第24話 マジカル★社畜
タイトル通り?主人公がついに魔法を習得します。
突進獣の討伐を終え、無事に報酬を受け取った俺は、その足で公衆浴場へ向かっていた。
公衆浴場というのは、その名の通り住民へ解放されている大浴場であり、つまりは銭湯のことである。
シャワーを浴びる程度であれば宿に備え付けのものがあるのだが、屋外に設置されており、何よりも冷水しか出ないので使いづらい。
一応節約している身ではあるが、冒険での疲れを癒す目的も兼ねて、週に1回程度は、ゆっくりと広い湯舟に浸かるために公衆浴場を利用しているのだ。
外見や内装は古代ギリシャ風の公衆浴場だが、シャワー等は魔法を駆使した仕組みとなっており、現代的な機構になっている。
入浴料は500エルと、安い宿と同じくらいするのだが、ある程度金銭的に余裕のある冒険者たちは、俺と同じように冒険での疲れを癒すため、足繁く公衆浴場に通う。
何よりも嬉しいのが、この公衆浴場は、お湯を窯で沸かしただけの湯舟ではなく、地下から湧き出した温泉であり、疲労どころか、多少の傷なら癒してしまう効果があることだ。
そのため、湯治の目的で通う冒険者も多く、公衆浴場の存在は、グスタの街の冒険者たちを、肉体的にも精神的にも癒すものとなっている。
「ふぃー、さっぱりした……」
浴場を出た俺は、宿へと戻り、久しぶりのステータス確認をしていた。
一応、今回の突進獣も格上の魔物なので、ある程度は期待できる筈だが……。
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<<<ヨシヒロ・サトウ>>>
冒険者ランク:E レベル:25
職業:冒険者
筋力:D265
耐久:C443
敏捷:D207
知力:D105
器用:D196
運 :D113
<<魔法>>
【硬化】:全身を硬化させ、防御力を上昇させる。硬化は耐久値に応じて強化。
詠唱文:『我が身を盾に』
<<固有スキル>>
【不眠不休】:一定時間内の活動における疲労減少。
睡眠属性の干渉に対し、中程度の耐性を得る。
<<常時スキル>>
【毒耐性】:毒属性への耐性を得る。一定レベル以下の毒を無効化する。
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やはり、耐久の値だけステータスがかなり上昇している。
突進獣との闘いで、何度もその突進を受けていたので、その成果もあるのだろう。
「というか、ついに魔法を……!」
そう、何よりも、とうとう魔法を覚えることが出来たのだ。
効果こそ地味にも思えるが、堅実さのある魔法である。
今まで純粋な殴り合いばかりだったので、新しく覚えた盾を使った戦法も含め、戦略がかなり広がりそうだ。
これはもう、実戦で試すしかない。
魔法を覚えた高揚感に居ても立っても居られなくなった俺は、早速ギルドへ向かうのであった。
そう、せっかく覚えた魔法が、あんな効果であることも知らずに……。
◆◆◆
ギルドで受注したのは、まだ記憶に新しい『ゴブリンの群れ討伐依頼』だ。
ゴブリンは繁殖力が高く、頻繁に出没する魔物であるため、殆ど常時、討伐依頼が張り出されているのである。
前回と同じく、群れの数が20匹前後で、目的地も同じ場所だ。
『ギィ、ギィッ……!』
森の中を捜索すると、ゴブリンの群れはすぐに見つかった。
全身を硬化させる魔法であれば、前回のように囲まれても、ダメージを受けることは無いだろう。
まさに、こういった集団戦をする際にもってこいの魔法である。
俺は、魔法の詠唱文を唱えながら、ゴブリン達へ向かって駆け抜けた。
「我が身を盾に……!」
全身を淡い光が包み、全身が硬く変化していくのを感じる。
ゴブリン達は素早く俺を囲むと、その手に持った木製の粗末な棍棒で、一斉に殴りかかって来た。
―――キィン!
しかし、ゴブリン達が振り下ろした棍棒を、硬質な音を立てた俺の身体が全て弾く。
完璧だ。まさに目論見通り。
これなら、盾や防具を買う必要すら無かったかもしれない。
(さて、反撃に移るか……!)
そう思って、反撃に移ろうと思った時だった。
全身が鋼鉄の塊になったかのように重く、一切動くことが出来ない。
そう、俺の習得した【硬化】は、文字通り身体を硬化させるばかりで、発動中は動くことすら出来ないと言う残念過ぎる魔法だったのである。
(まんまアス〇ロンじゃねーか……!)
俺の初めての魔法は、某国民的RPGで使われるあの呪文と、全くと言っていいほど同じ効果だったのだ。
あの呪文、ゲーム中ではマジで使いどころが分からないだよな……。
とは言え、ここは決まった行動しかできないゲームではなく、自由に行動ができる世界だ。
それならば、ただ固くなるだけの魔法であっても、ある程度は使い道が思い浮かぶ。
例えば、撤退戦で殿を務める際なんかに【硬化】すれば立派な囮になるだろうし、今回のように囲まれた際に使えば、攻撃を弾いて隙を作ることができる。
ステータスも含めて防御に偏っている気がするが、案外良い魔法なのかもしれない。
もしかしたら、魔法もレベルアップしたり、使い方によっては成長して、新しく使い道も増えるかもしれない。
更に上位の魔法を覚えたり、とかな……。
その可能性に賭けて、どんどん使ってみるとしよう。
できるかどうかは分からないが、第一の目標としては任意で【硬化】を解除できるようになることだろう。
それさえできれば、一斉に攻撃をされても身を守ることができるし、隙を見せた敵へカウンターが可能である。
ともあれ、現状では解除を何度願ってみてもダメそうなので、このままゴブリン達の攻撃を受け続けるしかないのが悲しいところではあるが……。
硬化した身体で攻撃を無効化していると、俺の体を包んでいた白く淡い光が、次第に少なくなっていく。
(お、そろそろ効果切れかな……?)
【硬化】が解除された瞬間は、防御姿勢も取れず、ゴブリンに囲まれている現状では完全に無防備になる。
その為、魔法効果が切れた時点で、周りを囲む個体を振り払わなければならない。
そう考えていた時、俺の周りを漂っていた魔法の光が消え去り、体が自由になった。
「来たか……!」
その瞬間を逃さず、俺は右手に持ったメイスを大きく振るう。
不意を打たれた数匹のゴブリンが大きく吹き飛ばされ、そのまま青い光となって消えていった。
だが、残りの20匹強は、依然としてそのままだ。
『ギィ!ギィィイイ!!』
跳び掛かってきたゴブリンの棍棒を盾で防御し、攻撃に失敗したゴブリンの頭をメイスで打つ。
そして、そのまま勢いで先頭集団に向かって駆け抜け、数匹を蹴散らす。
「よし、来いっ……!」
殴られっぱなしだった前回とは大違いだ。
今回は、盾があり、魔法がある。それだけで、戦略が大きく変わった。
再び跳び掛かってきたゴブリンを、今度はメイスで打ち払って討伐する。
「……勝負だ!」
余裕の笑みを口元に浮かべ、盾をメイスで軽く叩いて挑発する。
挑発に乗ってこちらに攻撃を仕掛けてきたゴブリン達が全滅するまで、それ程の時間はかからなかった。
最初魔法を使った時はどうしたものかと思ったが、案外悪くない結果だったのではないだろうか……。
次回投稿21時頃です




