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神童セフィリアの下剋上プログラム  作者: 足高たかみ
第三章 【イースベルク共和国】
110/284

1歳3ヶ月 37

/*

アンケートにご協力いただきまして、ありがとうございます!

お寄せいただいたコメントが想定よりずっと多く、戦々恐々としております。。。

((;゜Д゜))


温かいコメントやためになるご指摘、本当にありがとうございました!


アンケートの結果に基づき、セフィの年齢問題につきましては、現状のままで書き進めて、ひとまず完結を目指すということでよろしくお願いいたします!


皆様、ご協力本当にありがとうございました!!m(__)m

*/



 あれから私たちはリルルの黒歴史を聞きながら、和気藹々(わきあいあい)とした夕食を終えました。

 そしてその後は解散ということで、真っ白に燃え尽きたリルルを見送った私たちは宿へと戻ります。


 ちなみにネルヴィアさんが壊した湯呑みやレジィが引っ掻いたテーブルは、店員さんに謝ったら許してもらえました。一応、テーブルの傷は魔法を使い、薄く表面を削ってならすことで見えなくしましたけど……

 この国のドラゴン退治に協力するので、これで勘弁してください。


 と、そういったわけで私たちは現在、借りている宿へと戻ってきました。

 今夜はルローラちゃんとリルルで一緒に過ごすかと訊ねたのですが、リルルが断固拒否したので今日も仲良く五人部屋です。

 まぁルローラちゃんには今夜中に聞いておきたいこともあったので、好都合ですが。


 さてどの話から始めようかと私が考えていると、ベッドの上で私を抱いているネルヴィアさんが、ちょっと浮かない顔で口を開きました。


「セフィ様……あのリルルという女は、セフィ様を陥れたり痛めつけたりしたのですよね?」

『あ、うん。いろいろ危害は加えられたね』

「それなのに、あの女に協力するのですか? ……あっ、いえ、セフィ様の決定に異を唱えるわけではないのですが……!」

『ううん、気にしなくていいよ。たしかにそう思うのも仕方ないことだし』


 あわあわしちゃってるネルヴィアさんに私は微笑みかけて、


『でもね、おねーちゃん。私はリルルに協力するんじゃないんだよ?』

「え?」

『私は、妹想いのルローラちゃんに協力するんだよ。……それに、この一件を放っておいたら、たくさんの人が死んじゃうかもしれないしね』


 本当はトーレットの時みたいに、うちの子たちの安全を優先したいという気持ちはあります。正直この一件は私にあまり関係ありませんしね。

 しかしくだんのドラゴンを野放しにしておけば、いずれ帝国を襲い始めることだってあるかもしれません。そうなればいつか、うちの村が危険に晒される事も考えられなくはないのです。


 私が万全の状態であればそれが最善なのですが……首輪を外そうと共和国の首都に行っている間に、勇者様やリルル、共和国の兵隊さんたちが惨殺されてしまえば、その後さらなる規模の大被害へと発展してしまうかもしれません。

 もしそうなってしまったら、きっと優しいネルヴィアさんはここで動かなかったことを、これから先ずっと後悔し続けると思います。それにケイリスくんも酷く悲しむに違いありませんし、何よりルローラちゃんの受ける心の傷は計り知れないものとなることでしょう。


 たしかにドラゴンは危険です。できることなら現状の戦力で戦うことは避けたいというのが本音です。

 しかし今回はトーレットの一件とは違い、ある程度は敵の情報を事前に得られるというアドバンテージもあります。

 それでも決して楽観はできませんが……しかし私たちが全員で協力すれば、勝てない相手ではないというのが私の見立てです。


 ……それから私は、リルルの行動に関して少し気になっていたことを、ついでに訊いてしまうことにしました。。


『ねぇ、ルローラちゃん。リルルの“呪い”っていうのは、発動に時間がかかったり、リスクがあったりするのかな?』

「え? んー、発動するには直接相手に触らないといけないみたい。あと、一回発動するだけでもすごく魔力を消耗しちゃうみたいだよ」


 そうなんですか……なるほど、ではそれが理由だったのでしょうか。

 私が目を伏せながら一人で納得していると、ケイリスくんが遠慮がちに口を挟んできました。


「もしかして、リルルさんが“呪い”ではなく“首輪”を使ったことが気になってたんですか?」


 ケイリスくんの言葉に、他の三人が「あっ」と声を上げました。


『うん、そうなんだよ。ルローラちゃんにやったみたいに魔法を封じることもできる能力なのに、どうしてわざわざ共和国から盗んできた首輪を私に使ったのかなって思って』


 私の発した疑問に、ネルヴィアさんは大きく頷きながら「なるほど、確かにそうですね」と言って思案顔になりました。こんなことなら、さっきリルルと別れる前に訊いておけばよかったです。

