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神童セフィリアの下剋上プログラム  作者: 足高たかみ
第一章 【アルヒー村】
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0歳6ヶ月 1 ―――セフィリアの野望



 日本に比べて圧倒的に衛生環境の劣悪なこの村において、最も気をつけなければならないのは『病気』です。

 栄養のある食事や清潔な環境、風邪薬などが存在しないこの村で病気になってしまえば、下手をするとそのまま死んでしまいかねません。

 前世においても、発展途上国における乳幼児の病死率は恐ろしいものだと聞きますし。


 そのため私は体調管理にとても気を配るようにしていました。

 迂闊なものには手を触れないようにしたり、体を冷やさないようにしたり。

 眠くはなくても体力を消耗しないために眠っておいたり、体が低栄養状態にならないよう頻繁におっぱいをしゃぶったり。


 おかげで私は生後六ヶ月を迎えた段階で、この劣悪な環境において一度も体調を崩すことなく生活できています。


 しかしながら、同時に焦りも感じていました。

 赤ん坊の時期にできることなどたかが知れていますし、あまり不自然な行動をして目をつけられるのはよくありません。

 かといって、いつまでもこの何もない村に留まっていては、『神童としての余命』を悪戯に浪費するだけとなってしまいます。


 どこかの街で学校に通うなんてことはまず不可能でしょうが、それでもせめて、文字の読み書きくらいはできるようになっておきたいのですが……それも正直、現実的とは言えません。

 何をするにもお金(さきだつもの)は必要です。しかし、この村にはそれが全くないのですから。


 このままでは、ロクな教育を受けることもなく無為に歳だけを重ねて、いずれ徴兵されて使い捨ての兵士として消費されるのがオチでしょう。

 せっかくの知識アドバンテージを一切役立てることなく『(ただ)の人』として生涯を終えるだなんて、まっぴらごめんです……!


 できれば私は、不労所得で悠々と暮らしていきたいのです。

 なにせ、前世での死因は“過労死”です。

 働きたくないでござる! 絶対に働きたくないでござる!


 私の野望を叶えるのに最も手っ取り早い方法は……貴族に列せられることでしょうか。

 たしか国家への貢献度が高いと判断されれば、爵位が与えられると前世で聞いたような気がします。

 爵位が与えられただけで無条件にお金持ち、ということはないでしょうが、私には先進的な知識と技術があります。

 わずかにでも元手を手に入れられれば、そこから登り詰めていくことも夢ではないと思うのです。


 問題があるとすれば、貴族には積極的な従軍義務があるということでしょうか。

 ……それではやはり、兵士として勲功を挙げなければならないじゃないですかー、やだー。


 私はごろんと床に転がって、大きなため息を吐きました。


 ああ、なんて世知辛い。

 普通はこういう転生をしたら、超常能力(チート)を得てドカーンバコーンと世界トップの地位に躍り出るものではないのですか?

 いろいろと試してはいるものの、悲しいことに、そういった能力なんてものは欠片も得てはいないようです。

 知識の引継ぎに関しても、別に兵器を開発できるほどのものではありませんから、そこまで大きなアドバンテージとは言えませんし。


 お金……そう、どうにかしてお金を手に入れる方法はないものでしょうか?


 そんな風に、健全で一般的な生後六ヶ月の赤ん坊として、楽なお金の稼ぎ方に頭を悩ませていた時のことでした。

 私は、私の人生を大きく左右する、ある情報を耳にするのです。


「そういえば、帝都に魔導師様(・・・・)がお越しになるみたいよ」


 ……魔導師様?



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[良い点] 魅力的に引き込まれる一人称文体。
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