スターチス
踏切の前。
電車が通り過ぎていく。
君は今もここで、なぜ死んだのかもわからず彷徨っているのだろうか。
近くの電柱には、もう何も置かれていなかった。
君が死んでから、たくさんの人が来ては泣いて行った。
そして、電柱の下の所に花やぬいぐるみ 手紙などが置かれていた。
でも、それはもうどこにもない。
あぁ、こうやって君は忘れ去られていくのか…
あの日のことは、僕にはよくわからない。
周りの人はみな、事故だと言っていた。
本当に事故で死んだのだろうか。
それとも自殺だったのだろうか。
今の僕には、知る術もない。
ただ、君が死ぬ時 周りには誰もいなかったそうだ。
死体で見つかった時にはもう、電車で轢かれていた後だった。
遺書はどこにもなかった。
でも、僕は自殺なのではないかとうっすら思っている。
僕は、君が好きだと言っていた花…スターチスの花束を電柱の下に置いた。
そして、静かに手を合わせた。
君が最後に僕に言った言葉…
「スターチスの花言葉はね。途絶えぬ記憶って言うんだって」
そして、君が死んでから気づいた。
あの言葉の本当の意味をー
君はきっと「忘れないで」と言いたかったのだと思う。