第92話 兄弟
申し訳ありません。続きが遅くなってしまいました。
次話までは決闘前の前日譚として話を進める予定です。
その後は勝敗と結末以外が決まってないので、仕事の兼ね合いもあり、少し投稿が遅れるかもしれないです。
「―――何か、親父と話してたのか?」
先に大食堂を後にしていたマークは、屋敷から出てきた俺達へそう声を掛けた。
「いや、大したことじゃないよ。パーティメンバーとして、自己紹介させてもらったくらいだ」
「そうか。まぁ、なんでも良いんだが……」
マークは、更に言葉を続ける。
「休む暇も無くて申し訳ないが、これから候補者たちの偵察をしたい。久しく会ってないし、現状、あいつらがどれくらいの実力なのかも分からないからな……」
「ああ、そうだね。その方が、マークも作戦を立てやすいだろうし」
「でも、他の候補者達はどこにいるのかしら?」
「ああ、それなら大体は把握してる。兄貴たち二人は聖騎士団の詰所、他の二人は分家にいる筈だ」
「詰所ならこの敷地内にあるし、そっちから回る方が良さそうかな?」
「ああ、そうしよう」
俺達は案内を受け、聖騎士団の詰所へと向かった。
マークの話によると、マークの兄であるユリウスとネロは聖騎士団員なのだと言う。
その為、何か事件でも起こっていなければ、日中は詰所か、それに併設されている訓練所にいるのだとか。
「―――マークか……?」
「ああ、久しぶりだな、兄貴」
詰め所へと辿り着いた俺達を迎えたのは、白い騎士鎧に身を包み、銀色の髪が眩しい青年だった。
◆◆◆
「改めまして、ユリウス・マルティネスだ。マークの兄で、今は聖騎士団の第一部隊で隊長を務めている」
詰め所を訪れた俺達を迎えたのは、マークの兄であるユリウスだった。
艶やかな銀髪を首の辺りで束ねた彼は、爽やかに微笑んでいる。
「ええと、ヨシヒロ・サトウです。マークとは同じパーティで冒険者をやってます」
「同じく、パーティメンバーのクロエ・ベルヴィルです。よろしくお願いします」
「そうか……。マークは冒険者になっていたんだな……」
そう言ったユリウスの表情は、どこか寂し気に見えた。
ここまでのやり取りや雰囲気を見るに、悪い人物ではなさそうだが……。
「……心配していたんだ。あんな事があって、マークがいなくなったのも、その後すぐだったから」
「あの事が関係ないと言えば嘘になるが、あれが無くても、遅かれ早かれ、俺は家を出てただろうよ……」
「マーク、あの事って言うのは……?」
「それは、私の方から説明させてもらおう。マーク、構わないかな?」
「ああ、好きにしてくれ……」
その言葉を皮切りに、ユリウスは自身らの過去を話し始める。
遡ること5年前、ちょうどマークがマルティネス家を出奔した頃のことだ。
マークとユリウスは、騎士としての鍛錬の為、模擬試合をしていた。
ユリウス優勢と思われた試合結果は、その評価を覆してマークの勝利に終わる。
だが、その勝ち方に異を唱えたのが、マークの祖父であり、聖騎士団の指南役も務めるマルス・マルティネスだった。
策を練り、ユリウスの不意を突くような形で勝利をしたマークであったが、正々堂々を重んじる騎士道精神からはかけ離れたものであると非難を浴びせたのだ。
無論、マークも勝ちは勝ちだと反論した。しかし、当時のマルスを始めとする当時の騎士団は違った。騎士団の指南役であるマルスの権威が強かったことも影響してか、誰の評価を聞いても、マークの勝利を認める声はなかったのだ。それこそ、決闘の当事者であったユリウスが、敗北を認める事すらできない程に。
「―――とまぁ、こんなところだ。当時は私も若く、まだ騎士団でも発言権がなかった。今では騎士団の中でもある程度の地位は得られた。無論、継承の儀で手を抜くつもりはないが、仮に誰が勝っても祝福するつもりだよ」
本番は正々堂々戦おう。そう言い残すと、ユリウスは爽やかに去って行くのだった。
「なんというか、良いお兄さんだね」
「ええ、マークとは正反対な感じ」
「……まぁ、それは認めるよ。ユリウスの兄貴は、親父や爺さんが求める理想の聖騎士道を体現したような男だからな。昔っから、正々堂々とした決闘では、一度も勝ったことがなかったよ」
「へぇ、実力も折り紙付きってワケね……」
ユリウス・マルティネス。
鳴り物入りでラティウム聖騎士団へと加入した彼は、わずか数年足らずで部隊長にまで上り詰めた。
