0歳10ヵ月 8 ―――勇者セフィリア
//最近気が付いたのですが、スマホでは呪文の一部が表示されないんですね……
//なんとなく雰囲気で、ふわっと読んでいただければ幸いです。
私の接近に一番早く気が付いたのは、盗賊たちの中で一番若い痩せぎすの男でした。
小さい身体でちょこちょこ近づく私を見たそいつは、思わず吹き出すように笑って、それからこちらへと近づいてきました。
ちなみにこのタイミングで、ネルヴィアさんは私の存在に気が付いたみたいです。
「よぉ、どうしたぁ? もしかしてママをヤられちまったかぁ?」
私の目の前でヤンキー座りになって顔を近づける痩せぎす男は、どうやら私が血まみれである理由を勘違いしたようでした。
普通に考えれば正しい想像ですが、こちとら生まれついての転生者です。
私はちょうど目の前にあった盗賊の膝に手を触れて、ニヤリと笑います。
ฎธๅ 凍って動くな╞ ข๏ฎค ╡
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ใฉธค ฎธๅ ¢๏ำคƂ
¢๏ำค•ๅ€๓ฦ ฿ ¢๏ำค•ๅ€๓ฦ ∸ Î₀₀Ƃ
โ€ๅษโธ ¢๏ำคƂ
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整数支配の魔法を生成し「凍って動くな」と命名せよ ╞ 何も受け取らない ╡
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我が手に触れし対象へ、整数値と「¢๏ำค」という名を与えよ。
「¢๏ำค」の温度メンバから100を減算し、減算後の値を「¢๏ำค」の温度メンバへと代入せよ。
処理後の「¢๏ำค」を返却せよ。
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「『凍って動くな』」
瞬間的に温度をマイナス六十℃くらいまで下げられた盗賊の膝は、「パキッ」という小気味良い音と共に真っ白に染まりました。
それを見て何が起こったのかわからず混乱している盗賊をよそ目に、私はもう片方の膝も凍結させます。
これで、もう歩けないね。
膝が凍結したせいで足首に力を入れられなくなった盗賊は、そのままゴロンと後ろに転がりました。
他の盗賊たちはそれを見て、何をやっているんだとゲラゲラ笑っていましたが……「膝が動かねぇ!!」と悲鳴をあげる痩せぎす盗賊の様子に、ちょっと異常を感じ始めたようです。
あんまり動かすと、膝が取れちゃうんだけどなぁ……。
私が地面に手を伸ばしている間に、背の高い盗賊が近づいてきました。
「お、おい、どうした? 膝がどうしたって?」
「だ、だから、膝が冷たくなって―――」
「おじちゃん。これあげる」
私は背の高い盗賊に向けて、満面の笑みで手を差し出しました。
盗賊は目を丸くさせつつ、私の手に乗っているものに顔を近づけます。
それが“土と砂利”だと気が付いたらしい盗賊が眉を顰めるのと同時に、私は笑みを消しました。
ฎธๅ 手乗り地雷╞ ข๏ฎค ╡
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ใฉธค ฎธๅ ญฉธคƂ
ญฉธค ฿ ญฉธค ∺ σ₀₀₀Ƃ
ญฉธค•๏โฎ€ธๅ ฿ ๏โฎ€ธๅ╞₀ͺ ₀╡Ƃ
ญฉธค•╘๏¢ษญ ฿ ╘๏¢ษญ╞¢╡Ƃ
โ€ๅษโธ ญฉธคƂ
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整数支配の魔法を生成し「手乗り地雷」と命名せよ ╞ 何も受け取らない ╡
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我が手に触れし対象へ、整数値と「ญฉธค」という名を与えよ。
「ญฉธค」の物質量へ5000を乗算し、乗算後の値を「ญฉธค」へと代入せよ。
物質量の乗算方位はデフォルトとし、「ญฉธค」の方位メンバへと代入せよ。
絞り値は4とし、「ญฉธค」の絞り値メンバへと代入せよ。
処理後の「ญฉธค」を返却せよ。
╢
「『手乗り地雷』」
私の手を中心に「ドボンッ!!」という爆音が響き渡り、背の高い盗賊が一瞬で姿を消しました。
見れば、まるで蹴られた空き缶のように何度も回転しながら宙を舞い、通りの反対側にある建物の屋根に直撃。そのまま屋根に穴を開けて、家の中へと落下していきました。
多分、顔面が無残なことになってしまっていると思うので、人の目に触れない場所に落っこちたのはナイスです。
その場にいた全員があんぐりと口を大きく開けて、屋根の空いた建物へ視線を集中させていました。
そして、ゆっくりと、その惨事の元凶である私へ、視線が集中します。
私はパンパンと手に付いた土を払いながら、残る二人の盗賊へと手のひらを向けました。
それだけで盗賊たちは「ひっ!?」とか「うわぁ!!」とか悲鳴をあげながらのけぞっています。
「おめぇら! そいつから離れろォ!!」
盗賊団のリーダーと思しき熊男が野太い声で叫びました。
その指示を聞いて、私はうっかり吹き出してしまいそうになります。
魔術師相手に距離を取って、どうするんですか?
