第22話 フルアーマー・社畜
ゴブリンの身体は小さく、更にはその素早さを活かして、上手く攻撃を回避してくる。
最初の数匹はすぐに討伐できたのだが、その後は防戦一方だった。
「うっ、やめっ……!いってぇ……!」
比較的人に近い姿からも分かるように、ゴブリンは魔物の中では知能が高い。
木の棒を荒く削った程度の物ではあるが、武器まで使用する程だ。
稀に、冒険者から武器を奪う個体がいると言う噂も聞いているが、今回の群れにはそういった個体は見られない。
粗雑な棍棒の一撃程度であれば、今の俺にとって、大したダメージにはならない。
大したダメージにはならないのだが……。
ゴブリン達が、素早さと数に任せ、絶え間ない波状攻撃を仕掛けてくるのだ。
避ける余裕すらなく、ボコボコと木の棒で殴られ続けた俺は思わず叫ぶ。
「ああっ!鬱陶しい……!」
そう、地味に痛いのである。
いくら地味な痛みであれ、それが積み重なれば、大きなダメージになってしまう。
「邪魔だっ……!」
そんな攻撃に耐えきれなくなった俺は、勢いに任せてメイスを振りぬいた。
周囲にいた数匹が勢いに負け、大きく吹き飛ばされる。
そして、他のゴブリンにも動揺が走り、全体に隙が生まれた。
「本番はここからだ……!我慢比べといこうぜ……!」
俺は、ジリジリと詰め寄るゴブリン達へ向かって、そう宣言するのであった。
◆◆◆
「はぁっ、はぁっ……!終わっ……た……!」
戦闘が始まってから、どれ程の時間が経過したのだろうか。
好機を逃さず攻撃を続けた俺は、どうにかゴブリン達を討伐することができた。
しかし、数の力はと言うのは偉大なもので、魔物の中では相当に弱いゴブリンですら、群れると脅威となる。
防御を捨て、我慢して攻撃を受け続けたこともあり、既に体力は限界に近い。
俺は、腰のベルトにストックしていたポーションを一気に呷る。
次第に痛みが引いていき、打撲痕や擦過傷も目に見えて回復していくのが分かった。
「ふぅ……。やれやれだな……」
結果的に依頼を達成出来たとは言え、どうにも不完全燃焼である。
ゴリ押しで攻略してしまったので、試合に勝って勝負に負けたという印象だ。
相手がゴブリンだったのでどうにかできたが、もう少し敵のレベルが上がれば、この戦法は通用しないだろう。
それに、今回は、何よりも防具の重要さを実感した。
どうにかメイスで攻撃を受け流したりしようとしたのだが、そんな技量がある筈も無く、ただ殴られるばかりだったのだ。
支給品のサポーターだけでは守りが薄く、当然の如く、殆どの攻撃を受けてしまう。
「買うか、防具……!」
そんな出来事をきっかけに、俺は防具の購入を決意する事となったのであった。
◆◆◆
クエストから帰還した俺は、依頼報酬を受け取り、メイスを購入した武具店を訪れていた。
1か月近く依頼を達成し続け、最近は野営で節約をしていたのである程度は貯蓄がある。
まともな防具は支給品のサポーターだけであったので、流石にもう少し性能の良い防具を購入するべきなのだろう。
「らっしゃい。何を探してるんだい?」
当ても無く店内を物色していると、筋肉の擬人化もとい武具店の店主に声を掛けられた。
相変わらず、並の冒険者よりも強そうな見た目をしている。
「盾と防具を買い替えようと思ってるんです。予算は2万エル前後ですね」
「その予算だと盾は普通のアイアンシールドになっちまうな……。だが、防具ならちょうどオススメのがあるぜ!」
盾に関しては、ある程度耐久があって軽いものなら何でもいい。
ぶっちゃけ、使いこなせるかも分からないので、お試しでの購入だからな。
「ちなみに、おすすめの防具っていうのは?」
「おう、これだ。新人だが中々腕のいい鍛冶師の作品で、一角兎のレザーアーマーだ。アイアンシールドと合わせて、2万5000エルでどうだ?」
店主はそう言いながら、店内に飾ってあった二つの装備を持ってくる。
鉄製の片手盾と、白い毛皮が特徴的なレザーアーマーだった。
2万5000エルでは、少し予算がオーバーしてしまうが、財布事情的には許容範囲である。
盾を片手に装備してみると、金属製の割には、軽く扱えそうだ。
アーマーの方も試着させてもらったが、同じく軽く、動きやすい素材で出来ていた。
「いい感じですね。これ、買います……!」
「毎度!またよろしく頼むぜ!」
凶悪な笑顔の店主にがっちりと握手された俺は、顔を引き攣らせたまま退店したのだった。
兎も角、これで無事、まともな防具を手に入れることができた。
盾は一般的に流通している物なので、品質はそれなりだと思うが、なんとなく、レザーアーマーの方は良い物を購入できた気がする。
とりあえずは、盾の練習も兼ねてまたクエストを受注したい。
いきなり素早い魔物を相手にするのはハードルが高いので、攻撃が単調的な魔物がいいだろう。
そうなると、猪や熊のような、獣系の魔物が良い気がする。
これまで相手をしてきた限りでは、獣型は力任せで、直線的な攻撃をしてくることが多い。
力任せな攻撃というだけであれば、大鬼や巨人なんかも思い浮かぶが、その2体に関しては、どのゲームでも往々にして戦闘力が高かった。
そうであれば、やはり獣系の魔物が、練習台にはベストだろう。
「でも、熊はなんか怖いな……」
色々と懲りているので、あまり無理はしたくない。
普通の熊であっても凶悪なのだから、魔物ともなるとどれだけの戦闘力を有しているのか。
考えるだけで恐ろしい。頭から食われてしまいそうである。
「となると、やっぱり猪型の魔物を探してみるか……」
そう思った俺は、早速ギルドへと向かい、クエストボードと睨めっこするのであった。
次回は明日の12時頃投稿予定です。
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