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社畜・イン・ファンタジー ~異世界ブラック冒険譚~  作者: 揚げたてアジフライ
第五章 マーク・マルティネス

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第100話 騎士として

時間が少し早いですが投稿します。

ごめんなさい、短めです。これにて、この章は完結となります。



 四日間にわたって行われた継承の儀の終幕から、三日が経過していた。

 ようやくと言うべきか、現当主であるロムルスから、ラティウム闘技場へと集まるよう声明が発表されたのだ。

 ここ数日間、ロムルスを含む騎士団の上層部では、継承の儀の結果について話し合うための会議が実施されていた。ようやく、その結果が出たと言うところだろう。


「―――それにしても、どうなるのかしらね……」


 俺の隣でそう呟いたのはクロエだ。

 現在位置は、これまでと変わらず騎士団の関係者席。

 マークを始めとする5人の出場者は、揃って闘技台の上へと集められている。


「まぁ、順当にいけば勝利数が同じ三人で再戦ってところだろうけど……」


 継承の儀の結果は、ユリウス、ネロ、マークが同率で3勝1敗。

 ユリウスはネロに、ネロはマークに、マークはユリウスに勝利しているという、まさに三すくみのような状態だ。

 これまではこのような事態が起こらなかったとは言え、普通に考えるのであれば3人でもう一度、総当たり戦を行えば良い。

 確かに、再び試合を行えば、決着はつくのかもしれない。だが、全力を尽くした結果がこの勝利数なのだ。確かに、あの瞬間、あの試合の上では、それぞれが対戦相手を上回っていたことに違いは無い。

 果たして、その結果を再試合と言う形で覆してしまっても良いのだろうか。


「―――これより、現当主である私から、騎士団による協議の結果を発表する!」


 ロムルスによる厳粛な声に、会場が静寂へと包まれる。

 後日、再試合が行われるのか。

 はたまた、騎士としての武勲や、市民からの好感度で継承者を選出するのか。

 様々な思いを馳せながら、皆が一様に息を飲む。


「……騎士団上層部による協議の結果、今回の継承の儀では次期当主かつ次期騎士団長を選出しないものとする!よって、再試合も行われない!」


 恐らく、誰にとっても予想外のその一言。

 ロムルスの発表を見守っていた市民が、騎士団員が、そして、闘技台の上に並ぶ継承者の5人までもが、驚きの声を上げた。

 末端の騎士団員どころか、どの継承者にもこの結果は伝えられていなかったらしい。


「静粛に!皆が驚くのも無理はないが、引き続き、私の話を聞いてもらおう―――」


 そして、ロムルスは言葉を続けた。

 まず、継承の儀で決着がつかなかったことは、皆が知っての通り前代未聞である。

 当主であるロムルス、ユリウスとネロを除く各部隊の隊長、騎士団の意見役、市民代表として参加した商会長を交えた協議は白熱し、3日間にも及んだと言う。


 無論、ユリウス、ネロ、マークの三名だけで再度決闘を行うことも案としてはあった。

 だが、あの決闘の中で、三名の全員に及ばない点があったのが事実。

 それぞれに私を超える才があることも分かっているが、総合力を見た際、現時点では当主や騎士団長を任せることはできないと言うのが我々の判断だ。

 そのため、マルティネス家の当主と聖騎士団長は、このロムルス・マルティネスが継続する。


『継承者が決まらなかったことも前代未聞ではあるが……』


『確かに、結果だけ見れば三すくみだもんなぁ……』


『まぁ、お偉いさん方が決めたことなら、末端の俺達に文句はねえな』


『ああ、ロムルス様を含めた上層部が何日も協議したんだ。その結果に間違いは無いさ』


 想定外の結果にざわめく会場内。だが、決して非難の声は上がらなかった。

 市民や団員からの信頼も厚いロムルスを筆頭にした面々が出した結論だ。文句の一つも言える筈が無い。


(少なくとも、マークの実力に関しては誰もが認めるところだろうな……)


 圧倒的な実力を見せられたかと言われると、そうではないのかもしれない。

 だが、あの戦いの数々を見て、マークのことを実力で劣ると判断する人はいない筈だ。

 彼の当初の目的であった、実力を示すと言う点に関しては、十分に達成したと言えよう。

 その実力が認められたのはマークだけでなく、日陰者のような扱いを受けていた第四部隊に関しても同じだ。闘技場の修復と言う、目に見える形での活躍があったと言うのも大きいのだろう。


