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神童セフィリアの下剋上プログラム  作者: 足高たかみ
第五章 【魔族領】
235/284

2歳2ヶ月 1 ――― 到着



 帝都ベオラントを出立してから数週間。

 ついに私たちの乗った馬車は、魔族領へと到着しました!


 その途中には、数ヶ月ほど前に私が魔法で生み出した、人族領と魔族領の間を区切った断崖絶壁があったりもしました。

 その手前で待機していた獣人族たちと合流した私たちは、その幅一〇〇メートルほどの底が見えない崖に私の魔法で橋を架けて、向こう側の魔族領へと渡ります。


 馬車の窓を開けると、生温い風が吹き込んできました。

 ヴェリシオン帝国は寒暖の差が穏やかで四季がないため、前世の夏のように暖かい空気を感じることは滅多にありません。

 ちなみに私は以前、獣人族の里を訪れた時に一度だけ魔族領は訪れています。しかし、あの時はそんなこと考えてる余裕なんてありませんでしたから、改めてこの気候に驚いてしまいました。


「まぞくりょうって、あったかいんだね」

「ええ。魔族領は気候の変化や、昼夜における寒暖の差が激しいと聞きます。体調を崩されませんよう、皆様お気を付けください」


 漆黒の執事であるロヴェロさんが、私の漏らした感想に補足説明をしてくれました。

 たしかに平原や川の多い人族領に比べて、魔族領は枯れた大地や山岳地帯が多いようです。山の天気は変わりやすいらしいですし、水気がない砂漠とかは寒暖の差が激しいと、どこかで聞いたことがあるような気がします。


 ふと隣のレジィに視線をやれば、帽子の上からでもわかるくらい耳がぴょこぴょこしていました。どうやら久しぶりに故郷へ帰って来られて嬉しいみたいですね。

 馬車の周りを並走している獣人たちも、いつもより少しテンションが高いように見えます。


「ここが、レジィたちのうまれそだったところなんだよね」

「あ、ああ……」


 私がそう言うと、レジィはくすぐったそうに目を細めながら不器用にはにかんでいます。

 対照的に、魔族領が初めてなネルヴィアさんたちは、興味深げに窓の外へ目を向けていました。


 しばらく進んで崖から離れたところで、とりあえず馬車から降りた私は、さっき拾った獣人族の子たちに声をかけておくことにしました。


「みんな、おつかれさま。またせちゃってごめんね」


 私一人だったら魔法でひとっ飛びでも良かったのですが、今回は随伴の人たちがいます。

 そのため別行動の獣人たちには、先に魔族領の手前で待っていてもらったのです。


 久しぶりに会った獣人のみんなは、私を見るなり一斉に跪いてきました。

 しかもその視線にいつもより熱がこもっていて、私がなんだなんだと驚いているうちに、先頭で同じく膝をついていた重装甲冑の塊……もとい現・族長のアイルゥちゃんが、くぐもった声を響かせました。


「我らが前族長の仇を討つため、声をかけてくれて……そして、わざわざ貴殿が出向いてくれたことに感謝する」


 そう言って、内側から二本のツノが突き破っている兜を外したアイルゥちゃんは、その下に隠れていた幼い顔を露わにしました。

 見た目小学生くらいのあどけない青灰色のお顔は、とても真摯に私を見つめています。


「うん。さっさとみつけて、ぶっとばしちゃおう!」


 なんだか堅苦しい雰囲気が居心地悪かった私は、なるべく空気を弛緩させようと軽めの口調で応じました。


 不殺の誓いを立てているため、私が直接手を下して敵を処刑するようなことはありませんが……同時に、彼女たちがすることに口を出すつもりもありません。

 魔族領に私が命じた『十戒』によって争いは厳禁と定めているものの、そいつが今後騒動の種になりそうな場合には、私たちが排除に動くことは矛盾しないはずです。

 もしも綺麗さっぱり心を入れ替えていたら少しは考えますが、まずその可能性はないと思いますしね。


「リュミーフォートさん。そういうわけで、まずは獣人族の里にむかってもいいですか?」


 今回の征伐隊のリーダーは私ということになっていますが、一応同格の魔導師であるリュミーフォートさんに了承を得ようと訊ねました。

 すると馬車の窓を開けてこちらを見ていた彼女は、「ん」と短く返事をして頷きます。


「よし。じゃあ、まずは獣人族の里で、てがかりをさがそっか!」


 それから私たちは一路、この近くにある獣人族の里へと向かったのでした。



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