嫌な予感しかしない話
そうしてやって来た王城。
ゴロゴロして過ごすという至福のひとときを邪魔された私は大変ご立腹である。
今もジト目で私を呼び出した相手、つまりこのイシュレア王国の国王陛下を睨んでいるつもりだけど、きっと表情筋は今日も職場放棄してるだろうから伝わってはいないと思う。
「それで?なんの用です?」
「ああ、休みのところ呼び出して悪かったな」
全く悪いと思ってなさそうな顔して言う陛下。
まぁ、私が最近ずっと暇なのは誰よりも知ってる人だから仕方ないけどさ。
「俺の妹がもう少しで学園に入学するのは知ってるか?」
「王妹殿下が?初耳ですね」
そう言えば、陛下には歳の離れた妹がいるんだよね。
一応何回か顔を合わせたことはあるし、少しだけなら話したこともあるけど、特に親しい訳ではない。
普段から関わることもなかったしね。
「それでな、サキには学園での妹の護衛を任せたいんだ。最近仕事も減ってるし暇だろう?」
「まぁ、暇なのはそうですけど。
でも、護衛ならうちの仕事じゃないですよね?」
この国の近衛騎士、王室近衛騎士団は第一から第五までの各部隊と、私が一応部隊長をしている特別部隊から構成されている。
そのうち、王族の身辺警護は第一部隊の仕事だったはず。たぶん。
「確かに、通常の護衛なら第一の役割だ。
だが、学園内には原則護衛は連れていけないんだ。
一応学園内では全ての学園生は平等っていう建前があるからな」
「それなら私だって駄目じゃないですか」
「いや、サキなら大丈夫だろう?」
陛下の言葉に首を捻る。
第一は駄目で、私なら大丈夫な理由がさっぱりわからない。
「ほら、サキの見た目なら学園にいてもそれほど違和感はないではないか。
むしろ、学園生よりも幼く見えてしまうくらいだ」
「……」
確かに私は見た目が幼い。
いや、別に童顔とか言う訳じゃない。
本来の私は、年相応な外見だった。
それなのに、この世界に来た時に何故か体だけ幼く……せいぜい中学生くらいにしか見えないような感じになってしまった。
なんでこうなってしまったのかは、この世界に来てから四年が過ぎようとしている今でも全然わからないままだ。
「私の見た目の話はいいとして。違和感なくても護衛は駄目なら結局は同じことじゃないですか」
「まぁ、普通に護衛として……ならそうだな」
私の言葉に頷きつつもにやりと笑う陛下に、ものすごく嫌な予感がする。
なんとなくこの先を聞いたらいけない気はするけど、一応この人は国王陛下。
私のお給料の源。
……聞かないわけにはいかないか。
「だからな、サキ。お前も学園に入学してもらいたい」
ほらやっぱり。
聞かなきゃ良かった。




