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社畜・イン・ファンタジー ~異世界ブラック冒険譚~  作者: 揚げたてアジフライ
第一章 剣と魔法とデスマーチ
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第26話 社畜と初めての共闘

なんと、先日は1日で500アクセスを超えました!ブックマークもありがとうございます!

今回は、いつもよりは少しだけ長めです。


邪狼ダークウルフ討伐ってかなり難しいクエストの筈だけど、2人で大丈夫なの?」


 アブダイル山脈への道を進みながら、俺は隣を歩くマークへと声を掛けた。

 勢いで出発してしまったが、相手は格上の魔物。不安が無いと言ってしまえば噓になる。


「自慢じゃないが、俺も腕は立つ方だ。それに加えて、実力は折り紙付きのヨシヒロもいる。今回の邪狼討伐には、精鋭だけで臨みたかった。危険だからこそ、あえて2人だけだ」


 本当は、もう1人くらい仲間がいれば良かったんだけどな、とマークが続ける。

 確かに、もう1人、遠距離から攻撃が出来るような人がいれば、前衛を担う俺、遊撃役を担うマーク、遠距離攻撃担当で、かなりバランスの良いパーティになっただろう。

 とは言え、マークの言う通り、格上の魔物であるからこそ、少数精鋭で挑みたいと言う気持ちも分かる。

 実際、防御力の低い後衛が一人増えてしまえば、全体の火力は上がれど、俺だけでは守り切れない可能性もあるからだ。


「なるほどね。ご期待に沿えるよう頑張るよ」


「あぁ、お互いにな」


 他愛ない会話をしながらも更に時は進み、俺たちは目的の廃村まで約1時間といった場所まで来ていた。

 薄暗い森を進んで行く中で、マークがふと思い出したように声を上げる。


「そうだ、小休止も兼ねて、ここらで情報交換をしておくか。お互いの魔法や得意な戦法が分かってた方が、連携も取りやすいだろ?」


「確かにそうだね。この辺りなら少しスペースがあるし、休憩しよう」


 俺はいつも持ち歩いている野営道具を広げ、焚き木を組んでいく。

 少し高かったが、ライターのような魔道具を購入したおかげで、火を起こすのは簡単なのだ。


「驚いた。随分手際がいいな」


 マークが感嘆の声を上げ、焚火の近くに腰かける。


「まぁ、貧乏冒険者だから、よく野営するもんでね」


 鍋にお湯を沸かし、手製の野草茶を入れる。

 一息ついたところで、俺は本題を切り出した。


「まず、マークの魔法や得意戦法について聞いていいかな?」


「あぁ、俺は盗賊シーフだから、得意なのは高い敏捷を活かした奇襲や不意打ちだ。見ての通り、獲物はナイフを使ってる。そっちはどうだ?」


「俺は耐久のステータスがかなり高いから、敵の攻撃を受け流してからの反撃カウンターが得意かな。パーティで戦うなら、囮役なんかもできると思うよ」


 マークは、RPGでありがちな、高い敏捷値を活かした盗賊職のようだ。

 俺が敵の攻撃を引き付け、マークが攻撃をするといった戦法が一番効率が良さそうである。


「普通の【冒険者】は特定のステータスが高いなんてことは無い筈なんだが……。流石、歩く死体(リビングデッド)は規格外だな。ちなみに、ヨシヒロは魔法は使えるか?」


「ああ、【硬化】という魔法が使える。名前通り全身を硬化させる魔法で、ある程度の攻撃は無効化できる。効果中は動けないけど、解除もある程度任意だから、敵に囲まれた時なんかに便利だと思う」


「効果中に動けないのは難点だが、解除が自由なら、ヨシヒロには壁役を任せることになりそうだな。ヨシヒロには適度に反撃を狙ってもらいながら、メインの攻撃は俺が担当しよう」


