表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/28

天界でのお買い物

 昨晩予定した通り。今日は俺の服を買いに行くのと、散髪。

後は、聖クラリス帝国鎮圧に向かう為の、道具を揃える事だ。


ホテル周辺には大型商業施設も幾つかあった。

 外観は、明らかに生前に見たことがあるものが多かった。

店名がそのままの物まである。色々大丈夫なんだろうか?

うん。やっぱり異世界成分少な目だな。

 少し違うとしたら、都心部のデパートと、郊外型大型ショッピングモールが混在している事くらいか。

あり得ない組み合わせではあるが、俺が欲しかった異世界感とは大分違う。

まあ、俺みたいなのがデートしたりするなら、何も考えずに済むと言う位か。

 エリとデートかー。

 そんな事を思ってエリを見ると。ちょっとモジモジしている。

また、考えている事を読まれたようだ。

俺まで恥ずかしくなってしまった。

   

 タダならばと、エリは某高級デパートと同じ名前の店に行ってみようと提案するが、リアナは大型ショッピングモールに行きたがっている。

 リアナは洋服の事は分からないので、ショッピングモールのゲーセンで遊びたいらしい。

やっぱり十歳児なのではないだろうか?

 あまりにもリアナが駄々をこねるので、モールの方に行くことにする。


「純平に着せてたい服があったのに」

 エリはちょっと残念そうだった。

「まあ、名前が同じデパートだからって、同じ店があるとも限らないし。

それに、リアナが駄々こねてたら、二人でゆっくり服選べないだろ?」

「うん。そうね」

 ちょっとそこで、顔赤くしないで、俺も恥ずかしいから!


「旦那様、エリ。先に言っとくっすけど。モールでも、ウチの耳を誤魔化すのは無理っすからね。感知した瞬間、獣人族のスピードを見せつける事になるっすよ。

昨晩から、二人の言葉の波動が甘ったるくて嫌になってくるっす」

 自称俺の奥様は、とても嫉妬深いらしい。

 

 背中にいつも通りリアナをおぶって、ショッピングモールに入る。

確かに中は、現実世界と大分違う。

店の雰囲気は良く似せてあるが、それぞれの店が趣味でやっている為、服のデザインなんかが独創的だ。

 まあ、引きこもりしてたんで、ユ○クロとか、し○むらとかしか、ほとんど知らないんだけど。

でも、エリにはそれが良かったらしい。選びがいがあると言っていた。

 モールにつくなり、リアナは俺の背中から飛び出して、直ぐに見えなくなった。完全に小学生の行動だ。

「じゃあ行きましょうか?」

 自慢じゃないが、俺は自分の服なんて殆ど選んだことが無い。ここはエリにお任せだ。

「おう。エリに任せるよ」

 俺は、そう言って歩こうとする。

「純平。こういう時は、その。あるでしょ?」

 うん? 何があるんだ? デートの前の儀式とか、俺には分からないぞ?

「ほら」

 そう言って手を出すエリ。まさかこれは。

俺はおずおずとエリの手に自分の手を伸ばす。

まさかの、お手て繋いでのデート!

感動だ。もう俺はリア充死ね! なんて言わない。

 

だが、歩くこと十数秒程。ダダダダっと物凄い音が近づいてくる。

「なんだ?」

 目の前から、何か近づいてくる。リアナだ!

リアナは俺とエリをめがけて、減速することなく突っ込んでくる。

そして、ゴールテープを切るかのように俺とエリの間を走り抜け、つないだ手を無理やり切り離した。 

 そして満足げな表情を浮かべた。

「甘々センサーが反応したっす。さっき二人に言ったっすよ。ウチを誤魔化すことはできないっす」

 それだけ言うと、リアナはまた走り去っていった。ウサギ耳恐るべしである。


「残念だけど。無理みたいだな」

「そ、そうみたいね」

 俺たちは苦笑いをしながら、先に進んだ。


 先ずは、店内の美容室で髪を切ってもらった。

エリ曰く、髪を切ってから、着る服のイメージをしていくのだそうだ。

美容室で髪を切ってもらのは初めての体験だった。

 ここの店長、一人しか店員さんはいないのだが、生前はカリスマ美容師と言われていた人らしい。

出来上がった髪を見て、エリは満足気だった。


「うん。素材は悪くないわね」

「エリさんよ。じゃあ今まではどう思っていたのかね?」

「スウェットのダサい冴えない童貞よ? 言わなかった?」

 あれ? 神楽坂さん。そこは本心だったんですか?

