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神童セフィリアの下剋上プログラム  作者: 足高たかみ
第一章 【アルヒー村】
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0歳9ヶ月 1



 どうやらこの辺りの地域に四季というものはないらしく、寒暖の差も小さいようです。

 私が生まれてから九ヶ月ほどが経っているのに、一向に夏や冬か来ないのでおかしいとは思っていたのですが、お兄ちゃんからその説明を聞いて納得しました。


 でも最近は、気持ち涼しめになってきたような気がします。

 いつもの服の上からもう一枚羽織って、現在 私は近所のお姉ちゃんたちとおままごとをしていました。


 そう、『お兄ちゃん失踪事件』以来、私はなんだか村の人たちにハブられていたのですが、ついにそれが解消されたのです!


 元凶は、バシュハル村長でした。


 私がお兄ちゃんを捜すために乳児のフリをやめた、あの日。

 敬虔な「勇者教」の信徒である村長は舞い上がって、各家の長を集めて会合を開いたらしいのです。

 そしていかに私が勇者としての条件を(ことごと)く満たし、資質に溢れているかをこれでもかと説いて、みんなを洗脳してしまったのだとか。

 特に信心深いお年寄りたちなんかは村長に言われる前から薄々と感じていたことのようで、すぐに私が勇者であると信じて疑わなくなってしまいました。


 そして会合に参加した人たちは自分の家族に、あの子は普通とは違う特別な子供だから、気安く接するのは失礼にあたる。それに万が一にでも怪我をさせてしまったら、世界にとっての一大事だ。などとキツく言い含めてしまい、それで私は結果的にハブられることとなったみたいです。


 ……この事をメリアーヌさんにこっそり教えてもらった時、私はすぐに立ち上がって村長の家を訪れ、『平和的な話し合い』をしました。

 ええ、それはもう、平和的な話し合い行いました。

 脅迫とか窮追(きゅうつい)なんてものとは無縁の、それはそれは平和的な話し合いでした。

 終始穏やかに、冷静に、感情を荒立てない、平和的な話し合いでした。


 ところで全然話は変わるのですが、最近村長が寝込んでいるらしいです。

 心配ですね。


 さてそんなわけで、私の家には以前と同じようにたくさんの人が訪れるようになったのですが……


「はぁい、セフィちゃん。おっぱいでちゅよー」

「……わ、わーい」


 お母さん役のペリアちゃんが恥ずかしげもなく上着をめくって、胸部を露出しました。

 一応喜んだ感じは出してみたものの、どうするのが正解なのか全くわかりません。

 吸うの? 六歳児のおっぱいを吸えばいいの?


 私が恐る恐るペリアちゃんの顔色を窺うと、ペリアお母さんはニコニコしたまま、私のほっぺに胸の先端を押し当ててきました。

 ……吸うのが正解みたいです。なんて背徳的な構図……。


 私はそれでもしばらく逡巡しゅんじゅんしていましたが、ここで拒否するのもなんだか可哀想で、仕方なく口を開きました。

 そして最近やっと生えてきた前歯に気をつけて、ペリアお母さんのおっぱいの先端を……


 ……咥えようとしたところで、私は背筋に寒いものを感じて、とっさに振り返りました。


 すると私の視線の先には、畑のお手伝いに出かけていたはずのお母さんが、玄関からこちらを血走った眼で覗いていました。ひぃ!

 え、なに? あれはどういう意味の視線なの? どうして私、睨まれてるの?

 まさかお母さん、六歳児に嫉妬してるわけじゃないよね!?


 私がもう一度ペリアちゃんのおっぱいに口を近づけると、


「ああっ……!?」


 小さな声で、悲鳴をあげるお母さん。


 あ、これ完全にやきもち焼いてる! 「私以外の女の乳を吸うなんて!」って視線だ!?

 大人気ないってレベルじゃないよお母さん! 見た目は中学生でも、もうちょっと大人の余裕を持って!?


 結局、ペリアちゃんのおっぱいは吸わずに離れて、私は「おかーさん!」と満面の笑みで呼びかけました。

 するとお母さんは一転して(とろ)けるような笑顔で私に駆け寄ってくると、しこたま頬ずりしながら愛を囁きました。


 それを見ていたペリアちゃんは、ちょっと苦笑しながら「やれやれ」みたいな感じに肩を竦めています。

 お母さん、負けてる!! なにか人間的なところで六歳児に負けてるよ!?



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