 考え込むネルヴィアさんの腕の中で、私はもう一つ気になることを挙げます。


『それに、どうして私に目を付けたのかもわからないんだよね。魔導師でもない、ただの魔術師の私なんかを襲ったって、なんにもならないのに』


 私の疑問に、能力の使用で二、三歳くらい縮んだ身体をベッドに横たえたルローラちゃんが答えました。


「それは、ルルーへの嫌がらせだね」

『嫌がらせ?』

「ルルーはゆーしゃ様のことを気に入ってたそうだから、それでリルルはゆーしゃ様を狙ったんでしょ」


 ルルーさんが私を気に入ってた? いや、それは無いと思いますけど……

 しかし少なくともリルルから見たら、そんな風に見えたという事なのでしょう。


 でも“嫌がらせ”って……?


「リルルはさ、昔からルルーが大好きでね。里にいた頃は、いつでもどこでも一緒にいたんだよ。だから里を出てから人族に寝返ったルルーに嫌がらせしてやろうと思ったみたい」


 そ、そんな子供みたいな理由で……!?

 ああ、でも実際リルルって子供っぽかったかも……

 じゃあ、唯一の味方だったルルーさんに裏切られた仕返しとして、私を陥れようとした、と?


「それと呪いじゃなくて首輪を使った理由だけど、それはゆーしゃ様の得体の知れない力に、自分の能力が通じるかが不安だったからっていうのが理由の一つだね」

『……理由の一つ? それ以外にも理由があるの?』

「さっきリルルが、呪いは解除できないって言ってたのを覚えてる?」


 これはさっきの夕食中にリルルが白状した情報です。

 一度発動した呪いを解除することは、リルル自身にもできないとのこと。また、正反対の効果の呪いを重ね掛けして中和できるかどうかも訊いてみましたが、試したことがないのでわからないそうです。


「呪いを自分で解除できないなら、呪いをかけられた相手はリルルをどうするか……。それが、もう一つの理由」

『……なるほどね』


 一般的に、大抵の魔術師が発動した魔法は、眠るか意識を奪われるかすれば解除されることが確認されています。

 となれば、寝ても意識を奪っても解除されなくて、しかしどうしても解除したければ、次にどうするか……、その結末は容易に想像がつきます。

 もしも私に呪いが効いたとして、しかしなんらかの理由で効果が完全に発揮されなかったり、あるいは私に逃げられてしまった場合……リルルはその後一生、背後に怯え続けることになることでしょう。


 なるほど、それなら共和国産の首輪を使えば、私たちはリルルを探すくらいなら共和国を目指します。

 保身という意味ではそれなりに合理的な選択と言えましょう。


 ただ、それならどのみち私に危害を加えた段階で確実に敵を作ることになります。

 そしてそこまでのリスクを抱えてまで私を襲撃したリルルが、私を捕まえた後で何をしようとしていたのか?


 答えは簡単。

 『特に何も考えてなかった』


 ルローラちゃんは寝そべっていた身体を起こすと、普段のマイペースさを感じさせない遠慮がちな上目遣いで私たちを見上げます。


「……今回の一件が終わったら、リルルの身柄は帝都に預けるよ。それで、あの子がしでかしたことを償わせる。だから、お願い……力を貸して」


 消え入るような声でそう言ったルローラちゃんが頭を下げるのを見て、私はネルヴィアさんを振り返りました。


『だってさ、おねーちゃん。どうする?』

「は、はい! えっと、そういうことなら……」


 ネルヴィアさんは恥ずかしそうに俯きながら、ルローラちゃんに微笑みかけました。

 ついでに私たちの隣に座っているレジィの表情を窺うと、彼も小さく頷きます。特に異論はないみたいです。


 そしてケイリスくんを見ると、彼は涼しげな目をルローラちゃんへと向けて、


「それはもちろんいいんですけど、ドラゴンの襲撃と勇者の誕生はどんな経緯だったのかを教えてもらえますか?」


 ケイリスくんの言葉に、ルローラちゃんは愛用のクッションを抱き寄せながら頷きました。



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[気になる点] リルルに甘すぎる、 呪いの首輪をリルルに付け続けるぐらいでないと。
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