「まあ、今は違うけど」

 少し照れながら、そんな事を言ってくる

 だから、可愛すぎるっての!

「純平。ちょっと感情押さえて。私まで恥ずかしくなるから」

「ご、ごめん。でも、思ってしまうから仕方ない」

「そ、そう。ありがとう」

 ダダダダダ!また奴が来たようだ。今度は美容室のガラスに張り付いている。

美容師さんにお礼を言って店をでる。ここでは、お礼と感想が何よりのお支払の様だ。


 店の前ではリアナが待ち構えていた。

「旦那様。どういうことっすか? ウチの耳がビンビン反応するんっすけど」

 リアナは大そうご立腹の様だ。

「リアナが純平を放っておくのが、いけないんじゃないの?」

「うぅぅぅぅ」

 返す言葉はないが、遊びたい衝動に勝てない。そんな葛藤が見て取れる。

「ウチも買い物するっす。旦那様をエリに独り占めされるのは嫌っす」

 そう言って、定位置お俺の背中に飛びつくリアナ。

「じゃあ、リアナ。私も、純平と手を繋いでいいわよね? 抜駆けなしだもんね?」

 おお、そう返すのか。感心した。でも、ちょっと怖いと感じました。

「はっ! 何か騙されたような気がするっす。人間のそういうところ、ウチは苦手っす」

 うんうん。リアナの恋愛偏差値は、俺と同じくらいの様だ。


 半年以上、プラスあの世一日ぶりに髪を切った俺は、すっきりした気分になれた。

「純平はもう少し外見に気を使いなさい。まあ、これからは私が見てあげるけど」

「ウチも、ウチも旦那様をもっとカッコ良くするっす」

 リアナが変な対抗心を出している。年中同じ格好しかしてないリアナのコーディネートとか、地雷以外の何物でもなさそうだが。


 背中にリアナを背負い、右手で神楽坂と手を繋いでモールを回る。

 案の定、リアナのコーディネートは酷いものだった。


「旦那様には獣人の夫として、もっと強い感じになってもらわないといけないっす」

 着せられたのは、謎のヒョウ柄のタンクトップとお揃いの短パンだった。

 試着室を開けた時の、エリの涙をながしながら爆笑したリアクションには、ひどく傷ついた。

ごめんごめんといっているが、笑いが止まらない様だ。

 リアナはリアナで、本気でこれがカッコいいと思っている様で、旦那様これにするっすと言っている。

 店員さんも、ネタ半分で作ったものだったようで、完全に苦笑いだ。

良くお似合いですよと言いながら、一切俺の方を見ていない。

 何だこの罰ゲームは。


 リアナが頑として聞かないので。取り敢えずもらっておくことにした。

「ウチも中々のセンスを持っていたみたいっす。これで、更にウチの旦那様らしくなってきたっす」 

「良かったわね。純平」

 神楽坂さん。目を逸らしながら言うの、止めてもらえないですかね。

 リアナがこれを着てモールを回るよう主張したが、こればっかりは何とか抑えてもらった。

 

 エリのセンスは安心安定だった。

服の合わせ方は正直よく分からないが、短くしてもらった髪型にもバッチリ合っている気がする。

 白地に黒のプリントが入ったTシャツに、黒のパンツとベスト。

エリは、シンプルなのが好みの様だ。

「うん。いい感じだわ。初めて男の子のコーディネートしたけど。これなら大丈夫」

 俺はエリの初めてを貰った訳だ。感激だ!

「純平。あんまり恥ずかしい事、考えないでくれない?」

「ごめん。嬉しかったんでつい」

「何すっか? ウチが選んだ時と全然感じが違うっす! 絶対ウチの選んだのがカッコいいっす」

 リアナがむくれてしまった。

仕方ない。俺はリアナを抱っこして、頭を撫でる。

「リアナもありがとう。俺の服を選んでくれた女の子は、リアナが初めてなんだぞ」

 リアナははとても嬉しそうだ。良かった、何とか治める事が出来た。

 ただ、神楽坂さん。あんまりシャツの裾を引っ張らないでください。折角選んでもらったのに、伸びてしまいます。

  









 

 



  







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