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アフタースクールRPG  作者: 白川
幼馴染と過去
17/22

2


俺の家庭は父と母と俺の3人家族で両親は幼い時から家にいる事が少なく、俺一人で家にいる事が多かった。それは両親が育児よりも仕事を優先させる人間だったからだ。

俺が小学2年生の頃には夜中に帰って来て早朝にはもう2人とも家にはいない状態で、俺はいつも一人で朝の支度し、夕食をコンビニのお弁当ですましていた。


幼い頃から一人でいるせいか俺は人と話すのが苦手になっていた。いや、苦手ではないな、どっちかと言うと本心を言えなくなっていたんだと思う。一人でいるという事を無理に我慢していくうちに、嫌なことや、言いたいことなどの本心が言えなくなっていった。

そのせいで俺は友達ができずにいて……。まあ、そんな俺によく話かけてくれたのが菜々実だったけな。


そんな日々が続き俺は学校に行くことが嫌になって、たまに学校を休むという事があった。


そして、毎朝置かれている無駄に多い食費代を使ってゲームを買い。休んだ日や家にいる時はほとんどゲームに時間を費やす。

その時、特にはまっていたゲームがオンラインゲームだった。

実際に会って話すわけもなく、相手は自分の実際の姿は見えず、自分も相手の実際の姿が見えない。お互い見えているのは画面内にいるかっこよかったり、可愛かったりするキャラクターたち。

そして、互いに話したり助けたりして仲間になったり、協力したりして敵を倒す。自分が強ければ相手に必要とされるし、他のキャラクターを助ければ感謝される。

現実世界では味わえないこの爽快感に俺はオンラインゲームにどんどんのめり込んでいった。

それと同時に学校を休む日が増えていき、週に少なくて2日は休んでいたと思う。それと早退も多かった気がする。


そんな俺の事を知った両親は珍しく仕事を休んで俺と話し合うことになった。


「どうして学校を休んでいるんだ?」


その質問に俺は答える気がなかった。答えたところでどうにもならない事を知っていたからだと思う。


そのまました向き黙りこんだ。


「なんでなのか教えてくれない? 黙ってたらお母さんわからないでしょ」


そりゃあ、わからないだろうなずっと仕事に夢中で育児放棄をしていたんだからな。


「…………」


その日はそのまま一言も発する事はなかった。



そのまま月日が過ぎていき、俺が中学3年の夏休み。中学になってもゲームは続けていて、学校には規定日数を考え休んでいた。そのせいで学力はかなり低下。これ以上はないほどの絶望的……という状態で……う、うん。と、とにかく、かなりやばかった……。


最近、休をとっているようで、家にいることも増えていた。その時の俺は、両親が自分の事を見ている目の変化に、徐々に気づきはじめていた。

それは心配の目から憐れみの目に。


そして俺は聞いてはいけない事を聞いてしまう。



夏休みのある日のの夜中に俺はモンスターとの死闘を繰り広げ、ようやく手に入れたレアアイテムを仲間のパーティーメンバーの金髪猫耳女の子キャラにあげてしまい、後悔しながらリビングの麦茶を取ろうと2階から降りている時。


「なんであんな子になってしまったのかしら……」


はっ。俺の事?


「……やめなさい。もし聞かれてたら」


……これ以上は聞かない方がいい。そう思っているのだが、俺の足は動かなかった。


「大丈夫よ……。 どうせゲームやってるわ」


「……うむ。 あの子はもう昔の咲也ではないのかもしれない」


「どうしてあんな子に……」


「咲也はゲームせいで……」


その時の俺の感情は自分でも驚くことに悲しみよりも怒りが強く増していくのを感じた。その怒りは自分の事を言われたのと、ゲームのせいだと言われた事でこみ上げたものだった。


そして、気づいた時には俺はリビングのドアを開けてしまっていた。


「「咲也!?」」


二人は驚いた顔で俺を見ていた。俺はその顔をまっすぐに見て叫ぶように言った。


「昔と変わった? 昔の俺を知らないくせによく言えるな! 小さい頃からずっと俺を放置してたくせにな!」


俺の言葉に2人は何も言わず、俯いている。


「そんなに今の俺が嫌なら、来年にはこんな家出てってやる!」


そう言った日から俺は猛勉強を始めた。前から紅葉学園に、いや、ASRのシステムに興味を持っていて、入りたいと思っていたんだけど、その気持ちがこの日を境に強くなった気がする。


紅葉学園に入って一人暮らしをする。親の力に頼らず自分の力で生きていく。


俺は家に帰るのも遅くなり、たまに帰らない時もあった。

ある日は学校で、ある日は幼馴染の家で、ある日は家にも帰らずネットカフェや漫画喫茶で勉強をし続けた。

今まで一番おろそかにしていた勉強を中学3年の夏休みから始めるのはとても大変で、血を吐くほどに辛かった。苦しかった。



そして俺は見事、紅葉学園に合格。受験一ヶ月前くらいに、田舎に住む母型の祖父が、俺が一人暮らしをする理由を知って、それを止めなかった俺の両親への怒りで俺の学費や一人暮らしをする一軒家までも俺に提供してくれた。

祖父は俺と一緒に暮らすのはどうかとも言ってくれたのだが、紅葉学園に通うには少し遠いという理由で断った。


自分の力で生きていくとか言ってたくせに、結局、祖父にいろいろと助けられ、そんな自分が情けなく思う。



はあ、そんなこんなで現在に至るというわけだ。



「咲也? さーくーや!」


「はっ」


「さっきからぼーっとしてたよ。 大丈夫?」


菜々実が俺の顔を覗きこみながら、心配そうに尋ねた。


「だ、大丈夫。 ちょっと昔の事を思い出してただけだよ」


心配させないように菜々実に笑顔を見せた。


「それじゃ、夕食を作っちゃうね」


菜々実はリビングの方へ、右手に持つ夕食の食材を持ちながら向かっていった。



そういえば、菜々実は、俺が一人暮らしをする事に一番驚いてたな。

私も付いて行くよとか、よくわからない事も言ってたし。


も、もちろん断ったぞ。俺は。さすがに同じ屋根の下に男女が同棲するのはまずいからな。それはね……さすがに。



そ、そういえば、あいつって料理上手かったけ。……俺の記憶では調理実習で、たしか……塩酸かアンモニアを肉じゃがに入れようとして先生に怒られてた気が……。



はっ! こ、これはまずいんじゃないのか?! 明日の新聞の一面に乗っちゃうんじゃないんですか!


「お待たせー、カレーできたよ!」


「ひぃっ! か、カレーを作ったのか。 見た目は美味しそうだな。 は、はは、ははは」


俺はここで死ぬのか……せめてもっとゲームはやりたかったな。彼女も作りたかったな。はぁ~……。


「見た目だけじゃなくて味も美味しいよ!」


口を尖らせて言う。


俺はスプーンを持ち、ご飯とその上にカレーのルーを乗せ、口へ。



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