王妹エフィーリア殿下
「失礼しまーす」
王妹殿下の部屋まで行くと、既に私が来るという連絡は行っていたみたいで警護に付いている近衛兵が中へと案内してくれた。
赤い襟章だから……えーと、第一?かな?
まぁ、たぶんそうでしょ。
「サキ様、お待ちしておりました」
室内に入った私を出迎えてくれたのは、両陛下譲りの美しい金髪をした美少女。
うん、美少女としか言いようがないねこれは。
うちの屋敷の使用人達も、元貴族令嬢の集まりってのもあって可愛い子が多い。
特にレイシアやソフィアなんて、日本にいたら確実に芸能界にスカウトされてるんじゃないかというレベルの美少女だ。
それでも、この王妹殿下と並んだら霞んでしまうんじゃないかと思うくらい。
え?なに?本当に人間?と疑っちゃうレベルだよこれ。
「サキ様とは初めましてではありませんが……改めてご挨拶させて頂きますね。
イシュレア王国国王ヘクターが妹、エフィーリアと申します。
よろしくお願いしますね」
そう言って淑女の礼をしてくれる王妹殿下に、私も丁寧に騎士の礼を返す。
「王室近衛騎士団特別部隊長、サキ・ヤマムラです。
こちらこそよろしくお願い致します」
まぁ、私の言葉使いとかはもういいんだよ。
苦手なんだもん。
「さぁどうぞ。おかけになって?」
王妹殿下がクスクスと笑いながら席を勧めてくれるので、遠慮なく座らせてもらう。
うーん、陛下や王妃様なら慣れてるから全然緊張しないんだけど、王妹殿下とはほとんど接点がなかったから何となく調子が狂うな。
侍女さんが用意してくれた紅茶とお菓子を、勧められるままにごっくんもぐもぐとしてはいるものの、王妹殿下はずっと微笑んでいるだけで何も言おうとしない。
これは私から話題振るべきなのか?
「えっと、王妹殿下?」
そう思って声をかけたのに、王妹殿下はずっと浮かべていた微笑みを引っ込めて何故か悲しそうな顔をする。
いや、なんでよ。
「まぁ、サキ様。王妹殿下なんて他人行儀な呼び方はおやめください。
これから一緒に学園生活を送るんですもの。
どうぞ、エフィーリアとお呼びくださいな」
いや、そんなこてんと小首を傾げて言われてもねぇ。
私なんかじゃなくて、どこぞの貴公子にやってあげなさいよ。
たぶん誰でも落とせるよ、貴女なら。
「えーと、それではエフィーリア様とお呼びしてもいいですか?
あと、私に「様」は付けなくて大丈夫ですよ」
「まぁ、ありがとうございます!
では、遠慮なくサキとお呼び致しますね。
本当は、サキにもわたくしのことはエフィーリアと呼んで頂きたいのですけど、いきなりそれは難しいと思いますので……。
徐々にで構いませんわ、ええ、徐々にで」
嬉しそうにしながらも、後半は中々なことを言ってるな、このお姫様。
なんだろう。
見た目の印象だと大人しそうな感じなんだけど、さすがにあの陛下の妹と言うべきか。
結構いい性格をしているようだ。