ฎธๅ 熱狂の渦╞ ข๏ฎค ╡
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ใฉธค ฎธๅ ใ€ฉๅƂ
ใ€ฉๅ•ๅ€๓ฦ ฿ ใ€ฉๅ•ๅ€๓ฦ - Î₀₀Ƃ
ใ€ฉๅ ฿ ใ€ฉๅ - σ₀₀₀Ƃ
ใ€ฉๅ•๏โฎ€ธๅ ฿ ๏โฎ€ธๅ╞₀ͺ ₀╡Ƃ
ใ€ฉๅ•╘๏¢ษญ ฿ ╘๏¢ษญ╞¢╡Ƃ
โ€ๅษโธ ใ€ฉๅƂ
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整数支配の魔法を生成し「熱狂の渦」と命名せよ ╞ 何も受け取らない ╡
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我が手に触れし対象へ、整数値と「ใ€ฉๅ」という名を与えよ。
「ใ€ฉๅ」の温度メンバへ100を加算し、加算後の値を「ใ€ฉๅ」の温度メンバへと代入せよ。
「ใ€ฉๅ」の物質量へ5000を加算し、加算後の値を「ใ€ฉๅ」へと代入せよ。
物質量の加算方位はデフォルトとし、「ใ€ฉๅ」の方位メンバへと代入せよ。
絞り値は4とし、「ใ€ฉๅ」の絞り値メンバへと代入せよ。
処理後の「ใ€ฉๅ」を返却せよ。
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「『熱狂の渦』」
私の手のひらから放たれた“見えない炎”が、逃げようとした盗賊の片方へと直撃します。
隣にいた盗賊が「熱っちぃ!?」とか叫びながらギリギリでかわしましたが、そっちはそもそも狙ってもいませんでしたし、別にどうでもいいです。
木の葉や塵を焼きながら迫る、百二十℃にまで熱せられた空気を浴びた盗賊が、夢に出てきそうな絶叫を上げていました。
おそらく、ただの突風かと思って踏ん張ったのでしょうが……おかげで前半身だけでなく、眼球と喉が焼けてしまっているはずです。下手をすれば、肺にまで火傷が及んでいるかもしれません。
身にまとっていたボロ布からも出火していましたが、そんなことも気にならないくらいの激痛が、呼吸のたびに襲いかかっていることでしょう。
さて、もう一人掃除しておくかな。
この世の終わりみたいな悲鳴をあげながら私に背中を向けて逃げ出している盗賊へ、手のひらを向けます。
完全に熊男の指示は裏目でしたね。
あんなの、ただの的ですよ。
ฎธๅ 風の槍╞ ข๏ฎค ╡
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ใฉธค ฎธๅ ฬฎธคƂ
ฬฎธค ฿ ฬฎธค ∺ Î₀₀₀₀Ƃ
ฬฎธค•๏โฎ€ธๅ ฿ ๏โฎ€ธๅ╞₀ͺ ₀╡Ƃ
ฬฎธค•╘๏¢ษญ ฿ ╘๏¢ษญ╞σ•¿╡Ƃ
โ€ๅษโธ ฬฎธคƂ
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整数支配の魔法を生成し「風の槍」と命名せよ ╞ 何も受け取らない ╡
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我が手に触れし対象へ、整数値と「ฬฎธค」という名を与えよ。
「ฬฎธค」の物質量へ10000を乗算し、乗算後の値を「ฬฎธค」へと代入せよ。
物質量の乗算方位はデフォルトとし、「ฬฎธค」の方位メンバへと代入せよ。
絞り値は5.6とし、「ฬฎธค」の絞り値メンバへと代入せよ。
処理後の「ฬฎธค」を返却せよ。
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「『風の槍』」
