1歳3ヶ月 31
_人人人人人人_
> 日間一位 <
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((( ;゜Д゜)))
(゜д゜) バグですか?
応接室か、あるいは談話室のような部屋へたどり着くと、ロンドブルム司教はソファに腰かけて私たちへ着席を促しました。
私たちがそれに従うと、騎士の一人が私たちの後ろへ、もう一人が司教様の後ろへ静かに移動します。
それを見たレジィが軽く鼻で笑っていましたが、お願いだから変なことはしないでね……?
「さて、それではお話を伺いましょうか」
改めて司教様がそう言うと、事前の打ち合わせ通りにケイリスくんが口を開きました。
「勇者様は、現時点で魔法を使えるんですか?」
「ふむ……? なぜそのようなことが気になるのです?」
「勇者様が強いというのは、ボクたちにとって安心できることじゃないですか」
「なるほど、それは確かに」
事前打ち合わせの想定にはなかった司教様の質問返しも、涼しい顔でさらっと受け流すケイリスくん。さすがです。
まぁもしも司教様がこの質問に答えてくれなかったとしても、質問をされた時点でその解答は頭に浮かんでいるでしょうから、あとでルローラちゃんが心を覗けば一発なので問題はないのですが。
ルローラちゃん曰く、彼女の読心能力は考えていることをリアルタイムで読み取るだけではなく、過去に考えていたことを……つまり「思考のログ」を読み取ることができるそうです。
ただしピンポイントで特定の日や時間だけを読み取るといったことはできず、現在から過去に向かって遡るように、本を一ページずつめくるようにしか読み取れないそうですが……
とはいえ特に隠すつもりがないのか、はたまた用意しておいた嘘を吐くつもりなのか、司教様は躊躇いなく質問に答えてくれました。
「間違いなく、そこらの大人の兵士よりはお強いでしょうな」
「魔術師としても強い、ということでしょうか?」
ちょっとした魔法を使えるだけでも、まぁその辺りの兵士よりは強いはずです。
ケイリスくんが質問を重ねたのは、つまり一般兵士と比べるのではなく魔術師と比べて、強いのか弱いのかを教えろということでしょう。抜かりありませんね。
「……それは、どうでしょうか。まだ勇者様の真の実力を見たことのない私には、なんとも」
司教様はやや苦笑しながらそう答えましたが、要するに胸を張って強いと言えるほどの力を示したことは無い、ということでしょうか。
そうなると、広告塔的な勇者である可能性もあるかもしれませんね。いえ、赤ん坊で魔法が使えるのなら十分脅威ではあるのですが。
そして、もう一つ聞いておきたい重要なことがあります。
「それから、もう一つ。勇者様は「魔族を滅ぼすために生まれてきた」と言っていたみたいですけど、好戦的な性格なんですか?」
「好戦的……というものとは、また違うように思いますが。しかし彼女の言葉に偽りがないことは確かでしょうな」
「それは、どうしてですか?」
司教様はケイリスくんの追及に、少しだけ言葉を詰まらせてから、
「……こんなことを、私のような他人に軽々しく吹聴されれば勇者様が不快に思うかもしれませんが……しかし手あたり次第に聞いて回られても困りますので、お答えしましょう。どうか、ここだけの話にしていただけますか?」
「お約束します」
誠意の籠ったケイリスくんの表情に、司教様は少し声のトーンを落としながら、少しだけ間をあけてその事実を教えてくださいました。
「……半月ほど前、人族の村にドラゴンが現れたという話は御存じですかな?」
「ドっ……!?」
思わずケイリスくんが驚きの声を上げるのと同時に、ネルヴィアさんは小さく悲鳴をあげ、レジィやルローラちゃんも目を見開いていました。
……私はと言うと、「へぇ、やっぱりドラゴンもいるんだぁ」くらいの反応でしたが。
けれども同時に、一つ重要なことも思い出さざるを得ないのです。
それは、勇者ちゃんが“孤児院”の出身だということです。
「……まさか」
「ええ。その、まさかです。彼女はその村の、唯一の生き残りなのです」
沈痛な面持ちとなった司教様は、テーブルの表面へと視線を落としました。
なるほど、それなら魔族に対する戦意は旺盛どころか、彼女の生きがいになっていてもおかしくはないでしょう。
ほとんどそれは、あの日の私が『盗賊に負けた』ルートと同じなのですから……気持ちは痛いほどに分かります。




