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第10話 集結! そしてまだ見ぬ地へ!

第10話を公開させてもらいました!

『神獣の森』編、ラストです。

「「「……」」」


 突如現れた瀬戸とのにらみ合いが始まって既に数分。

 アイナは徐々に距離を詰めつつ何時でも攻撃できる体勢に入っている。

 対して瀬戸は緊張のためか汗を掻きつつも部活動でもやっていた空手の構えを取る。

 与人はアイナの後ろに居ながらも瀬戸の様子を見ていた。


「……瀬戸さん」

「主様」

「アイナ……大丈夫」


 膠着が続くと思われてた中で突然に与人は瀬戸に話しかけ前に出る。

 それを引き留めようとするアイナであったが与人は止まらない。

 アイナは与人の後ろを歩きながらも何時でも守れるように剣に手をかける。

 瀬戸は与人が近づくのをジッと見ていたが敵意が無いのを感じたのか構えを解く。


「瀬戸さん久しぶり」

「葉山も元気そうで良かった。……そして済まなかった」


 そう言うと瀬戸は与人に対して頭を下げる。

 その行為からは明らかに与人に対する後悔が窺えた。


「……瀬戸さんが必死に止めようとしてたのは知ってる。だから謝る必要なんて」

「止められなかったのなら同じ事だ。それに謝って済む問題でないのも理解している」

「そうですね。……あの狂獣は主様を殺そうとしましたしね」

「アイナ」

「済みません出過ぎました」


 与人とアイナが話している間も瀬戸は未だに頭を上げようとはしなかった。

 どうしようかと与人が考えていると突如まるで飛行機のような音が聞こえ始めた。


「ん? 何だこの音?」

「主様お気を付けを! 新手のモンスターかも知れません!」

「い、いやこの音はモンスターと言うより……」


 すると茂みから高速の何かが飛び出して来て与人たちの方へ向かう。

 アイナ、そして瀬戸は迎撃しようと立ちふさがるがその何かは徐々にスピードを落としていき二人の攻撃範囲ギリギリで止まる。


「到着。マスターの発見、及び安全の確認を完了。これにより兵装タイラント・ウイングを解除します」

「せ、セラだったのか」


 与人の前に現れたのはやたらデカい飛行機の主翼みたいなパーツを背負ったセラであった。

 セラは与人の安全を確認すると翼を格納庫に転送する。


「安心。ご無事で何よりですマスター」

「ああ、迷惑かけたなセラ」

「憤慨。とても心配しました。突発的な事態があったと推測しますが……今後は出来るだけ行動を自重してくださいマスター」

「あ、あの主様? この方は?」


 アイナは話についていけないのかキョトンとした様子で与人に聞いて来る。

 ちなみに瀬戸は放心している。


「ああ。この子はセラって言って……まあアイナの先輩だよ」

「推察。新たにマスターが『スキル』による従者の獲得に成功したと思われます。初めましてゴーレムのセラです。そちらは?」

「……私が初めてじゃ無かったのですね(ボソッ)」

「ん?」

「失礼。小声のためこちらの聴覚機能で捉えきれませんでした。もう一度お願いします」

「い、いえ何も言っていません!? わ、私は聖剣のアイナと言います。同じ主を頂く身として共に邁進しましょう」


 そう言ってアイナは握手をしようと手を差し出しセラもそれに応じて二人は固い握手をする。

 与人はアイナが呟いた言葉が気になりながらもセラと合流出来た事を喜んでいた。

 そこにようやく放心状態から戻って来た瀬戸が与人に声を掛ける。


「葉山。……さっきから気になっていたがこの二人は一体? 『スキル』がどうこう言っていたが」

「え~と。どこから話していいものか。……この二人は」


 与人が説明しようとすると別方向の茂みがガサガサと動き始める。

 セラとアイナがすぐさま与人を(ついでに瀬戸も)守れる位置に移動する。

 そして茂みから出てきたのは。


「……ご主人見つけた」

「リル!!」

「与人さん!! ようやく見つけました!!」

「ユニも!! ……と来れば」

「当然、私もいる訳だなダメ主」

「リント!! 良かったこれで全員集合に成功!!」


 茂みから続けて三人が出て来た事により与人は喜ぶがリントは無表情のままに近づいて来る。


「ウム、それはいい事だ。だが主? 一つ大切な事を忘れているぞ」

「り、リント? 顔が怖いんだけど?」

「まあ理不尽だと思うがよく聞け主」


 そう言うとリントは大きく息を吸いリルとユニは耳を塞ぐ。

 それを見て理解したアイナとセラも同じく耳を塞ぐ。


