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花婿争奪戦

「それでは始まりました。第一回花婿争奪、魔法・弓術大会!!」

 うおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!


「なんだこれ! しかも第一回って、前例ないじゃん!」

 突如開催された、俺の正妻の座をめぐる戦い。

マールが宣戦布告して始まったのだが、第一回とか言っている。

 何故、前例ないの大会が、普通に始まろうとしているか。

「純平様。それはですね、過去に花嫁をめぐっての争いというのは、実際に数回有ったのです。

それでその時、もしかしたら、花婿争奪戦も起こるのではないかという事で、ルールだけは決められていたのです。その為、滞りなく本大会を始める事が出来ましたの」

 できましたの。じゃねーよ。しかもこれ、商品俺なんだよね?


「では、ルールの説明をさせて頂きます……」

 エルフの民は全て、魔法使いか、弓兵だ。

それは、王族だろうと関係ない。むしろ強い者こそ王として尊敬される。


 ルールは簡単だった、得意な魔法、もしくは弓の一撃の威力が、一番大きかった者の勝ち。

因みに、普通の矢の一撃では、当然、強力な攻撃魔法の威力を超える事は出来ない。

その為、自分と弓矢に支援魔法をかけてから、矢を放って良いことになっている。バフかけまくりOKという訳だ。

 いやいや。この大会危険すぎるだろう。

 特にエリ、こいつ絶対手加減する気がなさそうだ。

このままでは、エルフの里が本当に消滅してしまう。

 リアナもだ、炎系のブレス攻撃なんかやったら、折角の森が、焼け野原になってしまう可能性がある。

「ちょっと、ちょっと待てマール。少しだけ話が有る」

「どうされましたの? 純平様。まさか、二人に情けをかけろと?」

 こいつ、自分が勝気でいやがる。

「違う違う。神楽坂だ、あいつはヤバい。本気でそんなことさせたら、この森が消える事になるぞ」

「またまた、純平様は面白い事を仰いますね。もしかして、そんなに私を正妻にするのがお嫌なのですか?」

 悲しそうな顔をするマール。少し目に涙が溜まっている。

「違う、違うぞマール。本当にそういう問題じゃないんだ。

俺は、折角守られた平和なエルフの里が、消滅するのを恐れているんだ。

信じてくれ。マールと結婚が嫌とか、そういう事じゃないんだ」

 まだちょっと信じられない。という顔をするマール。

「あの、変わった御召し物の方に、私が負けるとは思えないのですが」

 どんだけ自信過剰なんだよこの子は。

「純平。良いじゃない。まだ本気は出したことないから、良いって言われてるんだから、試させてもらいましょう」

 エリは、本気を出せる事が嬉しいのか、この幼女エルフに、格の違いを見せたいのか知らんが、恐ろしいほどやる気だ。羽がバサバサしている。

 神楽坂さん、本当にこの話には、割って入ってこないでください。

貴方、閻魔様の依頼達成できなくなりますよ!


「ウチもやるっすよ! 旦那様に見せるのは恥ずかしいっすけど。獣人族の誇りをかけた一撃を、ぶちかましてやるっす」

 ああ、ダメこいつら。早く何とかしないと!


「マールは俺の事を、夫にしたいんだろ? じゃあ、夫の話は信じるべきじゃないのか?」

 マールはハッとした顔をした。良かった、上手く乗せられたみたいだ。

 ただ、神楽坂さんのが、人を殺せそうな視線を、向けてきていますがね!

「では、場所を移動しましょう。森の西には、大きな砂漠が広がっています。そこならどうでしょうか?」

 おお!それはいい。それなら被害も少なそうだ。

「マールありがとう。俺は嬉しいよ」

「私の王子様がそんなに仰るのであれば、妻である私は信じますわ」

 直前まで、何言ってんだ? みたいな顔してたけどな。


 マールは側近たちに何かを命じている。

「では、大会の見学希望の方は、広場の中央に集まってください。中央の敷物の上に座って、待機をお願いします」

 側近達が誘導を始めた。

お祭り会場にいた全員が、中央に移動し始める。わいわいと、とても楽しそうだ。

 みんなお祭り大好きだな!

 結局、誰一人かけることなく、中央の大きな敷物の上に腰を下ろした。

「では皆さん。転移しますので、敷物から絶対に降りないでください!」

 マールの側近五人が、敷物の周りに円形に並ぶ。

おお! 今から魔法で瞬間移動するのか! 大分、異世界成分が濃くなってきた気がする!


