エルフの里の王女様
「もう少しで、ウチの友達がいる。エルフの里っす」
モールで買い物をした後。今日の宿に泊まるためと、戦闘の激戦地を回避するために、少し遠回りしてエルフの里に行くことになった。
今、俺とリアナはエリに抱えられ、空を飛んで移動中である。
地球人の町と、帝国の両方に接する位置に、エルフの里はある。
エルフ達は、今回の戦闘には中立の立場を取っている。
今のところ、彼らが巻き込まれないのは、大きく二つ理由があるらしい
一つは、彼らは元々森で動物たちと過ごすの好み、巨大な森林の奥深くに住んでいる。
そして、地球人や帝国の人々が暮らす様な、街での生活に興味が無い為、そもそも接点が少ない事。
もう一つは、彼ら一人一人が魔法と弓術に優れ、森でのゲリラ戦を得意としている為に、侵攻した場合、得るものよりも、被害の方が大きくなるためだ。
「エルフか」
俺の期待は大きく膨らんでいた。
エルフと言えば、種族全員が美男美女、スレンダーボディーの金髪碧眼。
異世界物の代名詞のような存在。
そして、男子ならば誰も憧れる。謎の触手に襲われる美少女エルフ。
あえて言おう。最高であると。
「純平。落とされたいの? それとも、自分の強度実験でもして欲しいのかしら?」
俺を抱えているエリの腕の力が、弱くなる。
「わ、わっ! 神楽坂さん助けてください、ごめんなさい。許してください!」
「はあ。何で私、こんな奴を好きになっちゃったんだろう」
大きなため息とともに、力を元に戻してくれた。
ホントごめんなさい。後、僕の心も抉られました。
「エリ、なんっすか? 今何の話をしてたんっすか?」
モールでのショッピング中と、違う波長を感じたのか、リアナが食いついてくる。
「純平が、リアナのお友達とエルフちゃんとエッチな事がしたいそうよ」
待ってください神楽坂さん。僕、そこまでは思ってなかったですよ!
「旦那様! どういうことっすか!? ウチとライバルのエリならまだしも、他の女と交尾がしたいなんて、妻として絶対許さないっすよ!」
突如、隣でエリに抱えられているリアナが、俺の首を絞め始めた。
俺はリアナを舐めていたが、さすがは獣人。とんでもないパワーだ。
ぐいぐい俺の首が閉まっていく。必死にタップするが、全然力を抜いてくれない。
「旦那様が、旦那様が早くウチを選んで交尾しないから、他の女に目移りするっす。直ぐっす、今からすぐ交尾するっす」
「な! だめよ! 絶対ダメ! そんなの許さないわよ」
今度は、俺の腰を抱えているエリの腕に力が入る。な、中身が出てくる!
苦しい! 痛い! 声も出ない!
ああ、また俺死ぬのか。もう数えるのも面倒になってきた。
その時、リアナの手が外れ、エリも力を元の加減を、元に戻してくれた。
良かった。許してくれたみたいだ。
「エリ、聞こえたっすか」
「うん。多分こっちよ」
エリは急に進行方向を変え、急降下を始める。
「な、なんだ、どうしたんだ?」
「女の子の悲鳴。多分こっちで助けを求めてる」
な、なんとうい事だ。本当にあのシチュエーションに遭遇する事になるのか!
「純平だけ、ここで降りて行ってもいいのよ?」
「ち、違うぞエリ。遂に人助けができるかもと……。すいません。嘘つきました。自制します」
「もういいわ。お説教は後。とにかく急ぐわよ」
森の中に降り、エリの腕が外される。
深い森だと聞いていたが、かなり光が遮られているみたいで、とても昼過ぎとは思えない暗さだった。
「こっちっす。臭いと音がするっす」
リアナが直ぐに駆けだす。
俺たち二人も後を追う。しかし、獣人早え!見失わない様にするのが精一杯だ。
木とでこぼこの地形で、視界も足元も悪い中を、リアナは平地でも走るように進んでいく。
やばいな見失いそうだ。
「大丈夫、私は分かるから」
すいません。神楽坂さん。俺に合わせてくれてるんですね。
「そこまでっす!」
リアナは先に会敵したみたいだ。急がないと。
リアナに何とか追いついた時、一人の幼女エルフが、戦士風の男5人に拉致されようとしていた。
「ウチの友達の、マールが攫われるっす。あいつら多分、帝国の奴等っす」
すでに相手は臨戦態勢だ。
マールと呼ばれた女の子は、殴られたのか頬に痣がきて、涙を流している。
許せねえ、許せねえ、許せねえ。美幼女を虐める奴は絶対に許さねえ!
金髪幼女なんてもんは、もっと大切に、宝石のように扱うものなんだ!!!!!
「幼女は大切にするもんだ! お前ら絶対許さねえぞ!!!」
俺は一気に駆けだした、頭よりも身体が動いている感じだ。
自分で動いているはずなのに、自分の動きが早くて補足できない。
気付いた時には、戦士風の男5人は全員倒れていた。
全員を盾で跳ね飛ばしたみたいだ。自分の事なのだが実感がわかない。
「旦那様凄いっす。ウチでも、ギリギリ見えるくらいの速さだったっす」
「動機が不純すぎて、頭が痛くなりそうだったけど。確かに凄かったわ」
俺は急いで、マールに駆け寄る
「大丈夫か? 痛かっただろう? 俺はリアナの友達だ。もう安心だぞ」
近くで見るマールは、更に美しかった。
右頬に痣が出来てしまっているが、それでも人間ではありえないような整った顔。
生きた人形と言った方がしっくりする。エルフらしい金髪碧眼。
小さな体と、サラサラの金の髪が腰まで伸びている。
でも、その目は今は涙であふれていた。
「こ、怖かったですー」
金髪幼女マールが飛びついてきた。余程ひどい目に遭ったに違いない。
幼女を抱きしめ、頭を撫でてやる。
荒かった呼吸が少しずつ、落ち着いてきた。
「マール。リアナっす。大丈夫っすか?」
「リアナ、ありがとう。おかげさまで、王子様に助けていただく事が出来ました」
「「「え? なんだって?」」」
俺らは三人とも難聴になってしまった。リアナとエリは耳が良い筈なのだが。
「リアナ。今、申し上げた通りですわ。この方は私の王子様です」
その時、この空間の時間が停止した。