 とは言え、まだ多くの団員達が、古い考えに囚われているのも事実だ。

 古き良き騎士としての戦いを重視する者の意見は未だに根強い。

 そればかりは、当主のロムルスを筆頭に、これからの騎士団を背負っていく立場であるユリウスやネロの踏ん張りどころになるのだろう。


 こうして、激闘の継承の儀は、ようやく幕を閉じるのであった―――




◆◆◆




 ロムルスによる衝撃の発表から、またも数日が経過していた。

 俺達は、マルティネス邸へと招集をかけられている。

 なんと、マークが聖騎士としての叙勲を受けると言うのだ。

 最終的にその結論を出したのはロムルスだが、なんでもユリウスやネロからの強い後押しがあったらしい。


「―――マーク・マルティネスよ、前へ……」


 そう声を上げたのは、領主であるロムルスだ。

 マークも普段の軽装とは違い、今日は騎士団と揃いの白銀の鎧を身に付けている。

 彼は静かに前へと歩みを進めると、そのままロムルスの前へとひざまずいた。


「……領主、ロムルス・マルティネスの名において、貴殿に騎士としての爵位を与える」


 ロムルスが、その正面に跪いたマークの両肩を剣で軽く叩く。


「謹んで、拝命いたします」


 最後に、ロムルスよりマークへ飾り剣が手渡された。

 思ったよりもあっさりしているが、どうやらこれで叙勲の儀式は終了らしい。


 そして、騎士団員の集まるマルティネス邸は、盛大な拍手に包まれた。

 相変わらず爽やかな笑顔で拍手を送るユリウスの隣には、やや複雑そうな表情を浮かべるネロの姿があった。幾ばくかの葛藤の後、彼も静かにそれにならう。


「これにて、マーク・マルティネスの叙勲式を終了とする!この後は、大広間にて会食の準備もしてあるので、是非とも参加して欲しい―――」


 そんな言葉を最後に、マークの叙勲式は幕を閉じた。

 舞台は、マルティネス家の大広間へと移る。そう、俺達が最初にロムルスと対面したあの場所だ。

 厳かな雰囲気はそのままに、会場には多くの料理が並んでいる。


「―――はぁ、堅苦しくて仕方ねぇぜ……」


 パーティを抜け出してきたマークは、何とも言えない表情でそう愚痴をこぼす。

 先程までは多くの騎士団員に囲まれるような形だったのだ。それも仕方あるまい。

 かく言う自分も、この雰囲気にあてられて早々に離脱してきた身だ。

 会場の喧騒を後目に、俺はバルコニーのような場所で夜風に当たっていた。


「一応、聞いておきたいんだけどさ……」


 手すりにもたれかかるようにして、グラスを傾けるマーク。

 そんな彼に、俺はとある疑問を投げかけた。


「……マークは、本当に俺と一緒に冒険者を続けるの?」


 マークがこのままラティウムに残るのであれば、騎士団の中で相応のポジションを用意できる。あの叙勲式の後に、ロムルスから直々に話があったのだ。

 なんでも、第四部隊の現隊長が特にマークを評価しているらしく、騎士団に加入するのであれば、次の部隊長の座を譲っても良いとまで言っているらしい。


「なんだよ、俺が着いていったら不満だってのか……?」


 冗談めかしてそう言ったマークの表情は、暗がりのせいであまり読み取れない。


「いや、そう言うわけじゃないよ。ただ……」


 騎士と冒険者、どちらも命懸けの職業であることに変わりはない。

 だが、俺達と一緒に変わり映えもしない冒険者稼業を続けることと、ラティウム聖騎士団で聖騎士として務めること。どちらがマークのためになるのかは明白だ。

 俺にとってマークは、この世界に来た当初からの相棒だ。何度も死線を潜り抜けてきた。

 そんな大切な存在だからこそ、彼の幸せを願うのが相棒として正しいことなのでは無いだろうかと思ってしまうのだ。


「騎士団に残ることが俺の幸せだと思ってるなら、それは大違いだ」


「いや、それでも……」


「そもそも、俺は騎士の名誉だの武勲だのに、これっぽっちも興味はねえ……」


 マークは大きく溜息をつくと、グラスに少し残ったワインをあおる。

 そして、俺に改めて向き直った。


「ヨシヒロ・サトウ。今後、俺の剣はお前に捧げると約束しよう―――」


 跪くどころか、授与された宝剣を俺に突き付けて行った、掟破りの宣誓。

 だが、そんなところも彼らしいと言えるのかもしれない。


「―――ははっ、これからもよろしく頼むよ、相棒!」


「そりゃこっちのセリフだよ、相棒……」


 マークは、正式に騎士としての叙勲を受けた。

 だが、その剣を捧げる相手は騎士団ではなく、俺に対して。

 同時に、【盗賊シーフ】から【聖騎士ホーリーナイト】へと転職した彼は、今後も俺にとって頼もしい相棒であってくれることだろう。


 彼が俺にとっての剣になるなら、俺は彼にとっての盾にでもなってやろうではないか。

 そんな想いを胸に、ラティウムの夜は更けていく……。

 

 ―――そしていつか、マルティネス領には大陸に名を轟かせる高名な三人の騎士が誕生する。

 知に富んだ長兄を団長に据え、古今無双の次兄が騎士団を率い、三男が参謀を務めるというラティウム聖騎士団。数々の戦いを平定してきた彼らは、戦場にて常勝無敗の活躍を見せたと言う。

 そんな伝説が語られるのは、そう遠くない未来のお話……。



短くまとまってしまいましたが、本編が100話という部分まで含めてキリの良い終わり方だと思います。


今後ですが、間章とキャラ紹介+補足のような回をアップして新章という流れになります。

次章も短めになるかもしれませんが、ラティウムから帰還した主人公のその後の冒険を中心としたややゆったり目の章になると思います。

色々と新展開であったり、伏線?の回収だったりもしますのでお楽しみ頂けると幸いです。


また、ブックマークや評価を頂けると執筆の励みになりますので、よろしければそちらもお願いします。


次話(間章)に関しては、大筋の内容は書きあがっているので、今日の夜中に書き終われば明日の昼頃にでも投稿させて頂こうかと思います。難しければ7/1(月)になりますのでご了承下さい。



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