第131話 贈り物パニック(乙女たちの会話編)
第131話を公開しました。
騒動が続く一方で、ストラは何やら作業をしていた。
「……アイナ殿たちは消息不明。ユニ殿たちはカカオを探しに遠出し、ライア殿たちは喧嘩で屋敷を破壊」
ストラは何やら手を動かしながら、一人呟く。
「その影響で与人様は仕事漬け。……その状況で補佐も何もしないのは頭脳役としてはどうなのでしょうね」
「あ、あはは。すみません」
独白に近いストラの声に苦笑いで返すのはハルであった。
ストラと同じく手を動かしながらも、その動きは戦闘と違いたどたどしい。
するとハルの近くで何やら作業をしていたティアが、同じく苦笑いしながら言葉を紡ぐ。
「まあ仕方ない所もあるじゃないかな。残った仲間で菓子まで完璧に出来るのはストラくんぐらいしか居ないからね」
そう。
ここは屋敷から離れたマキナスのとある菓子店のキッチン。
雑用をする代わりに数時間だけ厨房を借りる。
そのような事を既に数日に渡り行われていた。
こうして与人にバレないように友愛の日に向けて準備していたのである。
そしてこれに参加しているのはハルとティア、だけではない。
「ねぇねぇ! 可愛く出来たかな!?」
「ふふ、ええ。可愛らしく出来ていますよ」
「同意。非常に愛らしく出来ていると判断します」
クラリッサ、そしてカナデとセラ。
屋敷に残っている半数以上がこの場に揃っていた。
「警告。しかし本当にいいのですかストラ氏。マスターだけでは仕事にも限界があるのでは?」
「その点は問題無いかと。最低限の重要案件は既に終わらせてありますし、非常事態が起こればスキルを使って呼ぶように与人様には言っています」
「力仕事や戦闘の仕事はしばらくは入れてないからね。まあ入れてたとしてもこのメンバーの誰かいれば何とかなるとは思うけど」
「屋敷の方は三人が直してくれてますしね」
ティアとハルがそう話題をまとめるが、そこでふとクラリッサがある事に気づく。
「あれ? そう言えばリントお姉ちゃんは?」
「そう言えば一度もお見かけしてませんね。屋敷ではお見かけしてますけど」
カナデの言う通り屋敷に残ったメンバーで屋敷の修理中である三人を除けば、リントだけがこの勉強会に参加していなかった。
かと言って市街地に出るような事もなく、ただ与人の補佐をするだけの日々を過ごしている。
「推察。リント氏は何も送らないつもりなのでしょうか?」
その可能性もなくはなかった。
そもそも強制ではないのだから参加しなくても誰にも文句は言われる筋合いはないのである。
だがその答えを吹き飛ばすように、ストラがクスクスと笑う。
「それは無いと思われますよ。何を送る気なのかは知りませんがね」
「? 何か聞いているんですか?」
ハルがそう聞くと、ストラは調理の手を止めずに首を横に振る。
「いいえ何も。ですがあのリント殿がこんな機会に贈り物をしないだなんてありえないでしょう? 口では何と言おうと与人様への思いは強いですからね」
あ~、という声が誰からとなく聞こえる。
リントの与人への思いの丈はエクセードのメンバーなら誰もが嫌でも知っている、そういうモノである。
余談ではあるがアイナの暴走具合も嫌でも知るべき事である。
「さぁ。我々は我々でやるべき事をやりましょう。友愛の日まで時間がありませんよ」
そう言って再び作業を再開する一同を見ながら、ストラはやって来る友愛の日についてある事を考える。
(さて、問題は与人様のもつかどうかですね。……いろんな意味で)
こうして日は過ぎていき、友愛の日を迎えるのであった。
今回はここまでとなります。
夜も少しづつ長くなってきましたが、皆さんどうお過ごしですか?
狐は少しでも皆さんに楽しんでもらいたいと思いながら小説を書く日々です。
それはともかく次回はついに友愛の日当日!
果たしてどのような展開になるのか?
ご期待ください!