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プロローグ


『人は見た目じゃない、中身の方が大事だ』


 そんなどこかのマンガやドラマなんかで、似たようなのを一度は聞いたようなことのある台詞。これを実際に吐くような奴がいたとしたら、とりあえず俺の前に出てこい。一発殴ってから論破するか、もしくは論破した上で殴ってやるから。


 言い切ってやる。ありえない、そんなことは断じてある筈はない。

 

 人間はどいつもこいつも顔で人を判断する。顔で人を値踏みしてきやがる。


 考えてもみろ。モデルや女優、アイドルなど人より優れた容姿が評価される職業は多いというのに、人より劣った容姿、所謂ブスを評価する職業なんて一つも無いじゃねえか。

 「」……まあ一部の方々には需要があるのかもしれないがそれは置いといて、一般的に考えてだ。


 昔は職業柄、顔なんて関係の無かった筈の声優なんかだって今じゃ露出も増えて、見た目が重視される時代になってきた。


 『こちらにいる超絶ブスと超絶美人、今すぐお選びください。どちらか選択した方を彼女にする権利を得ます』なんて言われたら、中身なんか関係無い、誰だって超絶美人を選ぶ筈だ。


 彼女にしたいと望むのは美人、ドラマのヒロインはブスをスポットに置かない限り美人、クラスのトップグループにいる女子は大抵上物。


 中身なんか二の次、見た目がダメだった時の補完ステータスでしかない。

 とはいえ、それは仕方のないことなのかもしれない。人は美を求める。いつだって醜いものを嫌って美しいものを好むもの。本能なんだからどうしようもない。

 

 ――ただ、だ。


 かといって、よく言われる人は見た目が九割、あるいは十割というのもあっているとは俺は思わない。


 あくまで見た目は優先順位を上げる先攻性の武器だ。


 初めて会った会話もしたことない異性への好感度は何で決まるか。清潔感、服装、それらもあるけど何よりやはり顔だろう。


 しかしある程度の関係を持つ、あるいは一緒にいる期間が長くなってくるとそこからは、中身、人柄も重要になってくる。


 最初の出会った時のゼロの状態を切り抜けた以上、顔なんてそんな関係無い。相手は中身も確実に考慮した上で付き合っている。


 まあ、だからって結局ゼロをプラスにしなくてはいけない以上、これ以上ない武器となる優れた容姿を持つ人間が有利なことに変わりはない。最初からプラスの人間が有利なのは当たり前。

 育成ゲームだって、初期能力が高い方が明らかに強いのと同じだ。


 しかもさっきは付き合いが長ければ最早見た目なんか関係ないとは言ったものの、もし同じくらいの付き合いのイケメンとブサイク二人がいたなら、最終的にはよっぽどじゃない限りはイケメンが選ばれるだろう。


 結論、結局人は見た目が良い方が得をする。


 可愛いのが正義だというのなら、醜いことは悪なのだろう。可愛い子には愛を、ブサイクには裁きの鉄槌を。


 一切万事、顔の良いものが得をし、顔の悪いものが損をする。白黒はっきりしているこの世界は、恐ろしい程にどこまでも素直で純情で残酷なのだ。


 これは古今東西変わらない、どころか一生揺るぐことのないであろう事実だ。


 そしてそんな世相を色濃く反映しているのが俺の通っている高校、坂堀さかぼり高校。


 顔によって人間関係が構築される。


 それだけなら一般的な高校なんかでもある所もあるかもしれないが、坂堀高校が特に凄いところは、他の高校なんかではある容姿が微妙でも明るい性格でクラスの人気者なんてことは全くもってありえないと言っていいことだ。


 この高校では顔面偏差値と呼ばれる、人の容姿を50を基準、つまり普通の面、フツメンとして数値化したものの大きさによってそのままクラス内ヒエラルキーが確定するという暗黙のルールが存在している。


 中身なんて一切無視、完全見た目重視。

 数値が高い者は低い者など、こちらから賄賂を贈るか、罵られながらも近寄るか、あるいは暇を持て余した彼らが暇つぶしにいじりにくる、パシらせるなどの例外を除いては、まさに道端の石ころの如く相手にしない。というより、視界に入れることすら嫌がっているように見える。


 まあそれは勿論全員が全員という訳ではないけど、それを許容している空気の所為もあって、ほとんどの奴は。

 そしてそんな高校に身を置く俺の顔面偏差値は、なんと


 ……基準値より下の40評価。


 顔面偏差値上位者の陰でひっそりと過ごす俺は、人間の本能を理解した上でそれでも叫ぶ。


 ふざけんな、人を見た目だけで判断するな! 俺は本当はすげー奴なんだよ、と。

 

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