二番目に高い絞り値に設定された空気の奔流は、轟音を響かせながら盗賊へ一直線に迫ります。
まるでトラックに撥ねられたみたいに吹っ飛んだ盗賊は、さながら川面の水切りみたいに何度も何度もバウンドしながら、遠くの木に直撃して動かなくなりました。
静まり返る村のみんなと、青ざめる熊男。そして今にも死にそうな呻き声をあげる盗賊たち。
私はネルヴィアさんの方を振り向いて、なんとなく、ふと思いついた可能性を試してみることにしました。
「ネルヴィアおねーちゃん。これで、ほんきだせる?」
私の問いに、とても驚いたような表情を浮かべたネルヴィアさんは、すぐに嬉しそうな笑顔を浮かべて立ち上がりました。
ついさっきまで倒れそうだったのに、今では朝起きたばかりみたいな活力にあふれています。
……うわぁ、やっぱり演技だったんだアレ……すっげぇ。
そんなネルヴィアさんの豹変に驚く熊男が、とっさに肉厚の剣を振りかざしますが……
ネルヴィアさんはその攻撃を弾くどころか余裕でかわし、剣を握っている腕を斬りつけ、さらに返す刀で太ももの裏側を斬り裂きました。
盗賊の手放した剣はあっけなく地面を転がり、盗賊は叫び声をあげながらその場に倒れ込みます。
つ、強っ……!?
ふぅ、と一息ついたネルヴィアさんは剣を納めると、まだちょっと緊張の抜けていない顔で私に駆け寄って来て、私の目の前に跪きました。
「セフィ様。助けていただき、ありがとうございます」
「えっ……あ、うん。おねーちゃんも、みんなをまもってくれて、ありがとう」
ちょっと助けなくても良かったんじゃないかなぁ、とか思い始めてるくらいですしね……
でも、そっか……もしもネルヴィアさんが盗賊の一人を圧倒しちゃったら、他の盗賊たちは勝ち目がないと踏んで、近くの人間を人質に取るでしょう。
そうなれば完全に身動きが取れなくなってしまいますから、そうならないように弱いふりをして熊男に一騎打ちを挑むことで、状況が好転するまでの時間稼ぎに徹していたのでしょう。
リーダーである熊男が戦っている間に部下たちが好き勝手はできませんし、もしそうなったとしても、即座にリーダーを無力化して指揮系統を粉砕すれば部下たちにも隙が生まれます。
そこを一か八か叩く算段だった、といったところでしょうか。
襲撃された一瞬で、そこまで考えて動けるなんて……いえ、ネルヴィアさんの性格を考えるに、この村に来ることが決まった時点から、ありとあらゆる状況を想定して計画を練っていたのでしょう。
何度止めてもやめなかった深夜の見回りも、今回の襲撃による被害が最小限に収まった原因ですし。
ネルヴィアさんの正確無比な判断力と計画性、それからバシュハル村長の勇敢さが、この戦いの勝因と言えましょう。
一方で私は、のんきに寝ていたうえに、あんな雑魚を甚振っていたせいで駆けつけるのが遅れてしまって……もう、ほんとに恥ずかしいです。
一体これのどこが勇者なのか。ノリで勇者を自称したけど恥ずかしくて取り消したいです。
でも、これでようやく一件落着―――
「うおぉぉおぉぉぉおぉおおおッ!!!」
野太い絶叫が響きました。
ネルヴィアさんの背後……さきほどまで倒れていた熊男が、懐から取り出したナイフを振りかざして、こちらへ駆けてきていました。足をあんなに斬られて、まだ動けるの……!?
ネルヴィアさんは後ろを振り返るまでのタイムラグで、一瞬反応が遅れています。
納刀してしまっている剣の柄に手をかけますが、タイミングはギリギリ……
そして私も、ネルヴィアさんが射線上にいて魔法が―――
いえ、まだ方法はある……!
