1:序章
何でもないことが繰り返されていく。
宇宙人がくるとか、歴史上で何かが変わるとか、そういうことのない、何気ない日々。
いつまでも続くと思っていたんだ。
今までも、これからも。
*****
見渡す限り青く染まった空と、その下に広がる街を一望できる丘に、1人の少年がいた。
――――いや、寝ていた。
今日も特に何かが起きるわけでもない、平凡でつまらない1日が繰り返されるだけ。
そんな時だった、
「――こんにちは」
突然、声を掛けられたのは。
当然、少年は寝ていたのだからいきなり声を掛けられたら驚くし、目の前に顔があれば更に驚く。
「ぎゃあああああっ!?」
「何、その『幽霊が出た!』みたいな叫び……まぁいいや。君が井照璃餡くん、かな?」
「そ、そうだけど…」
何なんだこいつ、といいたげに声の主―――璃餡と同じくらいの年齢であろう少年を見るが、彼は特に気にした様子もなく、平然として言った。
「じゃあさ、笑ってよ」
「は……?」
「だから、笑って?」
―――ホントに何なんだコイツは……。
話しかけるだけならまだしも、いきなり「笑って」とは、どういうことなんだ?
「ねぇ、笑ってくれるんでしょ?」
「はぁっ!?誰か笑うって言った!?」
いつの間にかこちら(璃餡)が笑うことを承諾した前提で話を進める少年に、璃餡は慌ててツッコミを入れる。
「でも、璃餡が笑ってくれなかったら、"試験"に合格できないんだ。だから……」
「ンなこと知るか!」
「ちょ、ちょっと!?」
ただでさえ睡眠を邪魔されて機嫌がわるいというのに、少年の頼み事の内容は、自分には何の関係もない。
璃餡は少年を軽く睨むと、イライラを隠せないまま丘を下る。
「どうしよう…この試験、合格できるのかなぁ……?―――って璃餡!待ってよ!?」
少年は少しだけ不安を感じつつも、既に姿が見えなくなってしまった璃餡を慌てて追いかけて行くのだった―――――。
はじめまして、あるいはこんにちは。
白星裂空です。
さて、今回の作品「lost memory of the Kota」は、今後掲載していく予定のオリジナル小説、「The trial for transmigration」に登場する主人公の1人、幸太のスピンオフ作品となっております。
『幸太』という名前はまだでていませんが、そこは最後までお楽しみということで←
では、またお会いしましょうー♪