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神童セフィリアの下剋上プログラム  作者: 足高たかみ
第三章 【イースベルク共和国】
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1歳3ヶ月 30 ―――ロンドブルム司教

た、たくさんのブックマークと評価、ありがとうございます!

おかげさまで日間8位になることができたみたいです! もう思い残すことはありません!



 私は帝国の司教様に知り合いがいますので、司教様がどんな時に一般の人と会うのかは知っていました。

 それはズバリ、『礼拝集会』が行われる時です。つまり、ミサというやつですね。

 これはほぼ年中無休で行われるもので、決まった時間に教義の説明や教典の朗読などを聞くことができたりします。私も一度クルセア司教に連れられて参加したことがありますが、まぁぶっちゃけ退屈でしたね。さすがは典型的な現代日本人。……いえ、私の心がすさんでいるだけでしょうか?


 というわけで、礼拝集会の時間さえわかれば、司教様―――が無理だったとしても、せめて代理の司祭様とか助祭様とかに会えるでしょうから、その人に話を聞ければオッケーです。

 ルローラちゃん曰く、どうせ心を読むのなら、まず訊きたいことを訊いてからが良い、とのことなので、遠くからこっそり心を覗くのではなく正々堂々と対話をしなければなりません。うへぇ、めんどくさい……。

 こんなことなら最初に勇者クリヲトちゃんを見かけた時にでも接触しておけばよかったです。


 そんなこんなで私たち五人は、お昼頃まで時間を潰してから、ルクサディン教会の礼拝堂を訪れていました。昨日のお昼に私たちが勇者クリヲトちゃんを見かけたのは特別ミサだったらしく、今日は同じ時間から通常ミサが行われていました。

 勇者様効果のおかげか、今日のミサは盛況のようです。結構早く着いたつもりだったのですが、座る席がありません。すぐにシスターさんたちが簡素な椅子を持ってきてくれたので立ち見は免れましたが。


 しばらくすると、見るからに高位聖職者っぽい服装に身を包んだお爺ちゃんが教壇に現れました。


「皆様、こんにちは。司教のロンドブルム・シャイキンスです」


 おお、司教様ですか。探す手間が省けて助かりました。

 勇者関連のことを訊くにあたって、最も有用な情報を握っている人物のはずです。

 何かしらの重要な決定が下されるにあたって、彼の耳に入らないということはありえないでしょう。


 彼は穏やかな笑みと声色で、慣れた感じにミサを執り行っていきます。

 ……この教会も例に漏れず『勇者信仰』ですから、教義とかストーリーは私も知っています。だって勇者になるにあたって、クルセア司教に“篭絡四十八手”と一緒に叩きこまれましたからね。

 だから司教様が語ってくださる有難いお話のほとんどは既知のことであって、新鮮味のないことであって、まぁ何が言いたいのかと言えば、正直眠いってことです。

 ミサが始まってから一分でレジィはダウンし、ルローラちゃんに至ってはミサが始まる前からスヤスヤと寝息を立てていました。最悪な聴者だよ……

 せめて私は寝ないように気をつけないと……なんて思っていましたが、よくよく考えてみたら私って客観的に見るとただの赤ん坊なんですよね。いやこれは寝てても誰にも怒られないわ。むしろ泣き喚かないだけ褒められますわ。


 私はちらりと残る二人へ目を向けます。ネルヴィアさんはさすが騎士修道会所属といった真剣さで司教様の言葉に耳を傾けていて、ケイリスくんはいつものように退屈そうな目つきながらも、背筋を正して微動だにせず傾聴しています。


 この二人が真面目に聞いてくれてるんだから、私は寝ててもいいんじゃね? とか思わないでもありませんでしたが、そこはほら、彼らの保護者として、きちんとしたところを見せたいという見栄のために頑張って起きてました。

 ……まぁ、脳内では新たな魔導家電グッズの術式を構築していたので、話はほとんど聞いてませんでしたけどね。


 けれども要所要所で司教様が口にする勇者クリヲトちゃんのお話は、きちんと拾ってはいました。

 鼻息荒く勇者様の誕生を言祝ことほぐ司教様は、果たして本気でそう考えているのか、それともプロパガンダ的に勇者の名前を利用して共和国の士気を高めようとしているのか。


 私の体感時間では二時間ほどが経過すると、ようやく司教様の有難いお説教が終わったみたいです。その間、ちらほらと礼拝堂を出入りする人たちがいくらかいましたが、もしかして私たち五人は外でもっと時間を潰してから、終わる寸前で入ってきても良かったのでは……?

 そんな悲しい結果論を引きずりながらも、司教様が立ち去ってしまわないうちに私たちは動き出しました。ネルヴィアさんがレジィを、ケイリスくんがルローラちゃんを起こすと、私たちはすぐさま司教様の元へと向かいました。


 その途中、いきなり司教様に詰め寄った私たちの前に二人の騎士……おそらくは騎士修道会の騎士であろう人たちが立ちはだかりました。……教会の中ですから大した武装もしていないようですし、していたとしても私たちがその気になったら瞬殺できちゃうんですけど。

 司教様は「下がりなさい」と穏やかな声で二人を制すると、それから深い皺を刻んだ柔和な笑みで私たちの方へと歩いてきます。


「どうされましたかな? 何か不明点でもありましたか?」


 そう訊ねてきた司教様に率先して答えたのは、立て襟と帽子で人相をやや隠したケイリスくんです。


「ええ、いろいろとお訊きしたいことがありまして」

「なるほど、伺いましょう」

「ありがとうございます。でもじつは、もう少し人気のないところでお話ししたいんです。……少し、込み入った話になりそうですから」


 声のトーンを落としてそう囁くケイリスくんに、司教様は少しだけ怪訝そうな表情を浮かべたものの、彼はすぐに優しく微笑むと、


「そうですか、それではどうぞこちらへお越しください」


 あまりにもあっさりと私たちを案内してくれる司教様に少し驚きながらも、私たちは彼に続いて、礼拝堂前方の扉から奥へと続く廊下へと進みました。



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