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2時間くらい経ち、ようやく300G集まった。この2時間は真静裏によって休みなくぶっ通しで戦かわされることに……。
同じ敵と何十回も戦わさせられ、精神面も体力面もHP面もボロボロだ。まるでブラック企業だな。
俺とオタクくんがこんなにも弱っているというのに真静裏はまだ元気なようだ。
「しん、……静裏さんって意外と体力あるんだね」
あっぶね〜、危うく真静裏と言いそうになっちゃったよ。
「は?なんか文句あんの?」
「な、ないです」
真静裏に睨まれた俺は、ははっと笑いながら離れた。はぁ〜、言わなきゃよかった……。
「そろそろ、ポーション切れてきたから街に戻らないか?」
オタクくんが街を指差して言うと、真静裏は少し物足りないような顔をしていたが。
「たしかにそうね。じゃ、いったん戻るか」
さすがにHPが0になったらまずいもんな。
オタクくんに言われなかったら、気づかなかったな。しっかりと3人の使用したポーションを確認していたのか。
だが、オタクくんの的確な指示は、これだけではない。さっきの戦いでもしっかりとした指示をし、そこまで苦戦はしないですんだ。
さすがゲームオタクだな。色んなオンラインゲームでギルドのリーダーでもやっていたのであろう。
俺なんかギルドのリーダーなんてやった事ないな。ギルドに入っても一緒に活動しない派だったし。
そして、街に着いた俺らは30分間の自由行動になった。真静裏はちょっと街を回りたいと言ってそのままどっか行ってしまった。
残った俺らは顔を見合わせ苦笑。何か話す話題を……ないな。静まる空気。つ、つらい。
はぁ〜、こういうところが相手に「つまんね」って思われるのだろう。
「そういえば、道具屋でポーション買いに行かないか?」
静まり返った状態にはじめに話題を出したのはオタクくんだった。
「そ、そうだね」
慌てて返事をした後、道具屋へと向かった。途中、あまりの街のでかさに道に迷ったがなんとか道具屋に着いた。
「げ、ポーション高すぎだろ〜!」
この聞き覚えのあるチャラ声は……安村だだな。絶対。
道具屋に立っていたのはやはり安村だ。その隣にいるのは青山さんだった。
「あっ、篠田くん」
俺の姿に気づいた青山さんはこっちに手を振っている。
よかった〜。青山さんは普通で。
「あれ彼女かい?」
オタクくんがにやにやして聞いてきた。
「ち、違うよ!ただの……」
ただの友達って言っていいのかな。昨日会ったばっかで友達と呼んでいいのか?友達が少なかったからそういう境界線がよくわからなかった。
「お〜、咲也じゃん!お前も道具屋に用があるのか?」
「あ、うん。ちょっとポーションを」
安村のチャラボイスに返答する。
「聞いてくれよ〜、ポーションが高すぎなんだよ!」
店の前でかなり失礼発言をしているがあいにく店に立っている小太りの商人はCPUなので感情がなく、いつも同じ声で同じ事を言う。もし人間なら安村には一切道具は売らないだろう。いや、俺ならあのチャラボイスに腹を立て斬ってるかもしれない。
「ところで咲也の隣にいるのは?」
「あ、えっと同じパーティーの河上くん」
「オタクくんでいいよ」
隣で青山さんが「オタクくん?」っと首を傾げている。
「まぁ〜、ともかくよろしく〜」
と軽い自己紹介を済ませたら安村たちは同じパーティーの人を待たせている事に気づき別れることになった。
「じゃ〜、咲也また後でなー」
「あ、ああ!」
「僕たちもそろそろあの危険人物と合流するか」
「だね」
俺らは顔を見合わせ2人でふっと吹き出すように笑い、その危険人物の元へ向かった。