第2話 転生と天使
明るい日差しが入ってきて目が覚めた。あれから一日経ったのだろうか?
目を開けると木で出来た天井と、壁に掛けられた蝋燭が見える。
(あれ? 何で生きてるの?)
夢オチという展開を期待していたんだけど、現実は甘くないみたいだ。とりあえず頬を抓ってみる。
「いたい……」
薄々は分かっていたけど。もうここは知らない土地とかじゃなくて異世界なのかもしれない。
(……寝よ)
二度寝しようとした時に、微かに甘い香りが鼻腔を擽った。
背中には少し獣臭い匂いと、もふもふした感触がする。
掛けられていた薄い毛布を横にして上半身を起き上がらせる、下には床の上に毛皮が敷かれていたらしい。そして、このもふもふは素晴らしい。手の平で愛でて心を癒す。
(待て。なんで家の中で寝てるんだ?)
状況を確認するために室内をキョロキョロと見渡しながら、もふもふを撫でる……あれ?
さて、余りの事に意識が向かなかったが、腕が治っている。
(……)
昨日の事は夢だったんだと思えれば楽なんだけど、そういう訳では無いだろう。でも、治ったことに説明が付かない。頭がおかしくなったと考えるのが一番だが、認める訳にはいかない。断じて。
「パチパチ」と音がする方を見ると隣の部屋にある暖炉が見えた。暖炉には大鍋が料理器具に吊るされて火にかけられている。
甘い香りの正体は鍋に入った食べ物からだろう、壁に邪魔されて暖炉以外の部分が見えないが、恐らく台所だと思う。それと自分が寝ている部屋は寝室みたいだ。
視線を暖炉の火に移して考え事に耽っていると、扉の開く音が聞こえた。
扉を閉める音と、荷物を置く音が聞こえてから少しして寝室に女の人が入ってきた。
身長は150センチぐらいに、童顔だが少し彫が深く美人六割、可愛さ四割。やや痩せ型で輝くほどの金髪は腰近くまで伸びている。若干垂れ目の瞳も髪と同じ金色だ。肌は白く、頬やスカートとソックスの間の膝には朱がさしておりとても魅力的だ。そして慎ましくも主張しているCカップ。このオッパイマエストロの神眼に間違えは無い。
そんなドストライクな絶世美女と目が合って、気持ちが高ぶった結果。
「っっ結婚してくれ!!!」
こんなことを口走ったのは後悔していないが、反省もしない。
彼女は目を丸くして驚いた後に、嬉しそうな、それでいて懐かしい雰囲気を感じさせる表情をしながら、
「元気になったのね? よかった」
と言ってスルーした。……めげないぞ。
「じぶ……、僕は昨日どうしたんでしょうか? 確か怪我をしていたはずなんですけど……?」
一人称を自分よりは恐らく小さくなっているはずだし、僕の方が良いだろうと考え言い直す。
彼女はただ一言。
「魔法よ」
さて、今の説明で分かる人などいないだろう、いや、居る訳がない。意味は理解出来るけど、出来るわけが無いからだ。
「……」
「……」
これ以上の説明は期待出来ないみたいだ。てっきり『いたいのいたいのとんでけ~』てきな魔法かと思ったんだけど、彼女は大真面目な顔で言っている。美しい。
「えっと……、魔法ですか? 良く分からないんですけど」
彼女は綺麗な金色の瞳で見詰めてくる。やめて! 照れちゃう!! 美人さんに見られるのはいい、興奮する。顔を赤らめて息が荒くなりそうになる前に彼女が口を開いた。
「魔法を知らないの?」
そう言うと彼女は徐に棚に置いてあったナイフを取って、軽く手の平を切った。
「簡易治癒」
切った自分の傷口に触れて呪文を唱えると徐々に傷口が塞がっていった。彼女の瞳は僕の目を見て問うていた「知らないの?」と。知らないと答えたかったけど。僕は今見たことに口を半開きにしたまま見ていたから、知らないと彼女に伝わっただろう。
「……記憶は? 何処まで無いの?」
悲しそうに彼女はそう言った。
記憶が無いの? と聞かれるってことは、この世界では魔法という存在を知っているのが当たり前のことなのだろう。きっと自分の記憶が跳んだと思われているんだろうが、まさか別の世界? 星? から、この世界に来たとは思わないはず。
正直に話したとしても、頭がおかしいと思われるだろうし、自分ならそう思う。どちらにせよ元の世界の記憶は曖昧だし、この世界で記憶喪失した事にして話を進めようとした時に彼女の口が動いた。
「貴方は異邦人? でも、異邦人でも魔法を知らないって事は……。もしかして途中転生? 何時来たか分かる?」
「え?」
異邦人とはどういう意味なのだろう? 遠い国から来た人のこと指しているのだろうか? でも転生とも言っていたし、なんなんだろう?
