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社畜・イン・ファンタジー ~異世界ブラック冒険譚~  作者: 揚げたてアジフライ
第六章 変わる世界と変わらないもの

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第103話 強力な助っ人?

色々な都合があって半端な時間ですが投稿させて頂きます。


「―――はぁ!?ヒヨリを依頼クエストに連れていきたい!?」


 俺の提案に驚いたような声を上げたのはマークだった。

 俺達がいるのは、いつも通りギルドの酒場。

 久しく三人で冒険に出ていなかったこともあり、そろそろ依頼の一つでもこなそうと集まっていたのだ。


「いや、別にそんなに驚くことでもないだろ?前にもヒヨリを連れて行ったことはあったわけだし……」


 ヒヨリは、俺の使い魔である魔物の雛だ。

 獄王の刃との一件で入手したタマゴから生まれた、正体不明の魔物。

 使い魔であるヒヨリは、一緒に冒険することで契約者の得た経験値の一部を獲得し、成長していく。

 以前も一緒に依頼に出向いたことがあったのだが、あの時はまだ生まれて間もない頃だったので、一緒に戦闘することはできなかった。


 だが、今となってはヒヨリは俺の身長を超える程の大きさにまで成長した。

 そのパワーは、既に冒険者としてかなりの経験を積んだ俺が抑えきれない程。

 ならば、今の俺達と一緒に依頼へ向かっても問題無く戦えるのではないかと考えたのだ。


「いや、俺が心配してるのは気性面の方なんだが……」


「そっちは今のところ問題ないよ。時々散歩したり良いお肉をあげたりしてるから」


「それなら良いんじゃない?ヒヨリちゃんがいれば、スキルの効果もあって戦闘は楽になるだろうし」


 ヒヨリの持つスキル、【聖鳥の加護】には、味方の風属性と火属性を微軽減する効果がある。

 使い魔であるからなのか、自分以外にも効果を及ぼすと言う珍しいスキルなのだ。

 実際のところ、どれだけ相手の攻撃を軽減できているのか実感しにくいのだが、少なくとも居るだけでメリットであることには違いない。


 その上、詳細不明の魔法である【聖鳥の吐息ホーリーブレス】のこともある。

 どんな効果なのか分からないという不思議な魔法なのだが、これも一緒に冒険する中で成長できれば使えるようになるのかもしれない。


「……まぁ、クロエの言う通りか。それに、少しでも戦闘の役に立つなら、少数パーティの俺達にとっては大きなメリットだしな」


 そんなこんなで、俺達はヒヨリと共に依頼を受注することになった。

 これは、成長したヒヨリの実力を披露する場であると同時に、【旅人の隠れ家セーフハウス】として最初の依頼でもある。

 二つの意味で、集中して臨まなければ―――




 ◆◆◆




 俺達が受けた依頼クエストは、怒髪熊ラースベアの緊急討伐依頼。

 普段は山の高地に生息する珍しい魔物なのだが、今回は何故かアブダイル山脈の麓の森にまで姿を現しているらしい。

 俺達であれば、さほど苦戦しない魔物ではあるのだが、あの辺りはガンドル地方へと続く山道があり行商人も多く通行する。

 森には駆け出し冒険者が依頼のために訪れることも多く、そんな事情もあってか早急な討伐依頼が求められているのだ。


「―――それにしても、ヒヨリは未知な部分が多いよね」


 茂みを掻き分けながら、俺はふとそんなことを呟いた。

 獄王の刃の研究員であるビルスによって改造された魔物、大怪鳥ジズ。

 ヒヨリと同種族の魔物だと思うのだが、それが正式な種族名だったのかも分からない。

 ギルドに戻ってから調べても、そんな魔物のデータは見つからなかったのだ。


「もしかすると、大昔に絶滅した魔物とかなのかもな……」


「そうかもしれないわね。小さい頃、希少な素材をドロップする魔物が、冒険者によって狩り尽くされたって話を聞いたことがあるわ」


「なるほど、今はもう存在しない魔物か……」


 実際のところ、あり得ない話では無いのだろう。

 研究員と言う立場を考えると、ビルスは幹部であるシュタイナーの部下であった筈だ。

