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三題噺 『星』『太陽』『洗濯機』

作者: 井上咲月

 私は三人兄妹の末っ子だ。キョウダイと言っても実際に血のつながりがあるのは上の姉だけでその姉と同い年の兄はあくまでも他人。けれど小さい頃から一緒に住んでいるので兄のようなものだ。

 姉も『お兄ちゃん』と呼んでいるし私だってその呼び方に疑問を抱いたことは一度もない。養子縁組を組んでいるわけでもないがお兄ちゃんがこの家に過ごす時間は一週間のうちに少なくとも五日で基本的には毎日、つまり私と姉と私たち両親とそれに加えてお兄ちゃんの五人で生活することになっている。

 幼い頃からお兄ちゃんは私や姉の二歩も三歩も先を歩き続けて、正直なところ私も姉も尊敬しているのだが、それは多分打ち明けることはないかもしれない。

 そんな私たちが尊敬するお兄ちゃんは、現在夏休み真っ最中の昼下がり、洗濯機の前で体育座りをしている。何をしているんだこのお兄ちゃん、ズレているのか? サイクルジャージにレーパンとグローブ、右手には自転車専用のサングラスを持ち左手には二本のサイクルボトルを握っている。どうやったら5本の指で二つのボトルをつかむことができるのか、甚だ疑問だ。

 「何をしているの?」

 兄曰く、このサイクロン式のドラムを見ていると何故だか心が落ち着くそうだ。いやマジで何を言っているんだこのお兄ちゃんは?

 なんて話をしていると二階から姉がだらしない声を出しながら降りて来た、夏休みといえど午前十一時だ。確か昨日は十時頃に眠りについた気がするけれど、どうすればこの時間まで眠れるのか今度聞いてみたい。それとパジャマに羅列されている自転車メーカーの名前、どこでこういう服買ってくるんだろう?

 完全に覚醒すれば周りの人を明るくする達人とも言える太陽のような姉だが、半覚醒の今では洗濯機の前に座り込んでいる兄にもたれかかって再び眠りにつこうとする。それはもちろん私が阻止してみせる、しかしなんだろうこの状況。私がツッコミ役なのか? 勘弁してください。

 今日は午後から三人で近くの山を登る約束をしているはずだが……まあこの二人なら問題ないだろう。片や部活では百戦錬磨のPGポイントガードとして導く姿とセンターラインから殆ど動かない不動っぷりに他校の女子からは北辰の擬人化と揶揄され、片や生徒会長としてバリバリと学校の生活改善を図り見事成功して大学の推薦も狙える範囲にいる人だ。きっちりするところはきっちりやってくれる。とりあえずこの言葉を投げかけるべきかもしれない。

 「二人とも普段着に着替えてよね、お昼ご飯何食べたい?」

 その言葉に『湯豆腐』と兄が、『きりたんぽ』と姉が答えた。



 よし、台所へ急ごう、二つのお玉を投げつけるために。

暇つぶしてきな三題噺でした

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