「異邦人というのは異世界から来た人、という意味よ。私みたいなフェアリーはそういうのを感じ取れるの」
まさか異世界で話が通じるとは思わなかったけど、この際全てを話すことにした。昨日から居て、気づいたら森の中に居た事や、変な生き物に襲われて崖から落ちたことを。そして自分の記憶から元の世界の人間関係や思い出などが消えている事、自分に関する記憶も曖昧な部分がある事を話した。
「そう、記憶は無いのね」
とても悲しそうに、そして泣きそうな顔になりながら彼女はそう言う。
ここまで親身にされると何だか悪いことをしてしまったみたいに感じちゃうな。そういえば何でこの世界の言葉が分かるのかとか、異邦人の事について質問してみた。
「ここでは極々稀にだけれども、前世の記憶を持った人が転生する事があるのよ、あくまで生まれる前の胎児の段階でだけれども。貴方のような途中転生はさらに珍しいわね。昔の文献に途中転生について書かれた本があったけど、数千年以上前の話だから信憑性も疑わしいのよね――」
「――貴方の場合は、何かの拍子で魂が抜けてしまった人の体に入り込んだのかしら? だから魂の欠片が残っていて会話する程度の知識は残っていたのかもしれないわね、あくまで仮説だけど……」
(何だか凄い話になってるな。ってか転生したの? 自分が?)
「元の世界に帰りたいんですけど、体を持ち主に返して、僕の魂を魔法で元の世界に返すこととか、出来ますよね?」
「出来ないわね。まず元の体の所有者は死んでると思うわ、そうじゃないと体に入り込めないから。それと、魂を保存する技術はあるけれど、魂を元の世界に送る魔法は無いわね。――その前に異邦人と言われる転生者が元の世界に帰れた話は一切聞いたことがないわ」
えぇ~っと、まず異邦人と呼ばれる転生者は元の世界の記憶を残したまま転生してきた人の事を言う。そして記憶を持った異邦人がこの世界に転生した前例は有る。但し、胎児の時に。って事は母親のお腹に居るときに。自分みたいな途中転生はないらしい。信憑性のない数千年前の文献以外は。
元の世界に返れないとしても今までに前例がないだけで、帰れる可能性も僅かにあるだろう、と思いたい。
(探しに行くしかないのか……メンドクサイ)
帰る方法を見つけるためにも直ぐに行動しよう。立ち上がろうとすると肩を抑えられて寝かされる。やめて顔が近い! あぁぁああ! ペロペロしたい! と頭が沸騰していると。
「まだ寝ていなさい、魔法で傷を癒せても体力までは回復しないのよ」
「ありがとうございます。でも方法は無いとしても一応は帰り方も探したいですし、何時までも迷惑をかける事も出来ません」
本心でそう言ったのだけれど彼女は強い口調で返答した。
「貴方のことは迷惑だとは思ってないわ。前世の記憶がある異邦人は下手に知られると危険な目に遭うわよ。実際に利用するために拉致されたりする事例もあるの。それに今の貴方は……何歳かしら?」
彼女は僕の顔を観察してからボソっと言った。
「六歳くらいかしら?」
「え?」
体が小さくなったとは思っていたけどそこまで小さいとは思わなかった。上半身を起き上がらせて自分の体をペタペタ触りながら、頭の中で「え? え?」と繰り返して混乱していると、彼女は磨き込まれ持ち手が付いた小さな銀盤を持って来て僕に向けた。
この世界の鏡? と思いながら、まじまじと自分の姿を確認する。
(あぁ~。本当にそのくらいですね~)
若干放心しながら自分の姿を見る。幼いので当たり前だが童顔だ。元の顔よりは少し彫が深いかな? 髪は少し茶が入った黒色、肌はまだ子供だからか白い、身長は1メートルちょっと位だろう。銀の鏡だと見づらくて良く分からないな。ってかよくこの体で戦えたな、奇跡的だよ。
一人で、うんうんと頭を振って納得していると話しかけられた。
「分かったでしょ? 立派に成長するまで此処にいなさい、貴方の面倒は私が見るから」
いやいやいや、それは流石に駄目っていうか迷惑でしょ! と思ったのが顔に出たのだろう。
「此処にいなさい」
両肩を掴まれ、凄まれた。あ、肩が痛いです、それ以上はちょっと!