 マークも俺と同じ考えのようだ。

 実際、役割分担は大事だし、単純に考えればその戦法が一番効率がいいだろうからな。


「ちなみに、マークは魔法が使えるのか?」


「ああ、俺が使えるのは2つ。武器に毒性を付与する【毒の牙(ポイズンファング)】と、【強奪スティール】って魔法だ。後者は、今実演した方が早いかもな」


 そう言うと、マークは俺に向かって左手を突き出した。


「奪え―――【強奪】……!」


 超短文の詠唱を終えると、マークの左手が光り、その手の中には、俺のポーチに入っていたはずの回復ポーションが握られていた。


「とまぁ、こんな感じで相手の持ってる道具をランダムで奪うスキルだ。盗賊なら誰でも使える初級魔法だよ」


 最初級職の冒険者である俺は、転職時から使える魔法はなかったが、盗賊の場合はそうでなく、誰でも使える初級魔法があるらしい。 

 マークの説明によると、【強奪】は相手の道具や装備を奪う魔法なので、武器や道具を使うことが少ない魔物相手には使う機会が少ないそうだ。

 ちなみに、【強奪】の効果は、自身の器用と運の値によって成功率が変わるそうで、マークの【強奪】は、その高い『器用』のステータス値から、ほぼ9割とのことである。


「お互いの特技や魔法はそんな感じかな?今回は、俺が壁役になって、マークに攻撃してもらうのをメインの戦法にしよう。もし手下の狼に囲まれたら、迷わず俺を囮にしてくれ」


「囮にするかは置いておくとして、戦い方はそんな感じでいくのがベストだな」


 邪狼の特徴として、野生の狼を使役する能力があるのだそうだ。

 野生の狼程度であれば、囲まれて攻撃されたところで恐らくノーダメージだろう。

 まぁ、ボスである邪狼の攻撃力が分からない以上、あまり使うべき戦法ではないのかもしれない。


「じゃあ、行こうか」


「ああ、申し訳ないが、壁役のヨシヒロが先行してくれ。俺は耐久値がかなり低いから、不意打ちを受けたらそのまま退場するかもしれん……」


 苦々しい顔でそう告げると、マークは俺の後ろに続くように歩き始めたのだった。

 マークが離脱してしまえば、この依頼は恐らく失敗なので、その点を第一に考えて行動しなければ……。




◆◆◆




 休憩を終えて歩き始めてから約1時間、ようやく、目的地である廃村に辿り着いた。

 かつてはそこそこの規模の村があったのだが、魔王の誕生により周囲の魔物が活性化し、廃村を余儀なくされたのだという。

 

 村が捨てられてから10年程だということで、管理のされなくなった歩道の石畳は所々がひび割れ、雑草が生い茂っている。

 だが、建物自体はまだそう古くないようで、少し整備すれば、暮らすことができそうだ。


「ここからは慎重に進んでいこう。俺が斥候を担当するから、魔物を見つけたらスイッチしてヨシヒロが前に出てくれ」


「了解だ。少し後ろを着いて行くから、邪狼を見つけたらハンドサインを頼む」


 マークが慣れた様子で、建物の陰に隠れつつ、慎重に進んでいく。

 本職の盗賊だけあって、実に優秀である。


「見つけた。中央の広場の辺りだ。見えるか?」


 マークがそう言って、枯れた噴水が放置された広場を指差す。


 そこには、漆黒の体毛に覆われ、胸にある宝石のような部位が特徴的な狼型の魔物がいた。

 かなり距離があるので正確には分からないが、恐らく体長は3メドルといったところか。


「見えた。どうする?先に俺が突っ込むか?」


「いや、このまま建物の陰を利用して、邪狼の後ろまで進む。近くまで行ったら俺が不意打ちを仕掛けて離脱するから、その後はヨシヒロの方に注意が向くようにターゲットを取れるか?」


