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番外編2:想ーねがいー

視界がぼやける。


意識が遠退く。


力が抜けて、なにも聞こえなくなってーーーーー。




何も考える気も起こらなくなってきて、目を閉じようとしたら、誰かの声が聞こえてきた。


悲痛で、涙で濡れた声。


なんて声を出してるんだ。


ぼんやりと聞こえてくる声は、それが誰なのかなんとなくはわかったけど、確かめておきたくて残り少ない力で眼を開ける。



「幸太……こうたッ……!」


やっぱり視界に映ったのは璃餡の泣き顔で。


……顔近い。


なんて思ったけど、どうやら俺を抱きかかえてくれているらしくて。



さっき《なんて声出してんだ》って思ったけど、声が声なら顔も顔で。


なんて顔してんだ。


泣くのはお前には合わないよ。


笑顔のほうがいい。


だから、笑ってよ。


ねぇ、璃餡。


いつか、またーーーーー。


俺とーー僕とーーーー。


君と一緒に、またサッカーがしたいよーーー。




**********************************************************



「………今のは…」


「おっ。ロスト、目覚めた?」


ロストが目を開くと、ベッドの隣で暁が本を読みながらロストが目を覚ますのを待っていた。


「先生……俺は…」


「急に倒れたんだよ。痛いところはない?」


「はい……1つ、聞いていいですか?」


「うん?」


「……俺は、綾峰幸太ですよね?」


暁と視線が合わない。

黙って、床を見つめている。


「先生っ……!」


「知ってどうする?」


こちらを向いた暁の目は鋭く、厳しいものだった。

まるで、ロストを試しているかのように。


「……俺、璃餡のところに行かなきゃ。璃餡に会って、俺は璃餡のこと恨んでないんだって、俺のことで後悔しないで、笑ってて欲しいんだって、またサッカーしたいって伝えないと……!」


「それはできない」


暁はロストの願いを両断する。


「記憶が戻ったとしても、試験はもう終わっているんだ。だから、もう彼と会うことはできないんだよ」


「先生、なんとかできないの!?」


「……規則なんだ。叶えてやりたくても、できないんだよ」


なんで、今になって思い出すんだ。

もう少し、思い出すのが早ければ。

試験が終了する前に、思い出していれば。


どうすることもできない後悔がロストを包み込む。


唇を噛み締め、拳を握る。


「……わかったよ」


ぽん、と暁の手がロストの頭に乗る。

そしてそのまま、わしゃわしゃとロストの髪を掻き回した。


「わ、わわっ、ちょ、先生っ!?」


「次の試験に合格すれば卒業……転生することになる。たぶん、リアン君には会えない。でも、僕だって後悔が残るまま転生させるのは教師として不本意だ。だから、君には特別にもう1つ試験を課す」


「えっ!?」


「次の試験で、君にはチームリーダーになってもらう。最終試験は、4人1組のチームで受けることになる。そこで、僕からのミッションをクリアできたら、君たちの願いを何らかの形で叶えよう。」


「…先生っ!」


ロストは、つい嬉しくて暁に抱きつく。

暁はそんなロストに苦笑しながら、抱きつくロストの頭をなでてやる。


「だが、確実にお前たちが記憶を保持している状態で合わせてやれるとは限らないぞ。何年後、何十年後、下手したら何度か転生したあとに再会することになるかもしれない。それでもいいか?」


「璃餡に会って話せるなら、いつでもいいよ!できるだけ早く話したいけど……でも、先生、ありがと!」


「礼を言われるようなことじゃないよ。さて、そろそろ夕飯の時間だ。僕はまだ試験が終わってない子達を迎えに行くから。他の子達はもう食堂にいるんじゃない?」


「うわ、配膳当番だったのわすれてた!先生、また後で!」


慌てて食堂へと向かうロストを笑いながら見送り、暁も保健室の扉を閉め、ゆっくりと玄関へ歩き出した。



*******************************


「遅かったな。つーか歩いてないで走れよな」


ゆっくりと歩いてきた暁に、彼の代わりに試験を終えて帰ってくる試験生を迎えていた教師が悪態をつく。

暁はその非難の視線を受け流し、隣に座った。


「試験生、あと何人帰ってきてない?」


「3人。…にしても、いいのか?教師が私情はさんで転生後の人生書き換えるなんて…」


「うっわー、悪趣味。"観(み)て"たの?」


「うるさいな。暇なんだよ。人手が足りないからって、俺借り出しといて……そもそもここは美砂が治める世界であって、俺はなおさら部外者だ。なんでこんな関係ない世界で肩入れなんてしてるんだ?」


「………試してみたかったんだ」


「…は?」


「彼は、何か面白そうだったんだ。彼の未来に、懸けてみてもいい気がした。彼は、世界の何かを変える気がする。」


「………そうか。」


「………ハヤト。」


「あー?」


ハヤトと呼ばれた教師は、面倒そうに暁へ顔を向ける。


「……ありがとね。急だったのに、交代してくれて」


「別に……暇だったし。それよか、残りの3人遅くないか?俺、見に行ってくるわ」


「ごめん、ありがと!」


ハヤトの姿が霞のなかに溶けていく。


「さて……どうやってあの2人を合わせてあげよっかな……」


暁はハヤトと残りの試験生の帰りを待ちながら、璃餡とロストの未来を考えては脳内でシミュレーションし続けるのだった。





気づいたら前回から約1年経とうとしているという……。

時間とは恐ろしいものですね。


更新を楽しみにしてくださっていた方々、お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。

なお、私がログインしなかった間に返信が滞っていたメッセージも随時お返ししますのでお待ちください。

さて……今回は番外編2話目ということで、ついに璃餡が生前の記憶を思い出しました!!

ですが、時すでに遅し…なんで試験終わってから思い出すの……!


担任の暁先生も規則だからと突っ撥ね…るかと思いきや、なにやら思惑があるようで…。

今回出てきた《ハヤト》、それから名前しか出ていませんが《美砂》の2人は今後掲載していく物語の中で登場する予定となっております。


次回のお話についてですが、この物語の主人公であるロストと璃餡の試験後の様子を描く最後の話にしようと思っています。

つまり、次回でこの物語は終幕です。

ただ、次回のお話は今後掲載予定の、《ロスト》(幸太)が最終試験に挑んだ後の話になります。


生前の《幸太》としての記憶を取り戻したロストが最終試験に合格した後、どうなったのか……


そんなお話を描いていきます。

なので、ちゃんと時系列順に話を読みたい方は次回シリーズをお待ちいただき、そのシリーズを読まれてから次回掲載の話を読まれることをお勧めします。


ではあとがきが長くなってしまいましたが、この辺で失礼します。


次回更新をお待ちください♪

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