肩を掴まれたのを痛がったのが分かったのか、手を離してから僕の脇に手を回し抱きしめられた。
(ああああ!! 当たってる! 当たってるよ!!)
顔を彼女の肩に置いて居たせいでダイレクトに首筋から甘い香りがする。「すーーはーすーーはー!!」吐くよりも吸う方を優先する。
「ず、ずっとこのままでいたいですぅ!」
彼女は「そう、よかったわ」って言いながら頭を撫でる。
(こ、興奮しすぎて意識が……)
きっと彼女は「ちょろいな」と思っただろう。いや、あんな美しい天使ならそんな事は思わないはず、絶対に! そうして意識を失うように眠りに付いた。
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何だか興奮しすぎて、ここにいると口走ってしまったが本心だ。
確かにこの見た目に年齢だと苦労するだろう。彼女の手伝いをしながら生活しよう。起き上がって大きく伸びをしてから彼女を探す。寝室には居ないみたいだ、居間にいるのだろうか?
寝室と居間を隔てる壁から顔を出すと、彼女は背凭れが付いている木製の椅子に座って、同じく木製の机に手を載せて考え事をしていた。彼女がこっちに気がついて手招きをしてきたので椅子を引いて自分も座る。
「お腹すいてるでしょ? いま食べ物持ってくるわね」
彼女は席を立つと暖炉の方へ向かっていった。そういえば今日はまだ何も食べていなかったと思うと急にお腹が空いてきた。
彼女が机に戻ってくると、木でできた皿の中に穀物や野菜が入ったポタージュみたいなのを出してくれた。それをちょっと曲がっていて愛嬌のある木製スプーンで食べる。
ポタージュはとろみがつくまで煮込まれている、具は大麦や玉葱に蚕豆とリーキみたいだ。野菜の溶け込んだ味で美味しく、大麦が味のアクセントになっている。素朴でいい味だったと食べ終えてから目の前で手を合わせる。彼女はそっと飲み物を出してくれた。美人で気が利くなんて!! 飲んでみると果汁ジュースみたいだ。人心地がついてから何か手伝うことはないかと聞いてみる。
「そうね……手伝ってもらいたい事は色々あるけれども、その前に村長さんも貴方の事を心配していて、お見舞いに来てくれる事になっているの」
その時に「コンコン」と、タイミングを見計らっていたかのように扉が叩かれた。
「どうぞ、お上がりください」
「失礼します。どうですかな、子供さんの容態は? ……おお、元気なようですなぁ」
入ってきた初老の人は、薄い金髪に薄い水色の瞳で身長は185センチくらいありそうだ。なにより目を引くのは尖った耳、顔立ちもエルフっぽい感じがする。彼女がその人に椅子に座るのを勧めてから、ハーブが浮かんだお湯を持ってきた。
「長耳族を見るのは初めてですかな?」
尖ってる! 耳尖ってるよ! と興奮しながら見ていたせいか聞かれてしまった。
「はい、始めて見ました!」
元気よく返事をすると、微笑まれた。初老でもイケメンだエルフってすごい。
「村長さん、彼の面倒は私が見ますから」
横に座っている彼女を見ると真剣な顔で言っていた。村長は彼女を見てから僕を見て、もう一度彼女に視線を向けた。彼女の村での立場が分からないが、今思うと成人していないだろうと思われる見た目の彼女が自分の面倒を見るなんて普通ありえないよな。
「う~ん、さすがにそれはのう、君の名前は? 住んでいた場所は分かるのかい?」
あぁ、名前どうしよう? 覚えてないんだけど? 彼女を見ると目が合った。なんかこっち見てウンウン言って頷いている。……何?
