表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神童セフィリアの下剋上プログラム  作者: 足高たかみ
第三章 【イースベルク共和国】
97/284

1歳3ヶ月 24



 私たちがトーレットを発ってから、すでに三日ほどが経っていました。

 その間、特に何か事件らしい事件が起きることもなく、勝手に逃げ去って行く野獣たちを眺めながら順調に旅路を進んでおります。

 そう言えばこないだ、私が動物に逃げられる理由をレジィに聞いてみました。

 答えは一言、『死の匂いがする』とのことです。

 えぇ~……


 ま、まぁそれはともかくとして……私たちは現在、休憩がてらにお昼ご飯と洒落込んでいました。

 こうやってちょくちょく休憩しないと、馬車を引いてくれる馬たちに疲労やストレスが蓄積して長旅ができなくなるのだとか。

 私にはそういった詳しいことはわかりませんが、ケイリスくんが言うのだからそうなのでしょう。


 そうそう、ケイリスくんと言えば、あのエルフの里の一件以来、彼は私を避けるようにして視線を……いえ、視線どころか顔も向けてくれないのです。

 やっぱり、複雑な事情がありそうなのに、家族になろうかなんて冗談めかして言ったのがいけなかったのでしょうか……。

 馬車の後ろの席から御者席をチラッと覗くと、ケイリスくんは一人で食事していました。


 ……まだ、怒ってるのかなぁ。


 私は恐る恐る席を立つと、馬車の横をちょこちょこ歩いて、御者席に座っているケイリスくんの足元へと移動します。

 私が下からジーッと視線を注いでいるのに気が付いたケイリスくんはギョッとしたように目を剥いて、それから頬っぺたをちょっとだけ赤くして、ゆっくりと目を逸らしました。

 それでも私が根気強く見つめていると、やがて根負けしたケイリスくんは御者席から降りてきて、私を抱き上げてくれました。よし、勝った。


 それから私を抱えたまま再び御者席へと戻ったケイリスくんに、私は後ろめたさから俯きがちになって、


『あの……ケイリスくん……まだ、怒ってる……?』


 私の問いに、ケイリスくんは「え」と小さく漏らして、動かなくなりました。


『エルフの里から、ずっと怒ってるよね? あの時、里を出る前に私が変なこと言っちゃったから……』

「いえ、そんな……怒ってなんか、ないですよ」


 嘘だぁ。怒ってる人はみんなそう言うんです。


『もう変なこと言わないから、許して……? なんでも言うこと聞くから……』

「あの、だから怒っては…………あっ」


 なんだか困惑気味の表情を浮かべていたケイリスくんは、突然何かを閃いたかのように声を上げると、


「それじゃあ、一つだけお願いを聞いてもらっても良いですか?」

『……! うん、いいよ!』


 お願いを提案するという事は、そのお願いを聞いてあげれば、今までみたいに私と顔を合わせてくれるという事です。

 私が嬉々として頷くと、ケイリスくんはちょっぴり照れくさそうにしながら、その“お願い”を口にしました。




『ねぇケイリスくん。ほんとにこんなことでいいの?』

「はい。ボクにとっては、大事なことなんです」


 うーん、まぁケイリスくんが良いなら、良いんですけど。


 ケイリスくんは、自分が編み込んだ私の髪を撫でながら、うっとりと目を細めていました。

 現在 私の白金色の長い髪は、ケイリスくんによって三つ編みに結われていました。まるで高級な調度品でも取り扱うかのような手つきで編まれた髪は、それはそれは見事なお手前。さすがは執事です。いや、自分の髪を編むので慣れてるのかな?

 それにしても、ケイリスくんは三つ編みが好きなのでしょうか? ときどき自分の三つ編みを撫でているところを見かけたりもしますし。

 まぁ、これくらいでケイリスくんが機嫌を直してくれるのなら安いものです。ほらほら、好きなだけ編むがいいさ。撫でるがいいさ。


 なーんてことをやっていると、馬車の後ろの座席からネルヴィアさんとレジィがこちらを覗いていました。

 どうやらケイリスくんのお膝に乗っけられている私の髪を見ているらしく、二人はしばらく黙りこんでから、唐突に口を開きました。


「私は、セフィ様にはいつぞやのツインテールがお似合いだったと思います!」

「オレは何もしないほうがいいとおもうぞご主人! しいて言うなら、風になびいてる時が一番好きだ!」


 いや、うん……ごめん、別に聞いてはいないんだけどなぁ……


 でもせっかくみんなが申告してくれたので、これからは時々髪型を変えてみたりしよっかなぁ。

 私個人としては、本当は髪切りたいっていうのが本音なんですけど。しかしうちのお母さんは髪が長いほうが好きということなので、プチ親孝行としてずっと伸ばしているのです。

 そういえば前世でもわりと髪は長かった方ですが、当然ながら誰も私のことなんて見てやいませんでした。

 それを思えば、たかが髪型一つでうちの大切な子たちが喜んでくれるのなら、是非もありません。やってやろうではありませんか!


 休憩を終えて私が馬車の座席に戻ると、そこでいつの間にやら目を覚ましていたらしいルローラちゃんと目が合いました。

 すでに三歳くらいにまで成長している彼女は、やや呆れたような目をしながら薄く笑い、


「……今は赤ん坊だからまだ良いけど、あと十年もしたらアンタを巡ってヒドい争いが起きそうだねぇ」


 ええっと……? それってどういう意味なのでしょうか?


 意味深な言葉を残して再び眠ってしまったルローラちゃんに、私はわけも分からず首を傾げるのでした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