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4:記憶―おもいで―

最初にあいつと出会ったのは、確か小学校3年生のときだ。

当時―――まぁ今もだけど、他人と接するのが苦手な俺は、昼休みになると教室で本を読んでいるのが日課になっていた。

だけどその日はワックスがけがあって教室にいられなかったため、しかたなく校庭の木陰で本を読んでいた。

場所は違っても本を読むという日課は変わらない。

そう思っていたのに……

「よけて!!」

という声が聞こえて咄嗟に顔を上げた瞬間、顔にサッカーボールがクリーンヒットした。

今思えば、「よけて」なんて言われても本に集中していた俺がよけれるわけないと思う。

その時点からあいつは滅茶苦茶なヤツだったということか。


俺があまりの痛さに顔を抑えていると、ボールを(わざとじゃないけど)俺の顔にシュートしたあいつは、俺のところまで駆け寄ってきて、「……大丈夫?」と聞いてきた。

「大丈夫なわけ、ない……」

「や、ホントごめん!シュートしようとして全力で蹴ったら、ゴールの横を通ってお前の顔に…」

そんなボールを「よけて」といったのか。

そんなの避けれるわけがないだろう。

そう思って相手を睨み付けようとして、できなかった。

俺はもともと口下手だし友達なんて皆無に等しかったけれど、全校生徒でも100人にも満たない小規模な学校だったから、生徒の顔と名前くらいは全員覚えていた。

だけど目の前にいたやつは、知らない顔だったのだ。

「―――――だれ?」

小さく呟いたのだが、相手には聞こえたらしく、一瞬きょとんとした顔を見せた後、

「オレは綾峰あやみね幸太こうた!同じクラスで、”てんこうせい”だ!」

無邪気な笑みでそう言った。

とても楽しそうに、屈託のない笑顔を見せるあいつ―――【コウタ】は、

青空に浮かぶ太陽のように眩しく見えた。


そういえば確かに、朝の会で担任の先生が転校生を紹介していたような気がしたな―――。

俺が自分を凝視しているのに気づいたのか、コウタは「何?」と問いかけてきたため、俺は慌ててコウタから本に視線を戻して小さく、「なんでもない」と答えた。

コウタは「そっか」というと、

「じゃあさ、お詫びに一緒にサッカーしようぜ!」

と、再び無邪気な笑顔でさらりと言ってのけた。

当然俺はワケがわからず無言でコウタを見るしかできない。

そもそもなんでお詫びがサッカーをすることになるんだよ。

思考停止寸前の俺がそんなことを考えているのを知ってか知らずか、コウタは無邪気な笑みのまま答えた。

璃餡りあんってさ、サッカーうまいんだろ?俺、璃餡とサッカーやってみたいんだ!」

……呼び捨てかよ。

というよりなんで俺の名前を知ってんだよ。

一瞬そう思ったが、コウタと一緒にサッカーをしていた連中が話したのだろうと思い、軽くため息をつく。

まぁ確かに、授業でサッカーやるときはある程度点は取るし、体力テストの結果を見る限り運動神経も悪いほうではないと思うけど…。

「―――悪いけど、サッカーする気…」

ない、と言おうとしたのに、

「じゃあ璃餡は俺のチームな!」

いつの間にかコウタに腕を引っ張られていた。

何が「じゃあ」なのかわからない。

でも結局、俺はそんなコウタに毎日振り回されることになり、いつの間にか勝手に友達になり、やっと俺がコウタを〔友達〕だと思うようになった頃には、コウタの認識では既に〔親友〕になっていた。


そんな、コウタに振り回されて文句を言いながらも互いに笑っているような、そんな毎日がいつまでも続くと思っていた。

なのに……。

いつもの公園でいつものようにサッカーしてただけなのに。

俺の蹴ったボールが道路に出て、コウタが拾いに行っただけなのに。

ボールを拾って道路を走るコウタ、

近づいて来るトラック、

クラクション。

血。

動けずに、何もできずに、道路を見つめる俺。

ボールを持った、コウタ“だった”モノ。

動かない、俺の親友。

なのに、その顔は、血で赤く染まっているのに、


無邪気な笑みを浮かべていた。


そのときだったと思う。

もう、二度と笑わないと、理由わけもない決意をしたのは。


それでも。

約10年ぶりに再会した、おそらく【コウタ】としての記憶を失くしていると見える【ロスト】は、俺に「笑って」と言った。

何の皮肉なのか。それとも因果と呼ぶべきなのか。

笑わない決意をしたきっかけは【コウタ】で、笑ってほしいと言ったのは【ロスト】―――つまり、俺との記憶をくした【コウタ】。

どっちも同じ、俺との記憶があるかないかだけの〔親友〕。

俺のせいなのに……。

俺のせいで、【コウタ】は笑えなくなったのに。

10年経っていきなり俺の前に現れて「笑って」なんて言われても……

滅茶苦茶だよ。

相変わらず。

たとえ〔親友〕の頼みでも、

もう、10年も笑っていないのに。

なのに、今更――――――

「今更、どう笑えっていうんだよ――――――!!」



えっと、しばらく更新してなくてすみませんでした!

今もまだ受験で忙しいのですが、約半年ぶりに更新できました。

こんな不定期なのに読んでくださる読者の皆様ありがとうございます!

じつは今中間テスト真っ只中です←。


まぁそれはおいといて。

今回のお話は、璃餡とロスト(=コウタ)の思い出話でした。

【ロスト】はかつて璃餡の親友だった【綾峰幸太あやみねこうた】だったようですね。

そして、皮肉なことにも璃餡が笑わなくなったきっかけは、「笑って」と頼んだロスト……すなわち【コウタ】が原因。


笑ってと頼まれたのも、笑えなくなったのも同一人物がきっかけ。

さてさて、璃餡はどんな決断を下すことになるのやら……。


ちなみに【綾峰幸太】は執筆当初から璃餡を振り回す、天真爛漫な設定になってましたww

またどこかで璃餡とコウタの思い出話がかけたらいいなー、と思ってみたり。


次の更新は、たぶん6月上旬かと。

下書きは完成しているので、文化祭が終わり次第執筆に取り掛かります!

…受験勉強?

しませんww(待て)


まさか、自分の誕生日に更新できるなんて思ってなかったですけどねw


※2014.1.25 修正完了。



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