毒の牙】は、遅効性かつ蓄積型の毒を自身の武器へ付与する効果を持つ魔法である。

 三度の攻撃により、ようやく邪狼へ効果をもたらすだけの毒が蓄積されたのだ。


『グ、グルルルオッ……!』


 不利を悟った邪狼は、俺達から距離を取ろうと後ろへ跳躍する。

 だが、その動きからは、これまで俺達を苦しめた力強さも、素早さも失われていた。


『……ガルルルルアッッ!!』


 息も絶え絶えといった様子の邪狼は、それでもなおマークに向かって跳びかかる。

 しかし、マークはその攻撃を回避しようともしなかった。


 マークに振り下ろされた邪狼の大爪を、前に出た俺の盾が弾く。


「……俺が庇わなかったら、どうするつもりだったんだ?」


「そんな薄情な奴に背中を預けたつもりはないさ……!」


 マークが、そう言ってクールな笑みを浮かべる。

 全く、そこまで信用されたら、俺ももうひと踏ん張りするしかないではないか。


「畳みかけるぞ!いけるか、ヨシヒロ!」


「もちろんだ!前衛は任せろ!とどめは頼んだぞ!」




◆◆◆




 マークの【毒の牙】の効果もあり、攻勢に映った俺達が、邪狼を討伐するまで、そう時間は掛からなかった。


『グ、グルルルルアッ……!』


 邪狼の体が青い光となり、次第に消滅していく。

 そして、その場には、特徴的だった【邪狼の胸結晶】だけが残った。


「終わった、か……」


 最後の一撃を終えたマークが、天へ昇っていく邪狼の光を眺めながらそう呟く。


「ああ、街へ帰ろう……!」


「そうだな、ギルドへ報告すれば、ようやく俺達もランクアップだ!」


 街へと戻った俺達は、すぐさま邪狼の討伐依頼の達成を報告する。

 それと同時に、揃ってランクアップのための申請を行うことになった。


 そして、ランクアップの申請から三日後―――


「マークさん、サトウさん!おめでとうございます!ランクアップです!これでお二人とも冒険者ランクDに昇格、同時受注数が10個までアップです!」


 ランクアップを告げたアリシアの表情は、まるで自分のことかのように嬉しそうだ。

 まぁ、たった2人で中級者向けのクエストへ行ってしまったので、報告と同時に、「また無茶をして……!」と、かなり怒られたのだが、とりあえずそれは置いておこう……。


「やったな、ヨシヒロ。ようやくランクDだぜ」


「ああ、長かったよ。ありがとう、マーク!」


「いや、お二人とも、異例のスピードでランクアップしてますからね……?」


 アリシアは、呆れたような目で俺達にそう言った。

 ギルドからの帰りに話を聞いたところによると、どうやら、マークも俺と同時期に冒険者登録をしたのだとか。

 それに、偶然にも、ランクアップも殆ど同時期に行われてきたらしい。


「ともかく、めでたいことには変わりないさ」


 マークが喜びを噛みしめるようにそう言った。

 この世界を訪れてから一ヵ月以上が経過し、ようやく俺も駆け出しから一歩進むことができたのだ。


「そうだね!この後は祝杯といこう!おすすめの店があるんだ!」


 せっかくなので、俺の行きつけでもある『火垂ほたる火亭』で昇格祝いをしたい。

 ランチだけじゃなく、夜は酒場として賑わうあの店のつまみは絶品なのだ。

 普段はあまり酒を飲まないのだが、こんな時くらいは冷えた麦酒エールで心と身体を癒したい。


「なぁ、ヨシヒロ。折り入って頼みがあるんだ」


 マークがこれまで見せたことのないような、真剣な顔でこちらに話しかけてくる。


「どうしたの?お金のことが心配なら、今日は俺が奢るけど……」


「いや、そうじゃなくてな……。今回は臨時だったが、その、俺と正式にパーティを組んでくれないか……?」


 なんだ、そんな事だったのか。

 改まって何を言うのかと思えば、そんなもの、こちらの返事は決まっている。


「そんなの当たり前じゃないか!こちらこそ、よろしく頼むよ!」


「ありがとう、ヨシヒロ。お前なら俺の背中を任せられる」


 少し照れた様子で、マークが俺に向かってそんな言葉をかける。


「よし、そうとくれば、ランクアップ祝い兼、パーティ結成祝いだ!」


「……ああ、行こうぜ!」


 こうして、俺とマークは正式にパーティを結成することになった。

 この世界に来て初めての仲間は、とびきり強くて頼りになる盗賊だ。

 何となく、マークと一緒ならば、どんなクエストでもクリアできるような気がした。


「よーし、今日は飲み明かすぞ……!」


 そんなこんなで、冒険者達の夜は更けていく。

 マークは、案外酒に強くないようで、俺は酔いつぶれたマークを背負って帰ることになるのだが、これもまた別のお話―――


お家に帰れたら日付変わる頃にまた投稿するかも……


6/15 17:00追記

諸事情により帰宅できなかったため、本日分は0時頃に一気に投稿します

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