実技の選択
学園が終わり、寮へと戻ってのお昼時。
私はエフィーリア様のお部屋へとお邪魔していた。
学園にはもちろん食堂、と言うかカフェテリアがあってそこで食事をすることは出来る。
だけど、エフィーリア様の場合は毒味とかの関係もあるから自室で専属のシェフが作っての食事になるんだよね。
軽くお茶をするくらいならカフェテリアを使っても大丈夫みたいだけど。
「何より、わたくしがいては皆様が落ち着いてお食事が出来ないのではないかと思うのです。
本当は、わたくしもカフェテリアで他の学生の皆様と仲良くお食事がしたいのですけど……」
そんな風に言いながら、少し寂しそうにエフィーリア様は笑っている。
まぁ、そうだよねぇ。
わかってはいたことだけど、やっぱり王族っていうのは不便だよね。
普段陛下や王妃様と接しているとあんまり感じないけど。
「それにしても、やはりサキが目を光らせてくれているからでしょうか。
あまり不躾に近付いて来る方はおられませんでしたね」
「あぁ、確かにそうですね……」
実際、今日一日は至って平穏だった。
やっぱり私は怯えられていたし、何よりもエフィーリア様の美しさと王族オーラに圧倒されていたからな気はするけど。
「このまま少なくともクラスでは平和に過ごせると助かりますね。
何かあった時にあの先生が頼りになるとはあまり思えませんでしたし……」
エフィーリア様に答えながら思い出すのは、担任のナターニャ先生。
ものっすごい特徴的……と言うか、のんびりした感じの先生だった。
悪い先生ではなさそうだけど。
「あら、サキ。
確かにおっとりした方には見えますが、ナターニャ先生は素晴らしい魔法の使い手なのですよ?
担当教科も魔法の実技ですし」
「え?そうなんですか?」
「ええ。サキも実技は魔法を受けてもらうことになりますし、すぐにわかると思いますわ」
へぇ、あの先生がねぇ。
人は見かけによらないと言うかなんと言うか。
ちょっと、いや、かなり意外な気はする。
でも、それ以上に問題がある。
「やっぱり、私も実技は魔法を取らないと駄目なんですね……」
私の言葉ににっこりと頷くエフィーリア様を前に、内心頭を抱える。
学園のカリキュラムでは、必須科目の他にいくつかの選択科目がある。
そのうちの一つが実技で、これは剣術か魔法かを選ぶものだ。
それぞれが自分の得意な方や将来の希望に合うように選ぶんだけど、私は立場上エフィーリア様と同じものを選ぶように陛下から指示を受けている。
エフィーリア様は魔法の扱いが得意なようで迷わず魔法を選択していたから、自動的に私もそうなったわけなんだけど、残念ながら私は全く魔法が使えない。
この世界では、全ての人が魔力を持っていて、簡単な火起こしや明かりをつける程度なら誰でも出来る。
だけど、私はそれすらも出来ないんだ。
異世界人の私は根本的にこの世界の人と体の作りが違うから仕方ない部分ではあるし、普段は全く気にしてないし不便もない。
魔力そのものはあるらしいから、魔力を感知して起動する家具とかは普通に使えるからね。
だけど、そんな全く魔法が使えない私が魔法の実技の授業を受けるって……。
確かに私がここにいる目的はエフィーリア様の護衛だから成績とかはどうでもいいんだけど、授業中絶対何もやることないじゃんか。
まぁ、近衛なのに剣も扱えないから剣術の授業でも同じかもしれないけどさ。




