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エピローグ


 あれから一年が経ち、私とクロノは十八歳になった。

 シャンテは禁忌を犯したとして、秘密裏に処理され、私達に日常が戻ってきた。


 私達は義兄さんの計らいで、今日、教会で改めて告白を行うこととなった。

 恐ろしい記憶を、幸せな記憶で上書きする為に。

 

 あの日から、私はうなされ続けている。

 解放されたはずなのに、いつでもシャンテは私のそばにいるのだ。今も耳元で囁いている。


 『リーシュはアリアのこと、義理の兄に色目を使う女だって言ってたよ』


 『カレンはアリアのファッションはダサすぎて、横にも並びたくないって言ってたよ』


 『ロイさんは、本当はもうアンタのこと大嫌いだって』


 彼女の姿は見えないから、髪を弄っているのかは、わからない。悪意を浴びせられ続け、私の心は削れていく。


「シャンテ、今日は大事な日なんだから、あっちにいってよ」


 私が呟くと、彼女が笑った気がした。


 『嫌よ、私はずうっとアリアの側にいるんだから』


 ケタケタと笑う彼女は、私の妄想なのか、それとも現実なのか。


「アリア、お待たせ」


 クロノがやってきて、私に手を差し出す。

 私は彼の手のひらに、自分の手を重ね、微笑む。


 私達は、教会の中を歩いていく。

 周りには、義兄さん、カイル、リーシュにカレン、リント先輩……皆が祝福の言葉を投げかける。


 不意に皆の笑顔が、奇妙に崩れる。

 笑っているのか、嘲笑っているのか。

 私達を本当に、祝福してくれているのだろうか。


「アリア?」


 クロノの声に、ハッとして、笑顔を作る。


 私の魂は、穢れてしまったのだろう。

 視界に映るどれもが、あの日の灰を纏ったように、薄汚れて見える。

 もう、純粋なあの頃には戻れないのだろう。

 それでも。


 私は隣を歩くクロノを見上げる。

 彼は、私の視線に気がつき、優しく微笑む。


 それでも、クロノも、私も生きている。


「アリア、これからも僕と一緒にいてくれますか?」


 クロノの言葉に、私は笑顔で頷く。

 そう、私はもう、クロノを失わない。

 ――何をしてでも。


 

 私のすぐ背後で、誰かが嗤った気がした。



 

 

 

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