「人が必死に探していたというのに他の女とイチャついてるとはいい身分だな主!!」


 森全体に響くような大声が与人の耳に(そして耳を塞ぎ損ねた瀬戸の耳に)轟く。

 周りにいた小鳥たちも一斉に飛び立つような大声を聞いたため頭がクラクラするがそれでも与人は言い返す。


「い、いや別にイチャついてた訳じゃ無いしこっちにも事情が……」

「分かっている! そっちも大変であったであろうことぐらいはな!! だからこれは八つ当たりだ! 甘んじて聞け!!」

「理不尽!!」


 言いたい事は言い終わったのかリントは与人から距離を取りそっぽを向く。

 するとユニが近づいて来て与人の目立つ怪我を魔法で回復させてゆく。


「与人さんごめんなさいね。けどリントさんも必死に探していていたんですから許してあげてくださいね」

「……え? 何? 今耳があんまり聞こえないんだけど」

「フフ。ではまた今度にしましょうか」

「ご主人。無事で良かった」


 そう言いつつリルは与人の頭を撫でる。

 リルなりに与人のこれまであった苦労をねぎらっているのだろう。


「集結。マスターから聞いていた人数と一致。これによりマスターのパーティーの戦闘力が格段に上がりました」

「……私は五番目の女なの? (ボソッ)」

「疑問。アイナ氏? どうなされました?」

「い、いえ!? こ、今後の戦闘パターンについて考えてました!! ほ、本当に!!」


 セラとアイナもそのような話をしつつ仲を深めていたがようやく瀬戸が回復したのか声を出す。


「す、すまない葉山。何がどうなっているのか説明してくれないか? 頭が混乱する」

「ああ、ごめん瀬戸さん! ……じゃあ俺がここに飛ばされたところから説明を」



「なるほど要するにその『ぎじんか』という『スキル』は人でないモノを人にするもの……という解釈でいいんだな」

「まあ不明なところが多すぎるけど分かっているのはその位だな」


 瀬戸にこれまでの大体の流れを説明している間に皆が果物などを集めてきたのでそれを食す。

 ちなみに二宮はユニが睡眠の魔法を掛けたうえでリントが丈夫なツタで拘束している。

 説明がひと段落し皆がしばらく果物を齧る音と僅かな談笑の声が響くが突如瀬戸が言った言葉に皆の動きが止まる。


「……なあ葉山。こっちに戻って来る気はないか?」

「はい?」

「こんな事を言える立場では無いのは分かっている。だがお前の力があれば魔王を倒すのも楽になるはずだ。王もお前の『スキル』の力を知ればきっと……」

「それは……難しいと思いますよ」


 瀬戸の説得に待ったを掛けるユニはその理由を淡々と語る。


「『グリムガル』の王は『アーニス教』の熱心な信徒です。そして『アーニス教』に反する者は例え子どもであろうと容赦しない気性の持ち主です」

「そんな王が主を受け入れる訳が無いな。寧ろ処刑する可能性が高い」

「……そうか」

「それに誰と言わないけどこっちには『グリムガル』に対して良くない思いをした奴もいるからな。……どのみち首を縦には振れないよ」


 与人がそう言うとセラが小さく頭を下げる。

 それに気づいた者もいたがそれを指摘する者はいなかった。


「だったら葉山。これから先お前はどうするつもりだ」

「今はとにかく『グリムガル』を抜けて『マキナス』に向かうつもりだけど?」

「そうじゃない。葉山、お前はこれから何を目指すんだ? 何がしたいんだ?」

「……」


 与人は一瞬動きが止まるが周りを囲んでいる皆を見渡す。

 皆も与人が何を言うか待っているようで何も喋らない。

 そして与人は後ろを振り返る。

 そこには与人を守ろうとして死んだゴブの墓が見える。

 すると覚悟を決めたように与人は口を開く。


「俺は……楽園を作りたい」

「楽園?」

「そうだ。人同士が、いや人だけに限らず極論モンスターでも手を取り合えるような。……人じゃ無いからとかそんな理由で排他されない楽園を俺は作りたい」

「……辛い道だと思うぞ」

「分かってる」


 そう言うと与人は立ち上がり皆を、仲間となった皆に頭を下げてお願いをする。


「これから先も迷惑を掛けると思う。……役に立たない俺だけど皆に付いて来てほしい。……どうかな?」


 そう与人が言うと真っ先に動いたのはアイナであった。

 臣下の礼のように頭を下げアイナは与人に宣言する。


「我が身は聖剣。使い手の道を切り開くのが私の役目。ましてその道が清きものであるならばこの身を捧げるのに何の不満もありません。主様、このアイナはどこまでも付いていくつもりです」

