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神童セフィリアの下剋上プログラム  作者: 足高たかみ
第四章 【帝都魔術学園】
228/284

2歳1ヶ月 1 ――― セフィリア・ベオラント


 私がこの世界に生を受けて、今日で二年……

 私は無事に、二歳の誕生日を迎えることができました!


 そして今日は私の生徒たちが“魔術師”として正式に認められた、記念すべき日となりました!

 一週間前くらいからベオラント城付きのメイドさんたちが採寸したり布合わせしたりいろいろしてくれたおかげで、四人ともバッチリ盛装しちゃってます。


「みんなかわいい! かわいいよぉ~!」


 約一名の例外(プリンセス)を除いて、三人ともガチガチに緊張しているようです。そりゃあヴェリシオン帝国の皇帝陛下がおわすベオラント城で、自分たちを主役にした式が催されるというのですからね。“元”平民の三人には、さぞや胃が痛いことでしょう。

 お兄ちゃんは深紅(ワインレッド)の、メルシアくん落ち着いた濃紺(ネイビー)のタキシードを身に纏っています。どちらも下品にならない程度に金装飾が随所に光っていて、とっても立派です。

 リスタレットちゃんは可愛らしい花弁を思わせるようなライトイエローの、ヴィクーニャちゃんは妖艶さを纏う漆黒のドレスに身を包んでいます。薄くお化粧を施した二人は本当に綺麗で、思わず見とれちゃいました。


「だ、大丈夫かな? セフィ、オレ変なとこないか?」

「だいちょうぶ、せかいでいちばんかっこいいよ! ……もしヘンなところがあったって、だれも逆鱗卿(わたし)のおにーちゃんをワルく言ったりしないし」

「それは変なところがあるってことか!?」


 誰から見ても明白に変なところがあるとすれば、それはこんな小さい子供たちが魔術師になるってことだよ。


 私はナイーブになっちゃってるお兄ちゃんを落ち着かせてから、彼らを謁見の間へと送り出しました。

 緊張でぎこちない歩き方になっている三人がとても心配でしたが、ちらりと目配せをしたヴィクーニャちゃんが「任せなさい」とばかりに笑みを浮かべたので、安心して彼らを見送ることができました。

 大公女殿下のフォローもあってか、四人の叙爵式は無事何事もなく終えることができたようです。


 四人が魔術師様に……ひいては男爵位(約一名(プリンセス)を除く)を下賜(かし)されてから、続いて私の番です。

 もはやお城には通い慣れた私は、堂々としたものでしょう。謁見の間に姿を現した私に、居並ぶ臣下の皆さんは好意的な視線を向けてくれます。一年前とは大違いですね。


「『逆鱗(シャータン)』のセフィリア、さんじょういたしました」

「うむ」


 絢爛豪華な赤絨毯を進んで跪いた私を、ヴェルハザード陛下はとても穏やかな微笑みで迎えてくれました。いつもは厳かな相好を崩さない陛下の嬉しそうな様子に、壁際で立ち並ぶ兵士さんたちが俄かにざわつきます。私もちょっとびっくりしました。

 しかし視界の端でこちらを見守っている魔導師様たちは、動揺もなく陛下と同じような微笑を浮かべていましたけど。


 生徒たち四人が後ろに控えている中でゆるやかに立ち上がった私へ、陛下はやはり上機嫌に口を開きました。


「余の命に応じ、半年余りというわずかな期間において、四人もの幼い生徒たちを魔術師に育て上げたそなたの手腕は類稀なるものである」


 いやまぁ、生徒のみんなが魔法を使えるようになったのは、あの子たちが優秀だったからですけどね。


「また、そなたの献身的な働きによって、戦争の終結が大いに早まったことは、多くの民の知るところである」


 うーん、戦争が終わったのは、エクスリアとネメシィのおかげですけどね。


「……と、このように言っても、そなたが“べつに自分の功績ではない”と考えることは想像に難くはない」


 あれ、バレてる!? 陛下、いつから心が読めるように!?


 思いっきり飛び上がってしまった私の反応に、周囲からポツポツと溜め息が聞こえてきました。

 なんだよ、言いたいことがあるなら言いなよっ! こら生徒たち! 先生をそんな目で見ないで!


 なぜか頭痛を堪えるように額を撫でていた陛下は、けれどもすぐに気を取り直して私と向き合いました。

 その目はとても真剣で、まっすぐで……


「しかしこれらは間違いなく、そなた無くしては果たし得なかったことだ。余はこの帝国を統べる者として、そなたに心よりの感謝と敬意を表する。大儀であった、セフィリア」


 立場上 頭を下げることのできない陛下は、しかしそれでもその言葉に、すべての心情を込めようとしているかのようでした。

 いつもは見る者の背筋を正させる迫力のある金色の瞳は、今は慈愛の色に満ちています。


「よって今日までの功績を称え、セフィリア……貴様に『魔導師』の称号と『公爵』の位階、それに伴い『直轄領』と、『ベオラント姓』を授ける。受け取るが良い」

「……え? あ、はいっ!」


 直轄領? 直轄領ってなに? 初耳なんですけど。

 そんな私の疑問を先回りするかのように、陛下が口を開きました。


「詳しいことは、後ほど改めて説明するとしよう。午後からのパーティに備え、下がって休むがよい―――セフィリア・ベオラントよ」

「!」


 ベオラント姓……かぁ。今まであんまり気にしてませんでしたけど、私って平民の生まれですから苗字(ファミリーネーム)ってものがないんですよね。

 そっかぁ……これからは私、『セフィリア・ベオラント』って名乗るんだ……


 どことなく嬉しそうな陛下に深く一礼してから、私は生徒の皆さんを引き連れて謁見の間を後にしました。


 その最中でヴィクーニャちゃんが、いつもの余裕ぶった表情を不機嫌そうに歪めつつ、


「……まったく、デレデレしちゃって」


 なんて呟きながら、盛大な溜息をついていたのが印象的でした。



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神童セフィリアの下剋上プログラムの連載が、ついに1周年になっちゃいました・・・!

ここまでご覧いただいている皆さま、ありがとうございます!

今度ともよろしくお願い致します! m(__)m

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