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お披露目会


 お披露目会は、事務所の公式サイトやSNS、ユキとヒナのSNSや動画でも宣伝をした。

 やはりインターネット上の反応は少ないままだ。

 渋谷は人の多い街なので、現地でどれだけの人に興味を持ってもらえるかが鍵になりそうだ。


 ユキの衣装は、水色を基調にした襟付きのワンピースだ。

 スカートでも仕方ないけど、せめて膝下までは丈がほしい。

 雪花の要望に合わせて用意してもらった衣装は、シンプルながらも清楚でかわいい作りをしていた。

 腰回りに白いリボンがついているのが、アイドルらしいのかもしれない。


 ヒナの衣装は同じく襟付きのワンピースだが、生地の色はオレンジ。

 ユキの衣装とは形も少し違っていて、ウエスト部分がきゅっと絞られ、その分スカートがふんわりとしている。

 陽奈梨が着用してみると、スカート丈が膝よりも上だったので、雪花は下着が見えてしまわないかと心配になった。

 お揃いの白いリボンは、ユキは腰回りにつけるが、ヒナは髪飾りにするらしい。

 陽奈梨の艶やかな黒髪に、真っ白なリボンはよく映えた。


「わー! すっごくかわいい!」

「映像で見たアイドルの衣装みたいだよね」

「ね! この衣装で写真撮って、宣伝に使ってもいいですか?」


 陽奈梨の言葉に、堺はもちろんだよ、と頷いた。

 『メンバーカラーで衣装を作ってもらいましたっ。ヒナ』というコメントとともにSNSに投稿された。


 アイドルの衣装を着て初めて撮った写真は、これまでの投稿の中で一番反応をもらうことができた。

 明るいオレンジと優しい水色が、うまく目を引くのかもしれない。


 ヒナはオレンジ。ユキは水色。

 このメンバーカラーというものは、アイドルなら決めておいた方がいい、と説明された。

 衣装や小物にカラーを反映させることもあるが、一番はファンのためだという。

 

 ライブの最中、ファンが誰を応援しているか分かるよう、サイリウムの色を変えるそうだ。

 アイドルはステージ上からその色を探し、ファンサービスを行なうこともできる。

 何より、緊張して不安でいっぱいになるステージでも、自分を応援してくれているサイリウムを見つけると、それだけで励まされるらしい。


 ヒナはオレンジ、というのは、雪花の意見だった。

 陽奈梨といえばやはり、太陽みたいに明るい笑顔だ。

 太陽の色を表現するのに、赤や黄色をイメージする人もいるらしいが、雪花だったら太陽はオレンジ色で描く。

 だから、ヒナのメンバーカラーは、オレンジなのだ。


 もちろん、恥ずかしいので理由は話していない。

 ヒナはオレンジが似合うよ、という雪花の言葉に、陽奈梨は笑って「じゃあオレンジがいい!」と答えたからだ。


 一方で水色も、陽奈梨が雪花のイメージで決めてくれた色だった。


『降り積もった雪って、本当は白いのに、水色に見えることがあるんだって。水色って優しい色だし、ユキちゃんみたいでしょ?』


 完全に名前のイメージで決められている気がするが、陽奈梨が優しいと思ってくれているなら嬉しい。

 雪花は陽奈梨の一言で、ユキのメンバーカラーを水色に決めた。



 お披露目会当日。

 情報溢れるインターネットの中で、新人アイドルのお披露目会の情報を見つけ、会いに来てくれる人はいないだろうと思っていた。


 しかし路上の特設ステージの前には、高校生らしき女の子二人組が、始まる前から待ってくれていた。

 まだステージには誰も立っていないので当然だが、行き交う人たちは足を止めない。

 でも少女たちは、間違いなくステージの前で足を止め、何やら笑いあっているのだ。


「えっ、どっちかなぁ。たまたまステージの前にいるだけ? それとも見に来てくれたの?」


 そわそわした様子の陽奈梨を落ち着かせるために、「期待すると違ったときにがっかりするから、たまたまだと思っておいた方がいいよ」と雪花は声をかけた。


 陽奈梨には偉そうにアドバイスをしたくせに、当の雪花も舞い上がっていた。

 もしかしてステージを見に来てくれたのかもしれない。

 そう思うと、緊張するお披露目会も頑張れる気がした。


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