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第14話 森の暗殺者との激戦

第14話を公開させてもらいました!

森の主たるギガントマンティスに、与人たちは勝てるのか!?

「兵装転送。スティンガーナイフ」


 セラがそう唱えると二振りの剣がその手に握られる。

 それを眼前のギガントマンティスに向けて構える。

 一方でアイナはその間も聖剣のコピーを構えつつ相手の動きを一切漏らさないように見続けている。


「私とセラでギガントマンティスの鎌を止めます。リント、あなたはその間に仕留めてください」

「了承。敵の攻撃の阻止に専念します」

「まあ堅実な手だな。ユニコーンとフェンリルはしっかり主を守れよ。そして主は……戦闘中は余計な事をするな」

「任せてくださいリントさん。三人は攻撃に専念してください」

「ご主人。……守る」

「何か俺だけ当たりきつくない?」


 簡単な作戦会議を済ませるとセラとアイナは突撃体勢に入る。

 ギガントマンティスは動かずこちらの動きをジィと見ている。


「では……アイナ。参ります!」


 その言葉と同時に二人は消えたかのようなスピードでギガントマンティスに左右から切りかかる。

 ギガントマンティスはその両腕の鎌でその斬撃を受け止めるが勢いを殺し切れずに後ろへ押される。


「がら空きだ」


 そこにリントが拳を握り正面から殴りに行く。

 その拳は抵抗される事もなくギガントマンティスに吸い込まれていき凄まじい衝撃音と共にギガントマンティスを吹き飛ばす。

 が、ギガントマンティスは翅を大きく広げると空中で体勢を整え着地する。


「思っていたより頑丈だな」

「修正。鎌も想定以上の切れ味を持っています。敵推定レベルを上げます」

「二人とも油断しないでください。……ここからが本番のようです」


 アイナが見つめる先にはギガントマンティスが明らかに先ほど以上にこちらを警戒している姿があった。

 そしてギガントマンティスは翅を羽ばたかせると先ほどの二人にも劣らぬスピードで突進しセラにその鎌を振るう。


「!!」


 だがその動きにセラは反応し両手の双剣でその鎌を受け止める。

 ギガントマンティスは無理に力押しはせずにその鎌を引くと凄まじい連撃を今度はアイナとセラに振るう。

 二人ともそれに対応し全ての攻撃を防ぐが逆に言えば攻撃に転じる事も出来なかった。

 そしてその間もギガントマンティスの片方の鎌はリントの動きに敏感に対応し何時でも迎撃できるようにしていた。


(思ったよりこっちを警戒しているが……踏み込まなければ始まらない、か!)


