第125話 休暇の心残り
第125話を公開しました。
休暇を明日で終わりという時に、与人には心残りが?
(短めとなっております)
「もう明日でここともおさらばか……ドタバタしたけど楽しかったな」
与人は夕陽によってオレンジ色に染まった海を見ながらそう呟く。
いま与人の脳内では様々な出来事が思い出されていた。
初日のビーチフラッグや二日目の騒動だけではなく、一言では言い表せないほどの思い出である。
リントやストラを始めとした面々もそれぞれいい休暇になったようで、与人が立てた計画は成功と言っていいだろう。
(……は良いけれど)
だと言うのに与人の心の中には釣り針が引っかかったような感覚がしてならなかった。
正確に言えば問題は分かっている。
だがそれを解決するべきタイミングを探っている間に日にちが立ってしまった事が原因なのだ。
「与人様。ここに居たのですね」
「ん? あぁストラ。どうしたの?」
「いえ、明日の予定について詰めておこうかと思いまして。お邪魔なら……」
「こっちは大丈夫」
そうして二人は軽くではあるが、明日からの予定について話し合う。
とは言えほとんどストラがまとめていたため時間としては短いものであった。
「にしてもストラも真面目だな。もう少し頭を休めても良かっただろうに」
「十二分に休ませて貰いましたよ。これ以上は脳が鈍ります」
「はは。そうか」
「そう言う与人様は何やら深く考え込んでいるようですね」
「えっ!? い、いや。そんな事は……」
問いかけに対し与人は何とか誤魔化そうとするが、ストラの口が閉じる事は無かった。
「いえ何に悩んでいるかは分かります。この期間中に碌に会話もできずに自分につれない態度を取っている人物。すなわちニクス殿について」
「……」
「今は良いかも知れないけれど、長期的な目で見れば反抗的とも取れるあの態度は問題になるかも知れない。けれど個々の個性を否定するような事は言いたくはない。大まかに言えばそんな所でしょうか?」
「……完敗だ。さすがストラ」
「ふふ。まだ鈍っていないようで良かったです」
そう微笑むストラに対して与人は苦笑いを返す。
顔をジッと見るストラは黙ってこそいるが、「それでどうするのか?」と言っているのは与人にも分かった。
「今の所は問題はないみたいだし、やっぱり屋敷に帰ってゆっくりと……」
「与人様」
与人の言葉を遮って、厳しい口調で名前を呼ぶストラ。
思わず与人が先生に怒られた生徒のように肩をビクつかせると、ストラは一転して優しさを込めた手つきで頭を撫でる。
「これは我々エクセードの休暇です。それはつまり与人様にとっても心を休ませるものであるはず。そのアナタが心残りを残して、果たして休暇を満喫したと本当に言えるのでしょうか?」
「……そうか、そうだよな」
与人は何度も頷くと、スクッと立ち上がりって砂浜を走る。
「ありがとうストラ! キッチリ話をしてみるよ!」
そう言って走り去る与人の背を見ながら、ストラは一人呟く。
「頑張ってくださいね、与人殿」
今回はここまでとなります。
夏の疲れか頭痛の中で書き上げたエピソードです。
次回には休暇編は終了の予定です。
その次はもしかすると季節外れのネタをやるかも知れません。