ฎธๅ 目玉焼き╞ ข๏ฎค ╡
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ใฉธค ฎธๅ ญใฎธ€Ƃ
ญใฎธ€ ฿ ญใฎธ€ - ÎƂ
ญใฎธ€ ฿ ญใฎธ€ ∺ Î₀₀Ƃ
ญใฎธ€•๏โฎ€ธๅ ฿ ๏โฎ€ธๅ╞₀ͺ ₀╡Ƃ
ญใฎธ€•╘๏¢ษญ ฿ ╘๏¢ษญ╞σ•¿╡Ƃ
โ€ๅษโธ ญใฎธ€Ƃ
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整数支配の魔法を生成し「目玉焼き」と命名せよ ╞ 何も受け取らない ╡
╠
我が手に触れし対象へ、整数値と「ญใฎธ€」という名を与えよ。
「ญใฎธ€」の物質量へ1を加算し、加算後の値を「ญใฎธ€」へと代入せよ。
「ญใฎธ€」の物質量へ100を乗算し、乗算後の値を「ญใฎธ€」へと代入せよ。
物質量の乗算方位はデフォルトとし、「ญใฎธ€」の方位メンバへと代入せよ。
絞り値は5.6とし、「ญใฎธ€」の絞り値メンバへと代入せよ。
処理後の「ญใฎธ€」を返却せよ。
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「『目玉焼き』!!」
私の手に強烈な光が生まれ、ネルヴィアさんと熊男を包みこみます。
しかしネルヴィアさんは私に背中を向けているため、その悪影響を受けたのは熊男のみ。
まともに閃光を受けてしまった熊男は悲鳴をあげながら、苦し紛れにナイフを振り回しますが……まともに振っても当たらないものを、この状況でネルヴィアさんに当てられるわけがありません。
ネルヴィアさんはあっさりとそれらを回避すると、ゆっくりと剣を抜き、そして剣の側面の部分で熊男の後頭部を思いっきり殴打しました。
どさりと倒れ込んだ熊男が今度こそ動き出さないことを確認した私たちは、ホッと顔を見合わせます。
「ありがとうございます、セフィ様。今の閃光で隙が生まれなかったら、多分、殺してしまっていたと思います……」
やられていた、じゃなくて、殺していた、ですか……お強いデスネ。
でも、まぁ、それでもお役に立てたみたいで何よりです。
「あんなやつのために、おねーちゃんがてをよごすことないよ」
私はつい最近言われたばかりの言葉を、ネルヴィアさんに受け売りしました。
するとネルヴィアさんは感極まった様子でじわりと涙を浮かべて、再び私に跪きます。
な、なんか騎士様に跪かれると、すっごく落ち着かないんだけどなぁ……
それから私は、ちょっと恐る恐る村のみんなの表情を窺いました。
仕方なかったとはいえ、こんなに好き放題暴れてしまったのです。私が魔法を使えることを知っていたお兄ちゃんでさえ少し怯えていたのですから、村のみんなには私がどんな怪物に見えているのか……
そんな私の心配は、一斉に私たちへと雪崩れ込んできたみんなの笑顔とか、称賛とか、そういったものに全部吹き散らされてしまいました。
「すごい! やっぱりセフィリアちゃんは勇者様だったのね!」
「ネルヴィア様も、みんなを守ってくださってありがとうございます!」
口々に向けられる称賛に、私は安堵感で泣きそうになってしまいました。
安心したら、魔法の使い過ぎで頭がクラクラしていることに、この時ようやく気が付きました。
二日くらい徹夜で仕事をした後みたいな疲労感です。あんなに魔法を連発してましたもんね……
それから私はバシュハル村長の元へ向かって、ボロボロの身体で涙を流しながら私に跪いている彼の手を握ると、もう大丈夫だと安心させるように、笑いかけます。
その後 村のみんなは、それぞれ瀕死になっている盗賊たちを縛り上げたり、怪我人の手当てをしたりと動き出します。
そして私もメリアーヌさんや大勢の大人たちを引き連れて、私の帰りを待つお母さんとお兄ちゃんの元へと急ぎました。
―――こうして、私たちの長い夜は幕を閉じたのです。
//このお話って、もしかして普通は第一話とかでやるものなのでは……?
//ともあれ、これにて第一章はおしまいです。




