第八話「二度目の小学生」
章が変わって小になります。...
一年生~になった~ら~、一年生~になった~ら~、友達十人……すらできません。
入学してからはや1ヶ月、精神年齢が20後半歳の俺に友達ができるわけがなかった。
お嬢の従者(見習いだけど)としてずっと付き添っているので、男子達からは友達がいらない奴だとか女子の下に付いてる奴だとかなんかむかつくとか、とにかく近寄りがたい人ってことで定着した。
一方、女子からは人気があるほうだと思う。
鍛えられた従者スキルと大人の余裕で、優しい・落ち着いてる・安心する、といった評価をいただいた。
これも男子人気の低下に拍車をかけているんだけども…
こうなってしまったのは大体初日の自己紹介のせい。
名前順に座っていることもあり、俺は3番目に自己紹介をした。
「皆さん初めまして、大樹充一郎と申します。同じクラスの藤原耀子お嬢の従者です。これから一年よろしくお願いしますね。」
と、立派な自己紹介をしたのだが…
「あいつ何話してんだ?」 「子供で従者?」 「男なのに従者やってんの?」
「きっとあいつ女より弱っちいんだ!」 「雑魚だな!」 「勢いがないし、あいつ根暗じゃね?」
第一声が男子による罵倒だ。
そして名前順的に、教室後ろの窓側に座っているお嬢の自己紹介の時、
「先ほどの充一郎が紹介した、藤原耀子よ」
最近、お嬢の美少女化は進化し続けている。黒髪は背中辺りまで伸ばし、手入れが行き通っていて艶々している。黒髪と対照的な色白の肌は表情を目立たせた。
そんなお嬢の太陽スマイルは見るものすべてを振り向かせる最終兵器だったはずが…
「おバカな頭の人は近寄らないでね?」
口元は笑っていたが、目が濁っていた…まるで日食のような邪悪な感じに…
当然クラスはシラケてしまう。
男子達が何か言おうとしてもお嬢の、ん?(ニッコリ)スマイルで黙る。
それから一週間、ほぼ毎日男子達から喧嘩を吹っ掛けられるが、すべて避け切って過ごしていたら、構ってくれなくなった。
無視攻撃に切り替えたらしい。ハンデをつけて、回避の練習! って思っていたからもっと来てもよかったのに……
無視はひどい! とお嬢と良好な関係を持っている女子達と一緒にいたら、とってもいい人評価が女子達の間で広まり、こうなった。
ハーレムやん! ロリコンじゃねぇけどな!
ちなみに優吾は別の学校に通っている。
あいつがいれば、また違った結果になっていたかもしれないが。
本家と分家の差別化ってやつかねぇ。
そして現在昼給食。先生の考慮で給食班は自由となった。初期席だとお嬢とは正反対の位置だったからだ。
「お嬢、どうぞ」
「ありがとう」
私立のボンボン学校なので、俺の知っている給食じゃない。
使用人が配ってくれる。
しかし、俺は従者なので配膳を取ってお嬢に配っているのだ。
「充一郎君は本当にすごいね。立ってて疲れないの?」
「鍛えていますから」
この子はお嬢の友達一号の立花美優。
茶色の肩まで伸びた髪は健康的だと思う。
性格は少しおどおどして大人しいが、しっかりしている子だ。
お嬢には負けるが、この子の笑顔もやさしさがあり安心する。
最初はお嬢の言葉で怖がっていたが、とっても綺麗でかわいいという理由で話しかけたらしい。
ちなみに親は商人で社長だ。お嬢様追加~。
「充一郎も座って食べようよ! もう配り終わったんだし良いだろ。なぁ耀子」
「ええ。充一郎も座りなさい」
「かしこまりました。お嬢」
この元気いっぱいなしゃべり方はお嬢友達二号の赤坂雅。
名前の通り、赤髪で短めのポニーテイルにしてまとめている。
赤坂さんの笑顔も中々で、見ていると元気が湧いてくる。
……なんか俺、笑顔フェチになってない?
元々立花さんの幼馴染で、
「美優と友達なら私も友達だ!」
と主張。
動くことが大好きで、男子に混ざって遊んでいるのをよく見かけるな。
ちなみにこの子、なんと2500年前の先祖は王族だったらしい。
国が崩れ、没落してしまったようだが…
現在は、父親がここらの地主だそうだ。さらにお嬢様追加~…多くない?
赤坂とは鉄板ネタがある。
赤坂が騒いでいるとき、
「雅、雅らしくしなさい」
「お母さんと同じこと言うなぁ!」
である。高確率で大人しくなる。
そんな2人とよく一緒にいるのが最近の生活になっていた。
……勝ち組ですわ~。美少女しかいないとか贅沢だわ~。ロリコンではない。
今は女子としかつるまない女々しい奴と思われているが、そのうち嫉妬と憎悪でもまれるんだろうな……背後の気配を感じ取る訓練をしておこう….
「充一郎君はどうして耀子ちゃんの従者になったの?」
立花さんが質問してきた。
恥ずかしいので言いたくないんだが…
「お嬢。龍之介様に言ったあの言葉。復唱してもよろしいですか?」
「んんっ!? けほっ、けほっ! 言ったら特訓メニュー倍にするわよ!」
「申し訳ありません。言えないです」
「いったい何があったんだ…」
赤面お嬢かわいいです。眼福眼福。
「特訓メニューって?」
「僕の従者教育です。お嬢や父に鍛えていただいています」
「へ~そうなんだ」
「どんなことやってるんだ?」
聞かれたので、目から光を消して朝から昼までのことを話した。
ちなみに小学生に上がったので、少し増えている。
続けて午後のメニューを言おうとしたら、二人が遮った。
「ごめん、もういいよ…」
「充一郎君は…が、頑張り屋さんだね!」
...そんな表情しないで…もう慣れました…
「じゃあ学校の授業つまらなくない?」
「まぁそうですね…でも先生の脱線話は面白いですよ」
学校の授業で一番大事なのは、テストには関係ないけど人生に関係する話だと思う。
「授業時間がつぶれるから私も好きだな!」
「そんなんじゃ悪い点数取ってお母さんに怒られるよ…」
「な、何とかなる!」
「じゃあ次の時間に抜き打ちテストするわね?」
雅の背後に先生がいた。気づいていたけど話さない。これが赤坂のためになるんだっ…
「ひっ、先生! ちょっと充一郎! 絶対見えてただろ!」
「申し訳ございません。お嬢を見ていたので気が付きませんでした」
「んぐっ! 充一郎! 食事中にそういうこといわないの!」
「では食事中でなければよろしいのですね。かしこまりました」
「帰ったら倍特訓よ!」
「あっごめんなさい! 調子乗りました!」
「だめよ! これは決定事項なんだから!」
サヨナラ第二ノ人生……
「あはは…たまに二人とも素が出ちゃうよね…」
なんだかんだで、良い学校生活を送っています。
ありがとうございました。
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