 リントは心の中でそう決断すると地面を踏み込み先ほどと同じように突撃する。

 ギガントマンティスは待ってたと言わんばかりに空いてる鎌をリントに向けて大きく振るう。


「フッ!!」


 だがリントはその鎌を受け止めギガントマンティスを投げつけようとする。

 するとギガントマンティスはあろう事か鎌を別の鎌で腕ごと切り捨てると後ろへ大きく跳ぶ。

 リントは手元に残った鎌を地面に差し込み置いておくと切り傷が付いた両手を見る。


「ふん。ドラゴンの皮膚でも切り傷は避けられんか」

「三体一でも拮抗ですか。……聖剣の名が泣きます」

「慰撫。我々は制約により力が制限されている状態です。落ち込む事は無いかと」


 三人はそう言いつつギガントマンティスの様子を見ている。

 片方の鎌を自ら切り落とし痛みに耐えるかのようにしているように見える。


「これで戦闘力が落ちた。……と見るのは甘く見過ぎですよね」

「だな」

「肯定」


 三人の考えを肯定するかのように切られた傷口から新たな鎌が生え出て来た。

 それも先ほどよりサイズが若干大きくなっているようにも見える。


「生え変わりが出来るから簡単に切り落とした訳だな。全く手を焼かせてくれる」

「推定。ギガントマンティスの種の中でも上位に値する個体だと思われます」

「だとしてもここまで来て引く事は出来ません。まして後ろには主様がいるのですから」


 三人は改めてギガントマンティスに対峙する。

 するとギガントマンティスは大きく両腕を広げると大きく咆哮する。

 そして鎌を水平に構えるとその鎌の腕がみるみる伸びていく。


「「「!!」」」


 三人が何をする気を察し行動を起こした瞬間ギガントマンティスは周りの木々ごと薙ぎ払おうとその伸びた鎌を水平に払う。

 その攻撃はセラとアイナ、二人掛かりで受け止める。

 間を縫ってリントがギガントマンティスの懐に飛び込む。

 だが空いた鎌がその攻撃を許さずリントに向けて振るわれる。


「チィ!」


 リントは今度は受け止めるのを止め躱す事に専念する。

 先ほどより大きくそして強度の増した鎌がリントを切り裂かんと連続で振るわれる。

 戦闘は先ほどよりも拮抗状態になっていた。


「ブースト、オン」


 だがその拮抗もセラのこの一言で覆される事になる。

 突如力が増したセラが伸びたギガントマンティスの鎌を弾き飛ばす。

 大きく体勢を崩したギガントマンティスにアイナが懐に飛び込み自分の分身を突き立てようとするが再び大きく後ろに跳躍される。


「危機察知も中々ですね」

「ああ。まず動きを止めない事には始まらんな」

「了解。細かい連撃を中心に敵の動きを止める作戦で」


 そう打ち合わせする三人であったが動くのはギガントマンティスの方が速かった。

 ギガントマンティスは大きくその腕を上げ振るうと鎌がその腕から外れ投擲される。

 そしてその狙いは今戦っている三人では無かった。


「主様!」


 そうアイナが叫ぶ通りその投擲された刃は他でもなく与人に向けて振るわれていた。

 突然の事に動くことが出来ない与人が両断されるのは時間の問題であった。

 与人を守る者がいなければの話であるが。


「セイクリッドシールド!」


 その言葉と共に与人の周りに突如白いベールのようなものが現れる。

 それは投擲された刃を受け止め与人の下に行かせはしない。

 そしてその刃は小型な影によって遠くに蹴り飛ばされる。


「そう簡単に与人さんをやらせません」

「ご主人……大事」

「ふ、二人ともありがとう」


 腰が抜けたのか立ってもいられなくなった与人を介抱しつつ二人はそう断言する。


「だ、そうだ。だから聖剣、目の前に集中しろ」

「……そうですね。すみません」

「推察。生え変わりにも限度があるはず。今のが切り札かと思われます」


 ギガントマンティスは鎌を生え変わらすとこちらをジッと見ている。


「今ので主様に攻撃しても無駄であることは察したはず。……先ほどより攻勢を強めるでしょうね」

「肯定。ですが向こうの攻撃パターンは学習しています。無論ギガントマンティスにこれ以上の手がないと仮定してですが」

「さて向こうはどう出るかな」


 三人が警戒を強める中でギガントマンティスが取った行動は、森へ逃げ込む事であった。

 だが誰一人として追う事も警戒を解く事もしなかった。


「確認。二人とも、逃げたと思われますか?」

「まさか」

「ええ。最も自分が得意なスタイルに切り替えるみたいですね」


 三人が話している間も森は小鳥のさえずりすら聞こえず事情を知らない者が見れば平和と見間違えるほどであったろう。

 だがそれも突如現れる鋭い殺気によってかき消される事になる。


「!!」


 まず先に狙われたのはアイナであった。

 ギガントマンティスの鋭い鎌がアイナに迫ろうとするが殺気を頼りにそれを辛うじて防ぐ。