「彼の名前はカイム・カーライトです。それに記憶を失っています」
ちょっと! なに勝手に名前付けてるの? ねぇ! って抗議の視線を彼女に向けると、こっちの目を見てウンウンいってる、……意味分かんないです。
助けを求めるように村長を見ると、目を瞑って「そうか」と頷きながら小声で言っていた。落ち着け村長、おかしいだろ。そんな自分を無視して話が進んでいく。
「分かりました。それではそのように調整しましょう」
彼女は嬉しそうに「ありがとう」と言っていた。僕はもう何も言わないよ、こんな美人な人と暮らせる贅沢を満喫するよ!
「それではココに名前を書いていただけますかな」
村長が肩に掛けた小さな鞄から羊皮紙を広げて、羽ペンとインクを用意した。すでに何か書かれてある羊皮紙の下に空欄があるので、そこに自分の名前を書こうとして止まる。
「あの、文字が書けないです」
自分で話したり聞いたりするのは理解出来ているが、書いたり読んだりする事が出来ないのを今知った。
「あら、そうだったの? 私が代筆しますね」
僕から羊皮紙を受け取るとそのまま名前を書き込んでいく。
(やっぱり読めないな)
彼女は書き終えた羊皮紙を村長に渡した。村長は鞄に羊皮紙を仕舞うと、もう一枚の羊皮紙を取り出して会話を始める。
「先ほど王国の方から報せがありましてな、一週間ほど前にヴァーレン要塞が落ちたそうです……。それに関連して近々騎士団が村を守るために送られてくるそうですな」
なんでもこの国の西に存在する要塞が獣人達に奪われたそうで、西側一帯が危険地帯になったみたいだ。この村は【精樹の村】という名前で、王国の南に位置しているが、要塞が占領された事で此処にも獣人が来るかもしれないとの報告を村長がしていた。
「獣人って何ですか? 獣耳の生えた人達のことですか?」
「いや、違うよ。獣人と言うのはの、闘豚族や錬鬼族、子戯族とかですな、他にもいるがの。獣耳が生えた者や尻尾を持つ者で言葉を理解する種族は人獣族と呼ばれておる。ちなみにワシら長耳族は亜人族に属しとるよ」
なんだか、いっぱい居る見たいだな。他にもどんな種族が居るのか聞いてみたら、後で種族関連の本を持って来てくれる話になった。こういう種族の本とか面白そうだ、なんだかワクワクする。あ、でも字読めないや勉強しなきゃ。
「村長さんが持って来てくれたら後で読んであげるわよ」
彼女が横に座っている僕に微笑んだ。天使だ、天使がいる!!
「さて、用件も済みましたし、そろそろ戻るとしましょう、それでは失礼します」
村長が席を立つと、彼女が扉を開けて話しながら一緒に外に出て行った。
暫くしてから戻って来て、僕の正面の椅子に座った。
そうだ聞いてなかった事があったんだ。
「あの、今さらですけど、名前を聞いてなかったんですが」
彼女はちょっと驚いた顔をしてから「そういえばそうね」って小声で言ってからこっちを見る。
「私は、マヤ・カーライト。高位妖精族よ、この種族は妖精士爵って言う準貴族階級が与えられているの、その特権で貴方に名前を付けたわ」
最初に言っていたフェアリーとは種族のことだったのか。
それにしても貴族様でしたか。なんでも高位妖精族というだけで与えられる一代限りの貴族階級らしい、自分の子供や親族に苗字を与えられるそうだ。ただし、苗字を与えた人が死んだ場合には与えられた人が貴族階級では無い場合、苗字は名乗れなくなる。ちなみに勝手に名乗ったとしても罰する法律は無いが、勝手に名乗ったのがばれた時には大抵は色々と酷い目に遭うらしい。
「子供でも親族でもないんだけど?」
「種族によって親族の意味が若干違うからそれを利用してるだけよ」
……適当なの?