「分かった。任せてくれ。俺はこのまま近づいて、邪狼の正面側で待機する。マークが離脱したら、その時点で飛び出して注意を引き付けるよ」


「了解。それでいこう。邪狼の嗅覚や聴覚は鋭い。ギリギリを攻めるから、俺の指示した場所で待機を頼む」


 そう言って、マークがこちらに来いというジェスチャーを出し、慎重に進み始める。

 10メドル程進んだ場所にある家の裏まで辿り着くと、マークはここで待機するように指示を出した。

 少し遠いが、ここなら邪狼からは死角になっており、待機場所としては最適だろう。

 俺が、了解の意味を込めて頷くと、マークは、邪狼の後ろに位置する大きな家を指差し、進んでいった。あの裏まで進むということだろう。


 体感で5分ほど経過した頃だった。

 目的であった家の裏からマークが飛び出し、邪狼の背中に向かって全力で疾駆する。


「流石に早いな……!」


 盗賊職だけあってか、マークの敏捷はかなり高いようだ。

 目にも留まらぬ速さで走るマークは、どんどん邪狼との距離を詰めていく。

 

「―――毒蛇の牙よ、魔の者を蝕め……【毒の牙】!」


 マークが走りながら詠唱を開始すると、ナイフが毒々しい紫色に染まる。


『グルルオッ……!?』


 邪狼が驚きの声を上げるが、時すでに遅し。

 その大きな背中を目掛け、マークはナイフを振り下ろした。


「スイッチ!」


 ナイフの一撃と同時にマークが戦線を離脱し、俺に向けてそう叫ぶ。


「了解!こっちだ、邪狼!」


 俺は全力で叫ぶと同時に、左手に持った盾をメイスで打ち鳴らす。

 甲高い金属音が周囲に響き、こちらに気づいた邪狼がこちらへと駆け出す。


『グルルルァアアアアアア!!!!』


 マークの不意打ちを喰らい、怒りに満ちた声を上げる邪狼は、俺に向かって跳びかかってくる。

 鋭い爪の一撃は確かに早いが、目で追えない程では無い。


―――ギィィン!


「ぐっ……!」


 邪狼が振り下ろした右腕を、構えた盾で弾き返す。

 だが、威力を殺しきれなかった俺は、少し後ろへと押し出される。


「まずい……!」


 隙を見せた俺へと攻撃を加えようとした邪狼が、再び爪を振りかぶる。

 だが、マークの毒に染まったナイフが、その背中へと再度斬撃を加えた。


『ガルルルァアッ……!?』


「遅効性の毒だ!時機にスピードも攻撃力も落ちる!」


 不意打ちを喰らった邪狼が、マークへ反撃を加えようと振り返った。

 だが、マークは目にも留まらぬ速さで離脱している。


「……こっちも忘れるなよ!」


 隙を見せた邪狼に対し、今度は俺がメイスを振りぬき、全力で打ち据える。


『グルルゥゥウウウ……!!!!』


 再び邪狼の視線がこちらに移る。

 ここまでの流れは作戦通り、順調そのものだ。

 こちらに注意を向ければマークが後ろから不意打ち、マークに注意を向ければ、俺がターゲットを取って反撃。

 恐らく、このままいけば、毒の効果もあって上手く討伐ができるだろう。


『アオォォオオオオオオオオオオオオン!!!!』


 瞬間、邪狼の瞳が赤く輝く。

 そして、地の底から響くような遠吠えが辺りへと響き渡った。


『『『ウオオオォォォンッ……!』』』


 その遠吠えに応えるように、家の陰から、森の中から、次々と現れる。


『ガルルルッ!』


 そして、こちらに向かって駆けてきた狼は、不意を突くように俺に向かって跳びかかった。


「……ぐうっ!」


 どうにか反応し、狼の攻撃を盾で弾き返す。

 だが、次々に現れた狼達は、あっという間に俺達を取り囲んだ。


「くそ……!どうする……!?」


 狼達の仕掛けてくる波状攻撃を、盾とメイスを使いつつ、どうにか受け流していく。

 だが、対多数の戦闘では、必ず数に不利がある俺の側に隙ができてしまう。

 反撃の為にメイスを振りぬいた瞬間、俺は無防備な体勢になってしまった。

 これまでは、俺と部下達の戦闘を静観していた邪狼も、その隙を見逃さない。


『ガルルルルァアアアッッ!!!』


「くそ、まずい……!」


 【硬化】の詠唱も、盾での防御も間に合わない。

 そして、邪狼の放つ全力の一撃が、俺の体を切り裂いた―――


次回は、本日21時投稿予定です。

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