武勲のみならず市民や騎士団員からの信頼も厚い彼こそが次期領主であり、聖騎士団長であると賞賛する声も多い。
「ええと、次に会うことになるのは、マークのもう一人のお兄さんなんだっけ?」
広い詰所を歩きながら、俺は先導するマークにそう声を掛けた。
「ああ、そうだな。昔から俺とはとことん相性が悪いんだが……」
「噂をすればって感じかしら。マークのお兄さんって、あの人じゃない?」
そう言ってクロエが指差したのは、どうやら騎士団の訓練場のようだ。
その中心、打ち稽古をするステージのような場所が、何やら物々しい雰囲気を醸し出している。
一人の騎士が、複数の騎士を相手取って戦っているのだ。百人組手……とまではいかないが、中心にいる大柄な騎士は、ゆうに十人を超える騎士達を相手に全く引け目を取っていない。それどころか、次第に周囲の騎士は一人、また一人と打ち倒されていき、間もなく稽古場に立つのは、中心にいた騎士のみとなってしまった。
「――ったく、張り合いがねぇなぁ!これじゃあ、ウォーミングアップにもなりやしねえだろうが!」
「っ……!す、すみません、ネロ隊長……!」
やや乱暴な口調で言い放った騎士が兜を外すと、銀の短髪が輝く。
精悍な顔立ちに、鎧の上からでも分かる程の大柄な身体が特徴的だ。
「……ふん。コソコソと誰が見てんのかと思ったら、帰ってきてたんだな。落ちこぼれがよぉ!」
「よう。相変わらず、力ばかりで技に冴えがないな。5年前から全く変わってねぇ……」
こちらに気づくなり、侮蔑の言葉を投げたネロに対して、マークもここぞとばかりに言葉を返す。
「……どんな卑怯な手段を使ったのか知らねえが、ユリウスの兄貴との決闘に勝ったこと、俺は認めてねえからな」
一触即発の雰囲気もいなや、それだけ言い残すと、ネロはあっさりと引き下がっていった。
ただ乱暴なだけ、力自慢なだけという訳ではなく、やはり上に立つ者としての冷静さも兼ね備えているのかもしれない。
「……ふん。言われなくとも、今度こそは実力で勝負をつけてやるさ」
そう言ったマークの瞳には強い光が宿っていた。
マークから聞いた話によると、ネロ・マルティネスは、兄弟の中でも随一の武闘派だそうだ。更には、ユリウスと同じく聖騎士団の部隊長を務めているのだという。
なんでも、部隊の華とされるのがユリウスいる第一部隊だとすれば、作戦実行の主力部隊となるのがネロの率いる第三部隊なのだそうだ。
(にしても、今のところ二人とも強敵になりそうだな……)
勿論、マークとて今やグスタの街でも折り紙付きの冒険者だ。実力は俺も把握している。
だが、ユリウスやネロとて伊達に百人規模の騎士達を束ねる部隊長やっている訳ではない。マークが冒険者として腕を磨いてきたのと同じく、二人も騎士としての修練を積んできている筈だ。
それに、まだ出会っていない候補者の二人も、恐らく実力者揃いだろう。
俺には応援することしかできないが、せめて本番の前には奮発して何か奢ってやろう……。
そんなことを想いながら、俺達は残りの候補者の偵察へ向け、歩を進めるのであった―――
早ければ明日中(5/11)、土曜日が仕事なのでできたら日曜日に投稿しようと思います。
週末は待っていたゲームの発売日もあり、もしかするとそちらをやるかもしれないのですが、極力投稿したいと思います。
実は誕生日&人物紹介等も含めて100本目の投稿なので、もしよければブックマークや評価を頂けると励みになります。よろしくお願いします
2023.11.27 追記
PCの故障及びOfficeアプリのライセンス切れのため、普段Wordで書いていた執筆が永遠に滞っております。
PC自体はなんとか動く+来年度の開始頃までは時間に余裕ができるため、年末辺りを目安に、できるだけ更新したいと思います。
もし更新を待っていてくださる方がいらっしゃったら申し訳ありません。今後ともよろしくお願いします。
※2024.6.10 追記
更新するする詐欺になっていて申し訳無いのですが、今週中を目安に、マイペースにはなりますが更新を再開したいと思います。最低でもこの章が完結するまでは書き上げたいと思っています。
※2024.6.14 追記
書き終わりましたので、本日夜に投稿予定です。
それ以降も章完結までプロットが完成しているのでコンスタントに上げていきたいとは思いますが、次話以降はいよいよ継承戦に入るので少しペースが落ちるかもしれません。