「苗字も与えたけれども名乗るときはカイムだけにしときなさい。さてカイム、そろそろ手伝ってもらおうかしら」
マヤは微笑んでから一緒に食器を片付ける作業をした。これから家で生活する知識や世界の雑学、戦う術と魔法を教えるとのことだ。やけにニヤニヤしていてちょっと怖い。
「戦う術って必要なんですか?」
「必要よ。外には魔物と言われる獣人や魔族が襲ってくるわ、たとえ防壁のある町に住んでいたとしても絶対に安全なんてないわよ。それと敬語やめなさい」
ちょっと怒った感じに言われてしまった。でもその顔も素敵です!
「ごめんなさい。次から気をつける」
マヤは「ありがと」って頭を撫でてきた。
あぁああ!! だめ! らめなの! こ、こんな美人にぃ! 興奮しすぎて絶頂に達しそうになった時に扉がノックされた。村長の使いの人が来て本を三冊ほど置いていった。
マヤは本を受け取ると、ニコニコしながら僕の所へ来る。
「さて、さっそくお勉強しましょうね」
嬉しそうな声を出しながら、【世界の種族】と書かれているらしい本を開きマヤが読み聞かせてくれる。
この世界には様々な種族がいるらしい。まずは自分みたいな【人間族】に分類される種族は人族とも呼ばれ、そのまま地方ごとに北方人、西方人、東方人、南方人に分けられる。
【亜人族】に分類されるのは長耳族に月長耳族に矮小族に北方に住む冷人族。さらに山に住む少数民族の竜人族だ。
次に【精霊族】少し多いので割愛するが代表的なのは高位精霊族と古代長耳族だ。何でハイエルフはこの分類なんだろうか?
最後に【人獣族】だが、こちらに分類されるのは亜種含め多いのでこちらも割愛して自分の好みで紹介する。兎人族に猫耳族に犬耳族と羊角族だ。ちなみに猫耳族や犬耳族といっても猫耳から狼耳や狐耳とか亜種が多くて頭に入らない。
「物凄く多いな」
「まだ序の口よ、今のが一部例外の種族はあるけれど、意思疎通できる種族の代表よ。次に意思疎通が大変な種族や私達を見れば襲ってくる種族の紹介があるけど……聞く?」
「もちろん聞きくよ」
読めないが次のページも恐ろしいほどにびっしりと書いてあった。ここから先に書いてある種族は、全て単に【魔物】と呼ばれたりして一括りにされる事もあるらしい。それと数が多いので全て割愛するしかないな。
まずは【獣人族】代表的な種族は錬鬼族と闘豚族や巨鈍族。次は主に海に住んでいる種族の紹介で、【海人族】は海象族や人魚族。
「え!? 人魚族は意思疎通で出来ないの?」
「話すことは出来るわ、でも縄張りに入ると仲間以外には襲ってくるから話し合いが設けられたことがないのよ」
そんな! マーメイドとお近づきになれないのか! って顔してたらマヤに睨まれたので「次の説明お願いします」と真顔で言っといた。
次はそのまんまの意味の【獣族】普通の獣とは違って魔力で突然変異した獣が種族として繁栄したのが分類されるみたい、魔物化した獣なので普通の獣より強いらしい。代表的なのは一角兎や剣歯虎族、変なのが混じってて人狼族がいた。
「人狼族は人が満月になると変身するとかじゃないの?」
「いえ、変身することは無いわよ。あと、人の姿もしていないし喋れないわ」
なるほど、喋れないし人かどうかも分からないからこの扱いなのか。さて次にいってみよう。
【龍・竜族】代表格なのは翼竜族に龍族か。本当にいるんだね怖いわ。竜と龍の違いだが、強さが別物らしいく竜と名前が付く種族は腕にあたる部分が翼を兼ねているらしい。龍の方は腕とは別に翼が生えているみたいだ。また幼龍、子龍、成龍、上位龍と成長していき、属性持ちの龍も存在する。ちなみに翼竜族は上位竜を除外して同じように進化するらしい。
「龍族は倒せるんだよね?」
「う~ん……軍が動員されるんだったら半壊覚悟で上位龍は倒せるんじゃないかしら?」
「え? 龍族とは別枠の種族として古代龍がいるんだけど?」
「古代龍なら一つの国が一丸となって壊滅覚悟で挑めば倒せるくらい?」
手を出したら終わるって事は良く分かったよ。国が壊滅覚悟なら複数の国で連携して何とかなるのかな? そのさらに上位には別枠の種族としている皇帝龍とか神話クラスらしいね! 笑えないよ!
