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神童セフィリアの下剋上プログラム  作者: 足高たかみ
第一章 【アルヒー村】
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0歳9ヵ月 6



 昼食を終えたお母さんとネルヴィアさんが村のお仕事へ行っている間、私は久しぶりにお兄ちゃんと二人っきりになりました。

 私が村のみんなにハブられてた時は構ってくれたのに、それがなくなった途端にお兄ちゃんはまた素っ気なくなっちゃったので、私はずっとこういう機会を待っていたのです。


 私はここぞとばかりにお兄ちゃんへ擦り寄って、エンジェルスマイルで話しかけました。


「おにーちゃん、いつもはみんなと、なにしてあそんでるの?」

「え? あー、うん……べつに、たいしたことはしてないけど」


 お兄ちゃんは私の質問に目を逸らすと、なんとなく要領を得ない答えを返してきました。

 その返答に、私は衝撃を受けます。




 お……お兄ちゃんに、隠し事された……




 私は「へ、へぇ……そうなんだぁ……」と何でもない風を装いながら、動揺を悟られまいと顔を背けました。


 その瞬間、私の脳裏に忌まわしい前世の記憶が蘇りました。

 誰にも必要とされず、愛されず、助けてもらえず、独り寂しく過労死して終わった生涯。


 私、お兄ちゃんに何かしちゃったかな……? もしかして、何か、怒ってる?

 ……家族に……嫌われた?


 い、いやいや! べつに家族だからって、兄弟だからって、何でもかんでも教えるって事はないですよね!

 それに、お兄ちゃんが何して遊んでるかなんて、そこまで知りたいわけじゃありませんし?

 ちょっとした話題提供の一環として、何気なく聞いてみただけですし。

 私にだって、お兄ちゃんに秘密にしていることの一個や二個や百個、あるわけですし。

 だから別に、全然、まったく、気にするような……ことじゃ……


「わ、わかったよ! おしえるよ! だからそんな顔するなよ!!」


 お兄ちゃんはそう言うと、私の頭を優しく撫でてくれました。

 あれ、怒ってない……? 私のこと、嫌いじゃない?


「えへ、えへへ……やったぁ」


 私は家族を疑ってしまったことをちょっぴり反省しながら、喜びのあまり破顔します。


 するとお兄ちゃんは、「やっぱりセフィはかーちゃん似だな……」とか呟きながら溜息を吐きました。

 え、それどういう意味ですか? 私、あんなめんどくさくないですよ?


 というか、べつにそんな酷い表情してたつもりはないんですけどね。

 いや、じつはお兄ちゃんも私に教えたかったに違いありません。きっとそうなのです。

 まったく素直じゃないなぁ、お兄ちゃんめ。このこのぉ。


 お兄ちゃんはもう一度 深々と溜息を吐くと、ちょっと照れくさそうに顔を背けて、小さな声で言いました。


「……ちゃんばらごっこ、だよ」

「ちゃんばら?」


 ちゃんばらって、棒とかで叩き合うアレのことですか?

 この世界では、そういうのが子供の遊びの主流なんでしょうか。鬼ごっことかかくれんぼの方が、楽しそうですけどね。


 私が不思議そうにお兄ちゃんの横顔を見ていると、お兄ちゃんは私の顔をチラッと窺って、


「……セフィが、まほうなんてつかうから……」


 魔法? 私が魔法を使うから?

 一瞬、お兄ちゃんが何を言っているのかわかりませんでしたが、しかしすぐにピンときました。


 お兄ちゃんは、私に魔術師になってほしくないのです。

 なぜなら、魔術師になれば未成年でも戦争に駆り出されることがあるらしいから。

 お兄ちゃんは、私やお母さんを守るということをお父さんと約束しています。

 そしてお父さんは、私たちが成人する前に戦争を終わらせると言っていますが、どうなるかはわかりません。

 だからお兄ちゃんは、ゆくゆくは兵士として戦うことも視野に入れているのでしょう。

 その時には私も戦場に行くことになっているかもしれません。


 だから、お父さんとの約束を守るために、戦場でも私を守れるだけの力を身につけておく……っていうこと?


 そう言えば、お兄ちゃんが外で遊ぶようになったのって、ちょうど一ヶ月くらい前……

 それって、私が魔法を初めて使った時期じゃ……


 ふ~ん?


 へぇ~?


「な、なんだよその顔は! にやにやするなよ! 言いたいことがあるなら言えよっ!」

「おっっっ、に~~~っ、ちゃぁぁぁぁぁん!!」


 私は歓喜を抑えきれずに声を張り上げると、そのままお兄ちゃんの胸にダイブしました。

 お兄ちゃんは「お、おい、はなせバカ!」とか言ってますけど、もちろん聞く耳は持ちません。


 ごめんねお兄ちゃん! 一瞬でも家族の絆を疑っちゃってごめんなさい!

 私もお兄ちゃんを守れるように頑張るよ! だからいつか私の騎士になってね!!


 その後、私たちの様子を見にお母さんが帰ってくるまで、私はずっとお兄ちゃんにまとわりついていました。

 お兄ちゃんはちょっと死んだ目でぐったりしていましたけど、喜んでいたに違いありません。


 それと、そんな私たちの仲睦まじい様子を見たお母さんは、ほっぺたを膨らませていました。

 ……あれ? 私の周りにああいうタイプの人はいないはずなんですけど、なんとなく既視感が……?

 どこで見たのかな? すごく身近なところのような気がするんですけど……

 あれ、お兄ちゃん? なにその目は? どうして私を見てるの?



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