サキの提案
「あの……少しよろしいでしょうか?」
真剣な顔をして悩んでいる学園長とエフィーリア様に、ひょいっと手を挙げてアピールする。
「あら、サキさん。どうされました?」
エフィーリア様より早く学園長が反応したので、少し驚いた。
て言うか、なんでだろう。
こちらに向けられた表情は笑顔なのに、妙に圧があるような?
いや、まだ学園じゃ何もしてないはずだしきっと気の所為だ、そう思おう。
「学園側で組織立って動き始めるのにはどうしても時間がかかるのも、その間に今現在被害に遭っているだろう生徒のことが心配なのも良くわかります。
なので、その間臨時で使えそうな面子に心当たりがあるんですけど」
「まあ!本当ですか?」
「そんな方々がいるのであれば、それはとてもありがたいのですが……」
嬉しそうな声をあげるエフィーリア様と、少し心配そうな学園長。
まぁ、学園長がそうなるのも仕方ないよね。
大切な子供たちを預かってる立場なわけだし。
「大丈夫ですよ、学園長。
身元も実力も疑いようのない面子ですから」
「あ、いえ。私もサキさんの紹介してくださる方々を疑うつもりは決してないのですが……」
うんうん、大丈夫ですよ学園長。
心配する気持ちも良くわかりますから。
「ですが、サキにそのようなお知り合いがいるのですか?」
エフィーリア様はさりげなく失礼だな。
確かに知り合いも少ないし友達もいないけどさ。
「ほら、エフィーリア様。
今いるじゃないですか、仕事なくて暇してる連中が」
ちょっと物申したかったのを堪えて答える私に、エフィーリア様は首を傾げている。
「うちの部隊の隊員達ですよ。
最近は任務と言えるようなことはなくて、毎日訓練しかしてないですから」
私の部隊、王室近衛騎士団特別部隊。
引き受ける任務が暗殺やら拷問やらと特殊なため、すっかり平和になってきた最近では任務に出ることがほとんどなくなっている。
学園に来てからは顔を出してないけど、入学式前に見に行った時はみんな結構暇を持て余していた。
もちろん、訓練は真面目にやってたけどね。
「そのまま騎士の姿で学園に来たら悪目立ちするし、生徒達も不安に思うかもしれません。
でも、うちの隊員達なら学園の職員に扮して紛れ込むくらいは簡単にやってのけると思いますよ」
なんせ、みんなその道のプロだからね。
特化してるのはフレバンにキース。あとはマークあたりだけど、他の隊員だって潜入はお手の物だ。
実力的にも学園の生徒とは次元が違うし、相手が高位貴族だろうと遠慮するような連中じゃないしね。
いざとなれば、うちの部隊の黒い襟章を見せたら間違いなくみんな黙る。
貴族の間では、うちの部隊ってかなり恐れられているみたいだから。
まぁ、これまでやって来た仕事考えたら仕方ないとは思う。
本当は、みんなすごく気のいい人なんだけどね。




