file.1 転校生
翌朝。
〈目覚ましの音〉
「んー……まだ、6:30か…時間あるしもう少しだけ寝よ…」
姫音は、学校へ行く支度をする時間までまだ余裕があると言って布団をかぶって二度寝した。すると、ドアを叩く音がした。
〈ドアを叩く音〉
「お姉ちゃ~ん、お母さんが起きなさいって言ってるよ~」
「お母さんが?…仕方ないな…今、行く…」
姫音が二度寝をしようとした時、妹の雫が母親に頼まれて知らせに来たのだ。仕方なく姫音は、二度寝を諦めて下に降りる事にした。
「はぁ~ぁ…もう…お母さん。もう少し寝かせてくれてもいいのに…」
「姫音。高2もなって親に甘えるんじゃないの。全く…雫を見習いなさい。」
「そうだよ、お姉ちゃん。雫を見習いなさい!」
「いや…雫、真似しなくていいから…」
「とにかく、姫音。高校生なんだからしっかりしなさい。ほら、早く支度しないと遅刻するわよ。」
「はぁ…分かった。」
姫音は、雫と母親にもっとしっかりしなさいと言われてため息をついて呆れて言う事を聞くしかなかった。数分後…食事を済ませて制服に着替えて2人に一声かけて家を出た。
(7:20…学校着いたら何しよう…挨拶の練習とか…?うーん…)
逢雅 姫音。高校2年生。元鷹峰高校の生徒。真面目で大人しい性格で成績優秀で、学力トップの優等生。噂されるほどの実力者。家庭の事情で引っ越して学校が変わった為、聖隣高校に転校する事になった。裏では意外と甘えん坊な性格らしい。
「やばっ!7時過ぎてる!早く行かないと遅刻する!」
(まだ時間あるし、どこかで時間潰そうかな…)
姫音が時間潰そうと考えてる時、後ろから1人の男の子が焦りながら走ってきた。
「ちょ、そこ!どいて!危ない!」
「え…?」
「ぶつかるからどいて!」
「どいてって、どこ…っ…きゃ!」
「うわっ!」
戸惑っている間に、近くまで来ていて避ける事が出来ずにぶつかってしまった。
「…いてっ…あ…君、大丈夫?」
「あ、うん…大丈…っ……」
返事をしようとした時、姫音は言葉が詰まった。それは、膝を擦りむいて怪我していたのだ。
「怪我してる…俺のせいだ…ごめん…」
「あ…いや…」
「今すぐ運ぶから乗って。」
「乗ってって…え…」
「いいから…っ早く…っ」
「ちょっと待って…っ」
1人の男の子は、姫音の言葉も聞かずおんぶして急いで学校に向かった。40分後…
「北条先生!北条先生いますか?」
「はい?大声出してどうしたの?」
「怪我人がいるので治療をお願いします。」
「じゃあ、ここに座らせて。」
「はい。」
1人の男の子は先生の指示に従って、背負っていた姫音を丸い椅子に下ろして座らせた。
「少し沁みるよ。我慢してね。」
「……っ…い…っ」
「はい。これでよし。もう大丈夫。」
「あ…ありがとうございます。」
「どういたしまして。歩く時は気をつけてね。」
「はい。」
(8:15…あ…先生に挨拶あったんだ…行かないと…)
「あの…私、先生に挨拶行かないといけないからこれで失礼します。」
「え…だったら一緒に…っ」
「1人で大丈夫です。それじゃ。」
姫音は、1人の男の子に挨拶に行くと言ってゆっくりと歩きながら保健室を出て行った。出て来てからすぐ、誰かが声をかけてきた。
「あ、あなたが今日転校してきた逢雅さん?」
「…はい、そうですけど…えっと…」
「あ、ごめんね。私は2-D担任の櫻井 千尋。よろしくね。」
「こちらこそよろしくお願いします。」
キーンコーンカーンコーン…
「あ、もうHRの時間ね。せっかくだから一緒に行こうか。」
「はい。」
姫音は、担任の櫻井先生と教室まで行く事にした。
「後で呼ぶからここで待っててね。」
「分かりました。」
姫音をドアの前で立たせて待たせておいて櫻井先生は教室に入っていった。
「皆、おはよう。今日は転校生を紹介するね。」
「転校生?先生、女子ですか?男子ですか?」
「それは見てからのお楽しみ。入ってどうぞ。」
〈扉を開ける音〉
「鷹峰高校から転校してきた逢雅 姫音です。よろしくお願いします。」
(あ…あの子…)
「えっと…逢雅さんの席は…」
「あー‼思い出したー!君はっ!」
「え……」
聖隣高校に転校してきた姫音…
姫音と出逢った1人の男子生徒は一体誰なのか…
大声出して叫んだ意味とは…