 既存の魔物の強化個体や、合成獣キマイラすらも容易く生み出す彼の高い技術力をもってすれば、既に絶滅した魔物を蘇らせることも可能なのかもしれない。


「そう言えば、少し前にシュタイナーが目を覚ましたって報告があったわよね?」


「もしヒヨリのことが気になるなら、アイツと面会ができないかギルドに確認してみるのも良いかもな」


 獄王の刃の幹部、狂乱のシュタイナー。

 研究本部での戦いで俺達に敗北した彼は、実に数か月もの間、意識を取り戻すことは無かった。

 そんなシュタイナーが、ギルドの回復術師による尽力もあり、ようやく目を覚ましたのだ。

 幹部として研究員を統括する立場の彼であれば、もしかするとヒヨリのことも何か知っているかもしれない。

 この依頼が終わったら、面会の申し入れをギルドにしてみるとしよう。


『グオオオオオオオォォォンッ……!!!』


 そんな時、俺達の会話を遮るように獣の咆哮が森の中へと響いた。

 そして、地響きにも似た重い足音は、次第にこちらへと近づいている。


「―――来るぞ、ヨシヒロ!怒髪熊だ!」


 誰よりも早く反応したのは、やはりマークだった。

 俺はその声の意図を察し、二人を庇うような形で前へと出る。


「……蛮族よ、我が盾を見よ!」


 そして、すかさず【挑発タウント】の詠唱を行う。

 わずか数瞬の後、赤黒い体毛の巨体がこちらへと突進してきた。


『グルルルルオオオオッ!』


「くっ、一撃が重い……ッ!」


 【挑発】の効果でこちらに釘付けになった怒髪熊が、丸太のような前腕を振り下ろす。

 どうにか盾で受け止めることはできたが、猛突進のスピードも相まって、俺は大きく後ろへと弾かれてしまった。


(まずい……!このままだと【硬化】を発動する隙が……!)


 大きく体勢を崩すことになった今、俺の身を守る手段は【硬化】しか無い。

 だが、無情にも、【挑発】の効果でこちらに向かってくる怒髪熊が止まることは無い。

 このままでは、まともに防御することも出来ずに攻撃を喰らってしまう。

 いくら防御に特化した俺であっても、このレベルの魔物の攻撃をまともに受けてしまっては、軽傷では済まないだろう。

 そして、怒髪熊の鋭い爪が、俺の眼前まで迫ったその時だった―――


『―――ピイィィィィィィイイイイイィイッ……!』


 瞬間、耳をつんざくような甲高い鳴き声が辺りへ響き渡る。

 そして、怒髪熊の巨体が、俺の眼前から・・・・・・消え去った・・・・・


「ヒヨリ……!?」


 俺の窮地を救ったのは、まさかと言うべきなのか、ヒヨリだったのだ。

 怒髪熊が腕を振り上げた瞬間、彼女はこちらに向かって駆けだしていた。

 そして、そのままの勢いで怒髪熊の巨体を目掛け、全速力を乗せた跳び蹴りを浴びせる。

 怒髪熊は、ヒヨリの飛び蹴りによって数メドル先の茂みまで吹き飛ばされたのだ。


「―――参の型、三日月ッ!」


 なおもこちらへと敵意を浮かべる怒髪熊。

だが、その注意を逸らすためか、マークによる三連撃が放たれる。


『グルルルッ……!?』


 いつの間にか、俺の【挑発】の効果は切れていたようだ。

 マークの斬撃を受けた怒髪熊が、今度は彼へと狙いを定める。


「ヨシヒロ、今のうちに体勢を立て直せ!俺じゃこいつの攻撃を受けきれない……!」


 怒髪熊の攻撃は、俺ですら完全には受けきれない程に強力なものだ。

 マークは持ち前の素早さと技量で、どうにか相手の攻撃を躱したり受け流したりしているが、その状態も長く続けることはできないだろう。


(どうする……!?また【挑発】を使っても、同じことの繰り返しになってしまう……)


 仮に【挑発】でこちらへ注意を向けたとしても、あの重い攻撃を受けきれなければ、またピンチに陥ってしまう。

 そうなってしまえば、必然的に他の二人が俺のカバーに入らなければいけない。

 どうあっても、こちらが攻勢に移ることができなくなってしまうのだ。


『グルルルオッ……!?』


 葛藤の最中、俺の視界の先へ向けて火球が放たれた。

 その炎は真っ直ぐに怒髪熊へ進むと、赤黒い毛並みを焼き焦がす。

 

(これは、クロエの【火球ファイアボール】か……!?)