「純平。少しは私の応援するとかないわけ?」

 神楽坂さんは少しご機嫌斜めだ。

「あのなエリ、俺はさっきの交渉で疲れたぞ。エリが勝つんだから、それでいいだろ?」

「いいの? 私が勝つって事は……」

「なあ、エリ。俺は非モテとして、生きてきた男だぞ。言わせんなよ。恥ずかしい」

「う。うん」

 顔を赤くして。頷くエリ。

 何、この可愛い生き物


「ウチは、ウチには応援ないんっすか? 甘いやつ、甘いのが良いっす。」

「よしよし。頑張れ、頑張れ」

「違うっす、そんなんじゃないっす。もっと甘のが欲しいっす」

 リアナはリアナで、甘党だな。いつも甘いものを欲しがっている。


「純平様。正妻になる私には、何かありませんの?」

「マール。怪我しないように気を付けるんだぞ」

 そう言って頭を撫でる。

「なんか違いますが、撫でられるのは嬉しかったで、良しとしましょう」


 そんな事を言っていると。視界が暗転して、次の瞬間には砂漠のど真ん中に移動していた。


「それでは改めまして、第一回花婿争奪、魔法・弓術大会を開催します!!」

 うおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!

 砂漠のど真ん中でもみんな元気だ。エルフって、物静かなイメージだったんだけどな。


 側近達が呪文を唱えだす。

すると、はるか遠くに壁の様なものが出現した。かなり大きい。

 説明によると。現世の単位で言うところの距離4kmに、高さ50m、幅、厚さ30mの壁が立っているらしい。

 土を操る魔法の様で、今回はその中でも、鉄を集めて作られているという事だった。

 ビルを素手で消滅させたエリだが、鉄の塊は全く別物だ。どうなるんだろうか?


 今回はあれを的にして、どれだけ破壊できたかで、勝負を決めるという事になった。

選手交代する度に、あの壁は作り直されるらしい。ご苦労な事である。

 尚、今回は特別ルールで、複数発でも、同時発射ならOKという事になっている。

派手に爆発するのを、観客たちは楽しみにしているらしい。

 俺は知らんからな!


 順番は、リアナ、エリ、マールだ。


「やってやる、やってやるっす」

 リアナは、どこぞの人型ロボットの、パイロットの様な事を言って発射位置に立った。

そう言えば、リアナが魔法を使うのを始めてみる。


「ねえ純平」

神楽坂が隣に座って耳打ちしてくる

「貴方が知っている中で、一番凄いのって何? オタクだからそういう知識は有るんでしょ?」

 いやいや。俺別に、ミリオタじゃないんだけど? 

「俺もそんなに詳しいわけじゃないけど。あれは鉄の塊だから、表面で爆発してしまうような物は、普通なら駄目だと思う。

だから、仲間で潜り込んで、爆発するようなのが良いだろうな。バンガーバスターというミサイルとか。ただ、そのミサイルも、普通は鉄の塊を貫通できるほどの、力はないと思うぞ?」

「何となく分かったわ。多分、後はこの装備が補正してくれると思う。ありがとう純平」


「では、リアナ選手お願いします」

 リアナが大きく腰を逸らして、息を吸い込んでいる。

エネルギーが集まっているのが、俺でもわかる位。大きくなっている。

 次に、リアナが前傾姿勢になった瞬間。

口から巨大な炎の渦が流れ出し、的に殺到した。

 おおおおーーーーーー!

観客からどよめきの声が上がる。

 的が上の方から、みるみる溶けていくのが、ここからでも分かる。

ちょっとリアナ、凄すぎじゃね。

 力の制御が難しいと言っていたが。確かに、考え無しにこんな物放出されたら、堪ったもんではない。

 リアナのブレスが途切れるころには、上半分が溶けてなくなっていた。

元の敷物の上に戻ってくる時、住民たちは大きな拍手で、リアナを迎えていた。

 スゲーぞ獣人のお嬢ちゃん! そんな声に包まれて、リアナはご機嫌だ。


 リアナはこちらに駆けてきてきて、俺に飛びついた。

「どっすか旦那様? ウチ頑張ったっす。誉めて欲しっす」

「本当に凄かったぞリアナ。驚いたぞ」

 本当に驚いた。

俺はリアナを抱っこして、頭を撫でる。とても嬉しそうだ。

「そうっす。こういうのが欲しかったっす」


 マールを見ると少し青い顔になっていた。頬が少しぴくぴくしている。ほら見た事かと思ったが。

「ま、まあまあでしたわね。リアナに、こんな特技があったのですね」

 うん。まだ強がるらしい。


 エリを見ると。あれ? なんか少し機嫌が悪そうだ。

「純平。私、ちょっと本気出してみる」

 しまった。今の間、ずっとリアナを抱っこして、頭を撫でていた。どうも気に障ったらしい。

「エ、エリ。常識の範囲内だぞ!?」

「私、天界の常識なんて知らないから!」

ぷいっと。そっぽを向いて、発射地点に向かっていってしまった。

 神楽坂様の怒りに触れてしまった。

まあ、砂漠だし、大丈夫だよな?




 




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