「アイナ……ありがとう」

「返答。マスターは私の、博士の大切な物を共に救ってくれました。そしてその志は博士に対して恥ずべきものではありません。よってその志を達成するのに迷う要素はありません」

「セラ」


 アイナに続きセラにも承諾され与人は頭を上げて喜ぶ。

 するとリルが与人の胸に飛び込んで来る。


「リル?」

「難しい事、僕には分からない。けどご主人のやる事、応援したい」

「そうか。ありがとうなリル」

「ん」


 与人がリルの頭を撫でているとリルが名残惜しい様子で離れて行き代わりにユニが険しい表情で近づいて来る。


「……本気ですか?」

「ああ、嘘でこんな事言わないよ。……嫌だったか?」


 与人が確認するとユニはいつもの優しい笑みを浮かべる。


「まさか。ユニコーンである私がどこまでお手伝いできるか分かりませんがその目的に協力させてください与人さん」


 ユニはそう言うと後ろに下がる。

 そこには苦虫を噛み潰したようなリントが待っていた。


「全く。面倒な道を行くな主は」

「悪いな。けど最初に言った目標とそんなにズレてはいないだろ?」

「まあな。それにこの世界に喧嘩を売るような目標は悪くない。……ついて行ける所まで付いて行ってやるさ、欲望まみれの主」

「いい仲間を持ったな葉山」


 そう言いつつ瀬戸は拘束された二宮を抱える。


「私的にはその目的に賛同したい気持ちはある。だが魔王を倒す事を私は第一にさせてもらう。……協力出来なくて悪いな」

「いいよ、これは俺の目的だから。魔王退治……頑張って」

「ああ。……こんな事言える立場ではないが言わせて貰う。死ぬなよ葉山」

「瀬戸さんも」


 そう会話をして瀬戸は森の入り口に戻っていった。


「いいのか放っておいて。王にお前の事が伝わるぞ」

「だからと言って拘束する訳にもいかないだろ? 何もしてないのに」


 リントとそのような話をしているとリルが鼻をクンクンと動かしゴブの墓の前に立つ。


「ご主人。……遺体?」

「ああ。……俺を守って死んだ奴の墓だ」

「ん? それに関しては聞いてないぞ。何があった?」

「実は……」


 与人はゴブとの再会や怪我を治療してくれた事、そして一緒に行動してて殺されかけた時に守ってくれた事を話した。


「そうですか。ゴブリンが……」

「ああ。……正直何でそこまでして守ろうとしてくれたかは不明だけど、ゴブがいなかったら死んでたと思う」

「……」


 与人が説明をしている間ずっと黙っていたリントが口を開く。


「それは単純だと思うぞ主。こいつはただ嬉しかったんだ」

「まあ、それは命を助けられたんだからそうなんだろけど」

「違う。それも混じっているがそうじゃない主」


 リントはため息を吐き墓の方を見ながら自分の考えを話す。


「こいつにとって同族以外で初めて自分を生き物として見てくれた。……それだけでコイツには十分だったんだ」

「生き物として?」

「……そうですね。私は聖剣ですから勿論ですけどモンスターを退治の対象ではなく見るのは知る限り主様のみです」


 アイナの言葉を受け与人はゴブの墓を見る。

 本当にそう思っていたかは今となっては不明であるがそれでも与人はゴブに少しでも何かを与えられてたのかと思うと気が楽になる。


「進言。マスターそして皆さん、もうすぐ日が暮れます。出立は明日にし本日は就寝をする事を進めます」

「そうですね。与人さんもそれでいいですか?」

「……ああ」


 その日六人は並んで横になりこれからの先の事やたわいのない事を話し合った。

 それはこの六人だけしか知らない充実した時間であった。



「スゥー、ハァー。……よし!」


 そして夜が明け太陽が昇り与人は深呼吸して気合を入れる。

 既に皆は起きて森の出口までを確保しており与人の準備を待っている。

 与人はもう一度だけゴブの墓を見て頷くと皆に言うのであった。


「皆。……行こう!」


 与人は足早に『神獣の森』を踏みしめ先に進む。

 その先に待っているであろう新たな出会いと、果たすべき目的のために。

今回はここまでとさせてもらいます。

次回からは彼らの旅路の物語となります。


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