 追撃しようとする三人であったがその頃にはギガントマンティスは森に再びその身を隠すのであった。


「不可。森をサーチしていますが視覚情報に引っかかりません。恐らく森の色に擬態してると思われます」

「厄介ですね。頼りになるのは直前の殺気のみですから」

「擬態が森限定とは限らん正面も気をつけろよ。ユニコーン、常にシールドを張っておけ」

「分かりました」


 そう言うとユニは再びセイクリッドシールドを与人とリルを含めて三人に張る。

 一先ず後顧の憂いを断った三人はどのような予兆も逃さぬように神経を研ぎ澄ませる。

 だがギガントマンティスを捕らえる事は困難を極め迫り来る殺気に対応するのが精一杯であった。


「ちっ! チマチマと、いい加減に鬱陶しいな!」

「提案。リント氏は一度下がった方が、素手ですし」

「バカ言え。この状態で後ろに下がれるか」

「冗談。場を和ませる軽いジョークです」

「二人とも油断しないでください。また投擲もあるかも知れません」


 ギガントマンティスによる度重なる暗殺行動にいら立ちを見せるリント。

 集中力が三人とも欠けて来たところにギガントマンティスは再び襲い掛かる。


「舐めるな!」


 だがリントを襲ったその一撃が防がれると再び森へと逃げる。

 その様子を見つつ与人はユニとリルに何やら耳打ちをしている。


「さて……そろそろ集中力が辛くなってきたが二人はどうだ」

「肯定。ゴーレムとして認めたくはありませんが認識力が落ちてきました」

「まさか集中力が落ちるという事を体験するとは思いませんでした。……ですが、まだやれます」


 アイナが聖剣を力強く握ると改めて集中力を呼び起こす。

 その様子を見つつ二人もギガントマンティスを捉えるために身を構える。

 だがその様子をギガントマンティスは逃さなかった。

 完全に殺気すら消した一撃を与えんとギガントマンティスがアイナに向けて鎌を振るう。


「しまっ!!」


 咄嗟の事で反応が遅れたアイナが剣を振るおうとするが若干の差で間に合わないであろう事はアイナ本人が一番理解していた。


(申し訳ありません主様。……武運長久を祈ります)


 覚悟を決めたアイナはせめて一太刀でも与えようとするがギガントマンティスは突如現れた影によって大きく蹴り飛ばされる。


「フェンリル!!」


 ギガントマンティスを蹴り飛ばした影の正体は与人を守っているはずのリルであった。

 リルはスタッと着地すると倒れ込んでいるギガントマンティスを警戒しつつ説明をする。


「ご主人のお願い。……僕は鼻がいいからアイツの動きが分かる。三人の手助けをしてくれって」

「……全く。何のために三人で戦っていたと」

「肯定。ですがその判断のお陰で一矢報いました」

「ええ。助かりましたリル」


 アイナがそう言うとリルはジッとアイナを見つめて来る。


「何か?」

「……簡単に生きるのを諦めたら駄目」

「!?」

「ご主人……一人でも欠けたら凄く悲しむ。だから僕にこっちに来させた」

「……ええ。そうですね、その通りです」


 そう言うとアイナは再びギガントマンティスに自らの分身を構える。

 どうやら先ほどのリルの一撃が効いた様子であるギガントマンティスは既に立ち上がっているがどこかフラフラしており森に隠れようともしない。


「提案。敵の負傷は大きく隠れる事もしません。四人による同時攻撃を推奨します」

「……分かった」

「ああいいぞ。聖剣にゴーレム、先陣は任せた」

「無論です。では、行きます!」


 そう言って最初と同じようにアイナとセラはギガントマンティスに向けて突撃していく。

 当然その真正面から来たその攻撃をギガントマンティスは鎌にて受け止めるが先ほどより力が落ちているのか先ほどより大きく後退する。

 そこにリントが隙を縫って力を込めた拳を振るうがギガントマンティスは同時に後方に飛ぶ事によって直撃を防ぐ。


「いい反応だ。想定内だがな」


 大きく下がったギガントマンティスがリントの言葉を理解する前にその影は頭上に現れた。

 それは自分の身を回転させながら大きく跳躍したリルの影であった。

 そしてリルはその勢いのまま踵をギガントマンティスの頭に叩きつける。

 ギガントマンティスは悲鳴を上げつつ地面に倒れこむ。

 酷い土煙が立ち込める中、出て来たリルはただ一言、勝利宣言をするのであった。


「……ブイ」


 その僅かながらに笑みが乗ったピースサインを見て皆が一斉に笑い出すのであった。

 こうして長時間に渡るギガントマンティスとの戦いは与人たちの勝利に終わるのであった。

今回はここまでです。

次回は仲間が一人増え、聖剣少女が悩みを告白します。

お楽しみに!


感想・レビューをもらえると嬉しいです。

強制ではありますが、よければお願いします。

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