さて気を取り直して次は【不死族】骸骨や死霊族など、変わった種族なら不死鳥も入っている。骸骨みたいに族が付かない種族は、考える思考や意思が無い、単体でも恐ろしく強い、群れる事や習性が無いなどの条件らしい。
次は【魔族】有名な種族といったら軟体魔族に地虫族だろう、他の魔族に分類される種族には、淫乱魔族、三頭犬や一つ目巨人なども入っている。
「前に説明された【獣族】と【魔族】の違いはなんなの?」
「最初のは説明にも書いてあったけれども獣が魔力によって突然変異した個体が繁殖して種族として確立したもので。魔族の方は、魔力そのものから生み出された種族と獣以外の生物や虫、又は合成生物などよ」
そういえば合成生物だから合成幻獣も魔族の分類に入ってるのか。最後は【悪魔族】だね、下級悪魔、中級悪魔、上級悪魔、魔王級悪魔、魔帝級悪魔。
「悪魔なんて本当にいるの?」
「いるわよ? 今は確か魔王級悪魔が三人封印されているわよ、そのうちの一つの封印が解かれそうなんじゃないかって心配しているところみたいね」
(ん? なんだか凄いこと言ってるぞこの子……)
詳しく聞いてみると海を越えた先にエルリタ大陸があって、そこの魔族や獣人達が増えてきたからそう予想をしているらしい。あとの二つは、今いるアムリタ大陸の北側と東側にあるらしいけど、正確な場所の資料が無くなって分からないみたいだ。大丈夫なのかと聞いたら。
「自分の身を守れるくらいに強くなりなさい」
と言われただけだった。一応「はい」とは返事しておいた。
それから文字を教えてもらうのに何度か読み返した、結構簡単に単語を覚えていった。見た目は子供で頭脳も子供だったことに感謝したい。そうしているうちに日が沈むくらいの時間になっていたので、夕食に昼に食べたポタージュと少し硬くなったライ麦パンを食べた。
「黒パンはもっと硬いものかと思ってたけど普通に噛み切れるんだね」
「この村は裕福な方だからよ。普通の村や町ではパンを焼くのにお金がかかるから一度に大量に焼くの、そのパンが何週間、何ヶ月って置いておかれるから硬くなって味も美味しくなくなるのよ」
なんでもパンを焼くのには焼く料金と税金が掛かるらしい。村や小規模な町の場合、パンは少量しか売られていなくて、普通は自分で麦を持ち込んでお金を払って焼いてもらう。大きな町や都市ぐらいの規模になると幾つものパン屋があって麦を持ち込まなくてもパンが大量に売っているみたいだ。
ちなみに硬くなる前にパンを何切れかに切って保存したり、硬すぎて噛めない時にはスープに混ぜるか、スープや水に浸して食べるらしい。噛み切れなくなった黒パンをちょっと食べてみたいけどお腹壊しそうだな。
そういえばここの生活水準はどのくらいなんだろうか? 紀元前で無いことを祈ろう。食事を食べ終えて、洗い物をして、何かの木の枝みたいので歯を磨く。今日は早めに寝ることになった。
床に毛皮を二枚敷いて薄い毛布で寝る。そう、そうだよ! 添い寝だよ!! 興奮してなかなか寝付けなかったのは言うまでもないかな。
ここでは本編に出てきた言葉や造語の解説をしようと思っています。