 彼女の魔法であれば、確かに怒髪熊の気を逸らすことはできる。

 だが、もしクロエがあの重撃をまともに喰らってしまえば、間違いなくタダでは済まない。

 こうなってしまっては、やはり俺が【挑発】を使うしかないのだろうか。


「―――良いぞ、ヒヨリ!そのままヨシヒロと二人で注意を引きつけてくれ!」


 マークの言葉に対する、一瞬の困惑。

 だが、その言葉の意味はすぐに理解できた。

 先程の火球は、クロエの魔法では無かったのだ。

 俺は、改めて怒髪熊へと向き直る。


「ヒヨリ!俺に合わせられるか……!?」


『ピピピィッ!』


 俺が声をかけると、ヒヨリが任せろとばかりに鳴き声で応えた。

 そして、俺達と怒髪熊との戦いの第二ラウンドが幕を上げる。




 ◆◆◆




 そこから先の展開は、想像以上に呆気ないものだった。

 敵の注意を引く役割が、俺だけで無くなったのだ。

 そうなってしまえば、マークのカバーを考えず、攻撃にのみ集中できる。

 火球によるヘイト管理と素早い動きで相手を翻弄するヒヨリは、俺とはまた違った形で、パーティにとっての壁役タンクの役割を果たしていた。


『―――グ、グルルルッ……オアッ……!』


 マークの鋭い斬撃に加え、上級魔導士アークウィザードであるクロエによる魔法の波状攻撃は、強力な魔物である怒髪熊ラースベアの体力すらもあっさりと削り切る。

 こうして、怒髪熊は力無い断末魔を上げて地に倒れ伏したのであった。


「それにしても、ヒヨリの活躍は想像以上だったね……」


「ああ、おかげで俺も攻撃だけに集中できた。あのままの状態が続けば、どうしてもジリ貧だったからな」


「素早く動けて、火球も使えて、敵の注意を引きつけながら戦うなんて、まるで私達三人を合わせたみたいな戦い方だったわね!」


 青白い光となって消滅していく怒髪熊を前に、俺達はそんなことを話していた。

 当の本人は、マイペースに茂みの中をガサガサと首を突っ込んでいる。

 

 ある程度戦えるだろうとは思っていたが、流石に想像以上の出来だ。

 マーク程では無いにしても、並の冒険者を遥かに凌ぐスピード。

 更には、そのスピードによって上乗せされたパワーは、怒髪熊の巨体すら吹き飛ばす。

 その上、今や彼女は単に火を吹くだけでなく、魔法のように火球を放つことまで出来る。


「クロエくらいなら乗せて走れるだろうし、もしものことがあれば移動面でも活躍してくれるかもな……」


「うーん、魔力切れで倒れたら頼んでみようかしら……?」


 苦戦する部分もあったが、ヒヨリのおかげもあってあっさりと依頼は達成された。

 もはや、ヒヨリの力は中級冒険者並と言っても過言ではない。

 俺達にとって、頼りになる仲間が増えたことに違いないだろう。


(それにしても、どこまで大きくなるんだろうな……)


 当初は少し大きなヒヨコ程の大きさだったヒヨリは、今や俺の身長を超える程の大きさに成長してしまった。それも、僅か数か月という驚異的な速さで。

 獄王の刃によって改造されていたとは言え、ヒヨリと同族である大怪鳥ジズは、身の丈15メドルはあろうかという巨大な魔物だった。

 まさかあの大きさにはならないと思いたいが、ある程度覚悟はしておくべきだろう。


 あれ程に大きくなってしまえば、もし何かあった時に抑えることは不可能である。

 考えたくも無いことだが、せめて彼女との信頼関係は築いておくべきだろう。

 言葉が届くのであれば、ジズのように魔封じの鎖で縛りつける必要もない筈だ。


『……ピッ、ピッ、ピッ!』


 今は火球しか使っていないが、彼女は未知の魔法も覚えている。

 その上、大怪鳥ジズは風を操る能力まで使っていた。

 そうであれば、ヒヨリの潜在能力は、まだまだ計り知れないものがあるだろう。


 クロエから渡された燻製肉をついばむヒヨリを見ながら、俺はそんなことを考えるのであった―――


※作中用語について

過去話で説明しているのですが、メドル=メートルです。

また、『魔封じの鎖』は相手の魔力を完全に封じることができる魔道具です。

使い魔に関する詳しい説明は、第48話をご覧ください。


捕捉ですが、ヒヨリの攻撃自体は、怒髪熊のような強力な魔物にとっては、大した威力では無いです。

ただし、かなりの速度で走れるので、その勢いも相まって蹴りを受けた際の衝撃は大きいです。


次話ですが、恐らく早くても7/8(月)の昼とかになると思います。

詳細が決まり次第、こちらに追記しますのでよろしくお願いします。

あくまでも予定なので、追記せずに早く投稿する場合もありますがご了承ください。


ブックマークや評価を頂けると励みになりますので、よろしければそちらもお願いします。


※7/11 追記

ある程度は用事が片付いたので、本日まで書き溜め期間とさせて頂きます。

それ以降は7/12〜7/14までの三日間投稿、7/13(土)は2話分の投稿予定です。

明日の投稿時間は、12時頃を予定しています。


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