3:理由―わけ―
最初は、夢かと思った。
あいつが、俺の目の前にいて、俺の名前を知っていたから。
だってあいつは、俺のせいで―――。
でも、他人の空似ってヤツらしい。
あいつは、俺の記憶が正しければ【ロスト】なんて名前じゃなかったはずだし、口調もどこか違う……
……でも、何故か、《あ、コウタだ》って思った。
ロストは、あいつじゃない。それは分かってる。
『どんな時だって、笑ったらすっごく楽しくなるんだよ!』
そう言った友人…コウタの笑顔が俺の脳裏に浮かぶ。
もし、あいつがコウタだとしても……コウタの頼みだとしても―――――
「―――――今更、どう笑えって言うんだよ…!」
◆◆◆◆◆
「どうして……」
ロストは、考えていた。
どうして璃餡が笑わないのか。
「……どんな時でも、笑ったらすっごく楽しくなるのになぁ」
もしその言葉を璃餡が聞いていたら、彼の心を苦しめていたであろうこととも知らずに。
だが、その彼は既にここにはいない。
何となく、追いかけてはいけない気がしたのだ。
なぜ彼は“もう笑わない”と決めたのか……
そう考えていた時、ふと思いついた。
「あ…!データ使えば分かるかも!!」
ロストは急いで肩に掛けていた鞄から手帳を取り出し、ページをパラパラとめくる。
“データ”というのは、“試験”に合格するために関わる人々の情報のことだ。
もちろん、その中には璃餡のデータも入っていた。
ロストはしばらくそのデータを読み、その後すぐに絶句していた。
そこに書かれていた内容はこうだ。
井照璃餡17歳。
両親は既に他界しており、現在は親戚の家で暮らしている。
友人とサッカーをしていた際に井照璃餡の蹴ったボールが道路に出てしまい、それを拾いにいった友人がトラックに轢かれ、亡くなってしまうという過去を持つ。
その日以降、1度も笑ったことはない。
「璃餡に会う前に、ちゃんとデータ読んでおけばよかった……」
データを読み終えたロストは、何とも表現しにくい衝動に駆られ、走りだしていた。
皆様お久しぶりです。
さて、今回は璃餡が笑わなくなった理由のお話でした。
自分が笑わなくなった原因であるかつての友人に顔が似ている存在から、「笑ってほしい」と言われる……。
璃餡には、ロストとコウタが重なって見えたんですよね。
だからこそ、ロストのいう”試験”に合格させてあげる為にも笑ってあげたいけれど、笑顔を大切にしていたコウタが死んだ原因である自分が笑っていいのだろうか・・・。
そんなジレンマ(板ばさみ)の状態なんです。
そういう感じのことを書いたのですが・・・うまく書けませんでした。
なので、後書きにて補足させていただきました。
ロストが璃餡に会う前にデータを読んでいなかった件についてww
まぁ・・・作者のなかでは「ロスト=天然」なので←
ではまた、次回のお話でお会いしましょう♪